闇に蠢くものたち。 若宮遷宮 ~ 春日大社 若宮おん祭りの起源(3) | 奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ

闇に蠢くものたち。 若宮遷宮 ~ 春日大社 若宮おん祭りの起源(3)

保延元年 (1135)。

長年にわたる大雨洪水により飢饉が相次ぎ、世の中に疫病が蔓延しました。
鳥羽上皇は、この危機をむかえ関白 藤原忠通を呼びつけました。

「比売神様の託宣の通り、世の中は乱れておる。
若宮の御霊威にすがり、災いを討ち払わねばならん。
しかし若宮の御殿が仮住まいのままでは、お粗末すぎる。
早急になんとかならんのか。」

こうして立派な御殿を造るようにと命じたのでした。
藤原忠通は、春日の正預の中臣祐房(なかとみすけふさ)に、この旨を相談しました。
祐房も同意しますが、なかなか適当な場所が見つかりません。
二人して弱り果てました。
そこで、祐房は神様の御指図を仰ぐため、神前に籠りました。
祈りをささげつづけ、七日間経った夜です。

気がつくと
祐房は、真っ暗闇の中にたたずんでいました。
あれっと、首をめぐらせます。
風がふき、足元がジャリっとなります。
「ここは―」

突然、闇の奥、

どーん、どーん

太鼓が打ち鳴らされます。

はっと音の方を凝視します。
やがて、大勢の人間があるく足音が聞こえてきました。

ザク、ザク、ザク・・・

どんどんと迫ってきます。

祐房は、凍りついたように、その場を動くことができません。
目がなれてきても、その姿は影でしかみえません。
沢山の烏帽子が影となり揺れてみえます。
人影の列が、祐房の前を通り過ぎていきます。
長いながい列です。
静かな行列ですが、まるで空気が熱をおびたように祐房を圧迫します。
どれだけ経ったのでしょうか。
ようやく列がとぎれます。
祐房は、ようやく体の自由を得たように、人びとの後を追いました。

「ここは―」

春日の本社から一丁ほどはなれた場所です。
そこへ、人びとが吸い込まれるように次々と消えて行きました。

夢から覚めた祐房は、このことを忠道に申し上げました。
そして、その地を訪れました。
「ここに神殿をたてよという神託であろう。」
忠道も祐房の夢が若宮の神託であると確信したのでした。
こうして現在の若宮の社地に神殿が造営されたのでした。

保延二年 (1135)。

若宮の神殿が建ち上がった翌年です。
万民救済の為、若宮の御霊威にすがり、御神霊を盛大にお迎えする祭礼を行いました。
これが春日若宮おん祭の始まりです。

祭りは、その後毎年、現在も絶えることなく執り行われています。


春日大社 若宮おん祭りの起源
(1)若宮 天押雲根命の誕生
(2)来るべき災い。母神・比売神の怒り
(3)闇に蠢くものたち。若宮遷宮









今年も、もうすぐ若宮おん祭がはじまりますね。
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