日曜日のTV『情熱大陸』は、東洋・日本文化研究家アレックス・カーさんだった。
http://www.mbs.jp/jounetsu/2007/07_15.shtml
子どもの頃に住んだ日本の文化、自然に魅了され、日本、アジアの文化に関する研究者になった。司馬遼太郎さんとの対談で名前を聞いたぐらいの人だった。絵画、書、古美術にも詳しいのだが、それ以前に、日本の自然や、何百年にも渡って作ってきた古い街並みや景観に対して、情熱を持っている。番組の中で、ダムや、高速道建設で、日本の自然がズタズタにされるのに悲憤を感じておられた。また、古い町屋の再生等、世界遺産、重要文化財クラスばかりでなく、古く、優れた日本の家屋についても、もっともっと目を向けるべきと、していた。
そして、次の日、中越沖地震が起きた。
2004年10月の中越地震、2007年今年3月の能登半島地震に続いて、甚大な被害が出た。
倒壊した家屋、TV画面で見る限りにおいては、古い日本家屋。犠牲になったのは、住んでいた高齢者。倒壊した古い日本家屋の横で、住宅メーカーの最新式の家は、なんともなっていない。こういった民家が危険であることは、みんな知っている。つい4ヶ月前にあった能登半島地震でも、崩れ落ちる決定的シーンがTVで流れた。しかし、今回、活かす事が出来なかった。
また高速道、鉄道、原発、日本が切り刻んだ自然に、今度は逆にズタズタにされた。
「地震予知研究や、地震後の復旧にお金をかけるより、耐震補強をすべき」と、昨日あたりからの論調。今も、強い地震に耐え切れない家屋が日本中にある。表現はまずいが、ギロチンの下で生活しているようなものかもしれない。となると、この問題を、つい最近、声高に行っていた人を思い出した。
黒川紀章さんだ。
東京都知事選で、東京が、地震に襲われたら、という想定の元の公約だった。建築家出身だからと言う理由で強調していたと思ってきたけど、東京に限らず、日本の重要課題の一つのようだ。
日本の住宅業界は、まだまだ規制が多い。日本の住宅が高いのは、キッチンとかの設備が、少数のメーカーで、寡占状態、外国の安い設備は、規制で排除されている。と言うのが経営コンサルタントの大前研一さんの見解。部分的な補強でなく、全面的な立替ならメーカーも喜ぶけど、耐震補強程度では、国は積極的にならないのかもしれない。
アレックス・カーさんではないけれど、この国は、つくづく、ゼネコンや住宅メーカー、お金儲けをする人たちに配慮された国なのだ。
日本の古い景観を残すこと、自然を守ること、古民家を再生すること、耐震補強すること。様々な課題がある。また、地球温暖化、酸性雨、環境破壊、食料の自給率向上といった、この問題を取り巻く条件も刻一刻と変わっている。
年金問題(根本的な年金問題でなく社会保険庁の不祥事の問題)、政治資金の問題といった課題以外、あまり聞こえてこない今回の参議院選挙。地震に関しても、どこの政党の党首が早く現地入りするかのタイムトライアルになっている。政見放送も「命の限り、がんばります」という浪花節レベル。
だから、本当に、深い思考で、日本人に語り掛ける人、アレックス・カーさんのような人を採り上げる『情熱大陸』のような番組が、受ける時代なのかもしれない。
地震で犠牲になった方、今も不自由な生活を送られている方、心よりお見舞い申し上げます。