江本流「波動」理論(1)
「水からの伝言」の説明原理になっている「波動」。物理学で出てくる波動とはまったく別物なのであるが、10年以上にわたってその「波動」を広めてきた江本勝が何を言っているのか、少しづつ検証していく(船井幸雄が言っていることもなかなか凄くて、あれぐらいになるとトンデモとして愛でてやりたいくらいなのだけれども、それはまあいずれ)。 これも不定期連載ということで。
彼(江本)が出した書籍は多いけれども、初期のころの波動に関するものを幾つか上げると次のようになる:
なお、「水伝1」は99年の出版であるが、水の「結晶写真」はすでに95年ごろの本には登場している(最初の本を私が持っていないので、そこでどうなっているかは未確認)。
ざっとリストを眺めて気づくのは、江本が波動を言い出してからもう15年も経つのか、ということと、サブタイトルに表れている様に、なんというか「壮大」だなあ、ということ、「マイナスイオン三人衆」の菅原明子ともつながっている、ということ、またPHP研究所ってのは罪深いなあ、というあたりであろうか。
波動とは一体何か、ということになると、色々と本によって少しづつ違いがある。たいてい、音叉の話を持ち出して、音波を例にしながら語っている。意図的に、本来の物理学での波動と混同させようとしているかのようだ。
ところが、よく読むと、なかなか不思議なことを言っている。たとえば、『波動革命』p.12では、
さてこの「波動エネルギーの法則」とやらは江本が言うに反して単純でも明快でもないと思うし、実際何も語っていないに等しい文章なのだが、それは本質ではないのでここではひとまずおいておく。
第1パラグラフで言っていることをまとめると、
(a)万物は「波動エネルギー」によって「創起」される
(b)波動エネルギーの源は「意識エネルギー」だろう
(c)したがって、(これが正しいとするならば)万物は人間の意識エネルギーに依っている
となる。まあ飛躍のオンパレードで、(a)からしてまず無茶苦茶なことを言っているのだが、(b)にしてもなぜそれが意識と関係するのかさっぱり語られないし、(c)に至っては独我論の重ねあわせというか共同主観的存在論とでも言ったらいいのか、摩訶不思議な結論となっている。
注目すべきは第2パラグラフで、波動エネルギーは Magnetic Resonance Energy だ、と言っている。 Magnetic Resonance は普通「磁気共鳴」と訳すと思うがそれもおいておこう。Manetic Resonance Energy というともう何がなんだか意味不明なのだが、論理的に読むと、波動エネルギーとは磁場共鳴エネルギーであり、これを Hado エネルギーと称するのがふさわしいと言っているので、つまり「波動=磁場共鳴(Magnetic Resonance)」なのだろう。いや、「なのだろう」と言ってはいるが、物理的にはさっぱりわからないのだけれども。
さて、ここで「水伝3」を見てみよう。「水伝3」p.139に、江本がホメオパシーのレメディ用に開発された機械をアメリカで購入し、日本に持ち帰って Magnetic Resonance Analyzer (MRA)と名付けて使い出したということが書いてある。磁場と関係あるかどうか私にはわからないが、とにかく江本がそう名付けたわけだ(元は Bio Cellar Analyzer という名前だそう)。そして、MRAにハマり、いろいろなものの「波動性」を測定しまくったことがp.140に書かれている。
さて、この節では、ここで初めて「波動」という言葉が出てくる。そのためか、同じp.140に「波動」についての解説が小さく書いてある。引用しよう。
ところが、同じ「水伝3」のp.148からの「Ⅲ.波動とは何か」というところでは、また音叉がイラスト付きで出てきており、あくまでも物理学の波動との混同を図ろうとしているように見える。その意味では、江本という人は、単に物理学がわからなくてあっちに行ってしまった人、ではなく、マーケティング戦略として「波動」という言葉をあてがい、物理学の波動とは異なるものであることを知っていながらあえて混同させる狡猾な戦略家である、と言えるだろう(もっとも船井幸雄になると、超弦理論が波動を証明している、みたいなトンデモを堂々と公言しているのだが)。
というわけで、今後は江本がどのように波動をとらえ宣伝しているかを見ていくことにしよう。
彼(江本)が出した書籍は多いけれども、初期のころの波動に関するものを幾つか上げると次のようになる:
波動時代への序幕-秘められた数値への挑戦(1992年、サンロード)(以上、amazonで出てきた90年代の江本勝の著書。著者紹介によると、これがすべてではない。)
波動の人間学(1994年、ビジネス社)
波動の真理-人間・地球・自然の未来のために(1994年、PHP研究所)
波動の幸福論-最先端科学が生み出す新しい哲学(1995年、PHP研究所)
波動と水と生命と-意識革命で未来が見える(1995年、PHP研究所)
波動革命-”新たな科学思考”が人類と地球を救う(1995年、PHP研究所)
宇宙意識と波動-困難な時代の幸福の哲学(1995年、ラビ・バトラとの共著、PHP研究所)
波動の食品学(1995年、菅原明子との共著、高輪出版社)
波動学のすすめ-新世紀思考への意識革命(1996年、PHP研究所)
波動とは何か-科学と心の共鳴エネルギー(1996年、PHP研究所)
蘇る潜在記憶-新しい自分を求めて(1997年、PHP研究所)
なお、「水伝1」は99年の出版であるが、水の「結晶写真」はすでに95年ごろの本には登場している(最初の本を私が持っていないので、そこでどうなっているかは未確認)。
