介護と言う仕事とその未来 | 元広島ではたらく社長のblog

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六本木ヒルズや、ITベンチャーのカッコイイ社長とはいきませんが、人生半ばにして、広島で起業し、がんばっている社長の日記。日々の仕事、プライベート、本、映画、世の中の出来事についての思いをつづります。そろそろ自分の人生とは何かを考え始めた人間の等身大の毎日。

私のお客さんに介護老人保健施設がある。2000年に介護保険法が出来、増え続ける高齢者、その中でも、介護を必要とする人たちのケアをするため介護老人保健施設や、グループホーム、老人ホーム、特別養護老人ホーム等色々な形態でこの人たちを支えようとしている。(名前は良く聞くけど、よくわからないのが人のほうが多いかもしれない)


以前であれば、介護が必要な老人一人に対し、一人が対応しなくてはいけなかった。この多くが子ども、特に娘や、嫁といった女性の手であった。この子どもが、もし、パートでもしていれば、収入があり、税金も払うし、消費活動もし、世の中にお金が回る。しかし、親を介護した場合、一日中、拘束されるので、社会にとっても生産性があるとはいえないのである。

このため、生まれたのが、介護保険法。これまで介護していた女性は。他の仕事をして、収入を得てもらう。その代わり、介護費用を払って、親を施設などで預かってもらう。介護を必要とする人3人に対し、1人の職員で、ケアする。そのため、朝夕送り迎えし、施設などに一箇所に集める必要がある。「ほほえみ・・・・」「なごみ・・・・」「さわやか・・・・」といった平仮名が車体に描かれた送迎バスを良く見かけるのは、こういった施設への送り迎えなのです。


この『介護と言う仕事』、たった6年半で、約7兆円の市場規模になっている。介護を必要とする人は確実に増えているので、あと5年で、9兆円と言う試算もある。パチンコ産業が30兆。自動車が40兆と言われている。それも何十年も掛かったが、介護は一気にこの伸びを示している。保険を財源とし、支払いは翌月に現金で、言葉は悪いが、とりっぱぐれのない、相手が国である商売、こんなに安心な商売はない。このため、多くの事業者が参入し、さらに市場は拡大している。


しかし、入居している老人の虐待、セクハラ、貯金を盗んだり、経営破たんしたり、いろんな問題が新聞を賑わせている。また、今年の法改正は現場多くの混乱を招き、厚生労働省のお粗末な体質が露呈している状況だ。


そのほか、私が感じた問題をいくつか列記する。

・書類仕事が多すぎる。これは、厚生労働省、県、市が、「仕事の書類化」という、完了の仕事の方法をそのまま現場に押し付けているから。このため、仕事が終わった後も、残業し多くの時間を書類に残さないといけない。働く人の疲弊につながっている。

・組織に階層がない。普通の会社は、2人、3人、4人と組織が大きくなり、あわせて管理職階層も生まれるが、介護施設は、いきなり、200人くらいの組織からスタートする。一般の会社で言う、部長、課長、係長といった階層が3つは必要だが、みんなフラット。そのため誰に責任があるか、誰が誰の指示に従うかが不明確。

・パート職員に頼った雇用状態。正社員と言う人たちが、年功であったり、能力であったり、あるいは成果主義で給与が昇給する人たちとするなら、時給や日給で人件費を抑えられるパート職員でなくては運営できない低人件費構造がある。専門学校を出て5年くらいは我慢できても、結婚して子どもを育てて、という将来設計は描きにくい。

・無競争状態。地域ごとに、設立基準があり、老齢人口○○人当たりの施設建設数が制限されている。このため、その地域に住む人は、他の施設を選べない場合が多く。競争がないため、サービスが悪くても運営できる施設がある。(岐阜県や夕張市や大阪市、九州で起きたいじめを苦にした自殺事件があった学校もみな、廃県、廃市、廃学校など出来ない。競争原理がないことは、不良品を放置することになる。一番困るのはその地域の人)

・人不足。専門能力を持った人。資格を持った人。人をマネジメントできる人。


こんなことを思っていると、ちょうど、昨日、TVで介護の現場の問題を取り上げていた。

何でもいい、何かの解決策が得られればと思い。TVの前に正座してみた。


冒頭、26歳の介護職員が、収入面で、将来に不安があるのと、別の世界を見てみたいということで退職するシーンがあった。また、今年になって21人も退職者が出た施設。東京で急遽行われた合同就職説明会の閑古鳥状態。来春開設予定の施設では80人採用予定で31人しか決まっていないと言う。


原因は、介護以外の業種が景気が回復したためにそちらに人が取られていると言うこと。ただし、介護専門学校も定員割れがおきており、この仕事に魅力を感じる学生も少なくなっている状態らしい。そして番組に出てきた東大の先生は2つ大きな理由を挙げていた。

・給与が低いこと

・やりがいが感じられないこと


対策として、日本政府はフィリッピンと協定を結び、介護の資格を取ることを条件に何百人か受け入れることにした。また、在日フィリッピン人を派遣する人材派遣会社も出てきていると言うことだった。

もちろんこの人数併せでは、上の2つの原因をなくすことは出来ない。と東大の先生。そうそう。


番組の最後で、東大の先生が言った解決策は(私はここが聞きたかった。期待は高まる)


「介護報酬を上げること」


番組は唐突にエンディングに。司会が話をまとめて終了。


唖然、それが出来んから、みんな苦労してるのに。少し消化不良では、あったが、私が常日頃思っていたことは、一部の施設でなく、いまや日本全体の問題。モチベーションの落ちた施設では、やはり不祥事、事件、事故が起きることになる。今まで苦労して、私たちを育ててくれた人たち。明治、大正、昭和を必死に生きてきた人たち。最後の日々をハッピーに送ってもらうために、いい解決策を考えないといけない。神様!おしえて!