江本流「波動」理論(4) | ほたるいかの書きつけ

江本流「波動」理論(4)

 (3)のつづき。「水伝3」pp.140-141を取り上げる。
 まずは江本の文章を見ていただこう。
 「波動」を目に見えるビジュアルにして表せたら
 それは1994年の夏のことでした。わたしは時間つぶしに立ち寄った本屋で『まだ科学が解けない疑問』(ジュリア・ライ著 晶文社)という本を見つけ買い求めました。そして、会社に戻ってその本を開くと、目次の中から次のような項目が目に飛び込んできました。「雪の結晶には2つとして同じものはない」という項目でした。「これだ!!」と思わずつぶやきました。「雪も水ではないか、ならば水を凍らせれば必ず結晶ができるはずだ」と思ったのです。
 そして、MRAで波動を転写する前の水と、転写した後の水、もし結晶を撮影することができて、「同じ水の結晶がこのように変わった」と人に見せることができたら、「人は波動の存在を認識し認めざるを得ないだろう」。そのときのわたしは、この閃きになぜか絶対の自信を持ったことを覚えています。
「2つとして同じものはない」の意味をもう少し考えてくれていれば、「水からの伝言」みたいなトンチンカンな本は出版されずにすんだのかもしれない。たぶん、目次だけ見てわかった気になって突っ走ったのではないだろか。

 なお同じ趣旨のことが、「水は答えを知っている」のp.18にも載っている。ここでも、「ある日、一冊の本を何気なく開くと、こんな意味の見出しが私の目に飛び込んできました。」と書いてあり、見出しを見て結晶写真のことを思いついた、となっている。ホントに中身読んでないんじゃないか?

 その疑問は、「波動の真理」で解決した。最近「5次元文庫」なるトンデモ本を集めた文庫シリーズが刊行を開始し、本屋で平積みになっていたりするから見かけた方も多いだろう。
 そのp.207以降に『まだ科学が解けない疑問』を引用しながら書いている。長々と引用しているのだが、それ自体はマトモな内容なので、江本勝がいかに誤読をしているかを見るのには最後の部分だけお見せすれば十分だろう。孫引きになるが、江本が引用している形で『まだ科学が解けない疑問』の一部を引用しよう。文脈としては、科学者は実験的にある条件を与えるとどのタイプの結晶が成長するかを知るようになったが、なぜその結晶がその形をとるのかを説明することができていない、ということの説明のあとである。
 (略)しかし、おのおのの結晶が、たくさんのちがった方法で並べることのできる何兆という水の分子をふくんでいる。となると、二つの雪の結晶が同じになりうると考える人がいる方が、おそらくもっと驚くべきことだろう。「それは、なぜ二人としてまったく同じにみえる人がいないのか、と尋ねるのに似ている」と合衆国森林事業団の地質学者、リチャード・ソマーフェルドはいう。「本来の質問は、なぜ同じでなければいけないのかということだ」
つまり、雪の結晶は大量の水分子からなっているので、いくらでも結晶形の自由度はありそうなものなのに、実際には幾つかのある特定のパターンしかない。つまり、問題は、なぜいろいろな形があるか、ではなく、なぜ特定のパターンしかないのか、というべきである、ということである。言い換えれば、実験的に見つかっているいくつかの結晶形のパターンは、どういう条件(温度と水蒸気量)のときにどういうパターンになるかはわかったのだが、理論的に、その温度と水蒸気量を与えたらあるパターンになるということを導けていない、ということだ。
 で、江本はこれをおそろしいまでに完全に誤読し、正反対の意味にとっている。

 ここからわかることは、要するに、江本には文章読解力はない、ということだ。自分に都合のよい単語をピックアップし、自分で勝手に意味を付与しているだけなのだ。付言すれば、太田龍との対談が一見「成立」したのも、自分に都合のよいように相手の言葉を選択していたからなのだろう。