ざっとリストを眺めて気づくのは、江本が波動を言い出してからもう15年も経つのか、ということと、サブタイトルに表れている様に、なんというか「壮大」だなあ、ということ、「マイナスイオン三人衆」の菅原明子ともつながっている、ということ、またPHP研究所ってのは罪深いなあ、というあたりであろうか。
波動とは一体何か、ということになると、色々と本によって少しづつ違いがある。たいてい、音叉の話を持ち出して、音波を例にしながら語っている。意図的に、本来の物理学での波動と混同させようとしているかのようだ。
ところが、よく読むと、なかなか不思議なことを言っている。たとえば、『波動革命』p.12では、
「波動の真理」とは?と述べている(太字は原文ママ)。
「波動の真理……すべての物や動植鉱物の存在、そして森羅万象の存在は各々の波動エネルギーによって創起される。この波動エネルギーの源は、人間の持つまだ科学的には解明されていない意識エネルギーによるものと考えざるを得ない。したがって、全ての存在は、人間の意識エネルギーによって左右される。
通常この波動エネルギーは、その副産物として、磁場共鳴を産出するので Magnetic Resonance Energy と英語では翻訳される。しかし、意識というものと深く関わりのあるこのエネルギーについて、これを Hado エネルギーと称することがより深い解釈にむすびつくものと考えるので、私はこの言葉を採用している。
波動エネルギーの法則は非情に単純で明快である。それは、
『波動エネルギーは常に滔々(とうとう)と流れゆくべきもので、決して、澱んではならない。それは、すべての存在の持つ、固有の波動エネルギーの調和と共鳴によって成り立ち、互助共生関係にある。この地球上においては、人間のみが全ての波長を創生し得るので、人間の真の役割は、共鳴の原則に基づき、これらの全ての存在が発する固有の波動エネルギーの調整役でありコンダクターである。したがって、人間の意識自体に偏りや澱みがあるとき、全ての調和も乱れ、いわゆるエネルギーの氾濫を起こすこととなり、それは現世上においては、自然災害、経済恐慌、疾病の蔓延という減少を引き起こすこととなる』」
さてこの「波動エネルギーの法則」とやらは江本が言うに反して単純でも明快でもないと思うし、実際何も語っていないに等しい文章なのだが、それは本質ではないのでここではひとまずおいておく。
第1パラグラフで言っていることをまとめると、
(a)万物は「波動エネルギー」によって「創起」される
(b)波動エネルギーの源は「意識エネルギー」だろう
(c)したがって、(これが正しいとするならば)万物は人間の意識エネルギーに依っている
となる。まあ飛躍のオンパレードで、(a)からしてまず無茶苦茶なことを言っているのだが、(b)にしてもなぜそれが意識と関係するのかさっぱり語られないし、(c)に至っては独我論の重ねあわせというか共同主観的存在論とでも言ったらいいのか、摩訶不思議な結論となっている。
注目すべきは第2パラグラフで、波動エネルギーは Magnetic Resonance Energy だ、と言っている。 Magnetic Resonance は普通「磁気共鳴」と訳すと思うがそれもおいておこう。Manetic Resonance Energy というともう何がなんだか意味不明なのだが、論理的に読むと、波動エネルギーとは磁場共鳴エネルギーであり、これを Hado エネルギーと称するのがふさわしいと言っているので、つまり「波動=磁場共鳴(Magnetic Resonance)」なのだろう。いや、「なのだろう」と言ってはいるが、物理的にはさっぱりわからないのだけれども。
さて、ここで「水伝3」を見てみよう。「水伝3」p.139に、江本がホメオパシーのレメディ用に開発された機械をアメリカで購入し、日本に持ち帰って Magnetic Resonance Analyzer (MRA)と名付けて使い出したということが書いてある。磁場と関係あるかどうか私にはわからないが、とにかく江本がそう名付けたわけだ(元は Bio Cellar Analyzer という名前だそう)。そして、MRAにハマり、いろいろなものの「波動性」を測定しまくったことがp.140に書かれている。
さて、この節では、ここで初めて「波動」という言葉が出てくる。そのためか、同じp.140に「波動」についての解説が小さく書いてある。引用しよう。
開発者は Magnetic resonance pattern (磁気共鳴パターン)といっていましたが、わたしはこれをわかりやすく感じられる言葉として、日本語の中から「波動」という日常的に使われている言葉を選び、当てはめました。ですから、物理学用語の「波動」とは異なる用法となります。「物理学用語の『波動』とは異なる」!!つまり、江本はここ(「水伝3」2005年)になって、物理学本来の意味とは違うということをおそらく認めざるを得なくなったのだろう。批判が高まり、逃げを打ったのではないかと思われる。『AERA』で水伝はポエムでファンタジーだ、と言ったのが2005年12月5日号だから、実際に上の文章を書いたのはその1年ぐらい前かと思うが、どこかで断り書きが必要だと思ったのではないか。
ところが、同じ「水伝3」のp.148からの「Ⅲ.波動とは何か」というところでは、また音叉がイラスト付きで出てきており、あくまでも物理学の波動との混同を図ろうとしているように見える。その意味では、江本という人は、単に物理学がわからなくてあっちに行ってしまった人、ではなく、マーケティング戦略として「波動」という言葉をあてがい、物理学の波動とは異なるものであることを知っていながらあえて混同させる狡猾な戦略家である、と言えるだろう(もっとも船井幸雄になると、超弦理論が波動を証明している、みたいなトンデモを堂々と公言しているのだが)。
というわけで、今後は江本がどのように波動をとらえ宣伝しているかを見ていくことにしよう。