浮かれた行進は ドンチャン騒ぎで 夜通し進みました。
「 うわっははっ 」「 どひゃひゃっ 」「 きゃっははっ 」
みんな 徹夜の 躁状態で 大騒ぎで 笑い声が絶えません。
「 ざけんなよ ~~! 遊びじゃないんだよ ~~~! 」
メロスは 一人 グチりました。
夜も開け 朝になりました。
メロスたちの噂は いつの間にか
行く先々に 駆け巡りました。
あれやこれやと沿道で差し入れがあり
みんなが飲み食いしながら進みます。
「 焼きたてのパンです 」
「 ありがとう 」
「 骨付きスペアリブです 」
「 ありがとう 」
「 ミルクをどうぞ 」
「 ありがとう 」
「 メロス様 スペシャルドリンクです 」
「 ありがとう ゴクゴク おいちい~♪
これは なに? 」
「 道中、お疲れでしょう、
毒蛇、毒サソリ、毒グモ、などを漬け込んで
試しに作った 精力増強リキュールでございます、
メロスさまが、なんとも無いようでしたら
私も 飲んでみます 」
「 お え ~ っ ! 」
毒見までさせられました。
すっかり毒気を抜かれたような気がしました
足取りは,更に重くなりました。
げんなりとしたメロスと
意気軒昂の 他の者達の行進も
そろそろ 全行程の 四分三以上に達しました。
「 おぉぉおお ~! これはぁぁああ ! 」
皆が大声を上げました。
「 これでは 川を渡れないではないか ! 」
「 ここまで来て 何ということだぁぁ ! 」
皆は 目を見張りました
小高い丘から 遥か先を見ると、
降って湧いた災難です。
前方の川に 掛かる橋が、
昨日の 豪雨の氾濫で 破壊されていたのです。
ごうごうと 響きを上げる 土色の激流が、
木葉微塵に 橋げたを 跳ね飛ばしてしまっていました。
「 これでは 期日までに
シラクス市に 辿り着けないではないか 」
「 もはや これまでなのか 」
一行に 悲観の声が上がりました。
「 うふふふ ♪ 」
でもメロスにとっては僥倖です。
「 ありがたや ありがたや 天の配剤 ~! 」
小躍りしたくなりました。
「 神様 ~! ありがとうございます ~ ♪
これで 三日以内に シラクス市には 帰れない~っと ♪ 」
それでも 一行は 川の袂まで来ました。
「 橋の姿形もないや やったね オイラ ついてるね ♪ 」
川を指さしながら 元兵士の山賊らと 義弟が何やら相談しています、
「 どうたら こうたら 」
彼らが 後方に駆け出し 何やら叫んでいます。
「 やれやれ 行進を 止める連絡をしているんだな、
ようやく これで終わりだぁい、
セリヌンティウスには悪いが 自分の命が大切だし ~ 」
メロスは ほっとしました。
「 あぁ これで なんだかわからない行進から 開放される ~ 」
メロスは思いました、
ここで行進を やめてしまえば
命拾いすることが出来る、
メロスの代わりに
幼なじみのセリヌンティウスが
処刑されてしまいますが、
我が身の可愛さには かえられません。
「 やっぱり 自分が一番 大事だよね ~
しかたないよね ~
たとえ 卑怯者と言われても
いや 積極的に 卑怯者でいいや !
死んだら もともこもないもんね ~
にんげん なんだもの byメロス なんつって ♪ 」
針の先ほどの 心の痛みがありましたが、
三日もすれば、たぶん
忘れてしまうだろうと思いました。
「 ここで 時間を潰して ゆっくり
シラクス市に 戻れば、いいんじゃね ?
だって 天災なんだもん、
天災で 忘れた頃に やって行く な~んてね ♪ 」
メロスの心の内では 生来の悪い心が
むくむくと 膨れ上がり、
自己保身の考えに 支配されました。
ニヤリと悪魔のような笑みを浮かべ
声を押し殺して笑いました。
「 ぐぇっ ぐぇっ ぐぇっ 」
続 く