歩けメロス 6 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい








    浮かれた行進は ドンチャン騒ぎで 夜通し進みました。



  「 うわっははっ 」「 どひゃひゃっ 」「 きゃっははっ 」



    みんな 徹夜の 躁状態で 大騒ぎで 笑い声が絶えません。







  「 ざけんなよ ~~! 遊びじゃないんだよ ~~~! 」



    メロスは 一人 グチりました。





    

    夜も開け 朝になりました。

    メロスたちの噂は いつの間にか 

    行く先々に 駆け巡りました。

    あれやこれやと沿道で差し入れがあり 

    みんなが飲み食いしながら進みます。



  「 焼きたてのパンです 」


  「 ありがとう 」


  「 骨付きスペアリブです 」


  「 ありがとう 」


  「 ミルクをどうぞ 」


  「 ありがとう 」



  「 メロス様 スペシャルドリンクです 」



  「 ありがとう ゴクゴク おいちい~♪

    これは なに? 」



  「 道中、お疲れでしょう、

    毒蛇、毒サソリ、毒グモ、などを漬け込んで

    試しに作った 精力増強リキュールでございます、

    メロスさまが、なんとも無いようでしたら

    私も 飲んでみます 」



  「 お え ~ っ ! 」



    毒見までさせられました。

    すっかり毒気を抜かれたような気がしました

    足取りは,更に重くなりました。

    げんなりとしたメロスと

    意気軒昂の 他の者達の行進も

    そろそろ 全行程の 四分三以上に達しました。



  「 おぉぉおお ~! これはぁぁああ ! 」



    皆が大声を上げました。



  「 これでは 川を渡れないではないか ! 」


  「 ここまで来て 何ということだぁぁ ! 」





    皆は 目を見張りました
    
    小高い丘から 遥か先を見ると、

    降って湧いた災難です。


    前方の川に 掛かる橋が、

    昨日の 豪雨の氾濫で 破壊されていたのです。

    ごうごうと 響きを上げる 土色の激流が、

    木葉微塵に 橋げたを 跳ね飛ばしてしまっていました。





  「 これでは 期日までに

    シラクス市に 辿り着けないではないか 」



  「 もはや これまでなのか 」




    一行に 悲観の声が上がりました。

















   「 うふふふ ♪ 」



    でもメロスにとっては僥倖です。



  「 ありがたや ありがたや 天の配剤 ~! 」



    小躍りしたくなりました。




  「 神様 ~! ありがとうございます ~ ♪ 

    これで 三日以内に シラクス市には 帰れない~っと ♪ 」



    それでも 一行は 川の袂まで来ました。



  「 橋の姿形もないや やったね オイラ ついてるね ♪ 」



    川を指さしながら 元兵士の山賊らと 義弟が何やら相談しています、



  「 どうたら こうたら 」



    彼らが 後方に駆け出し 何やら叫んでいます。



  「 やれやれ 行進を 止める連絡をしているんだな、

    ようやく これで終わりだぁい、

    セリヌンティウスには悪いが 自分の命が大切だし ~ 」 



    メロスは ほっとしました。



  「 あぁ これで なんだかわからない行進から 開放される ~ 」


    メロスは思いました、

    ここで行進を やめてしまえば 

    命拾いすることが出来る、

    メロスの代わりに 

    幼なじみのセリヌンティウスが

    処刑されてしまいますが、

    我が身の可愛さには かえられません。



  「 やっぱり 自分が一番 大事だよね ~ 

    しかたないよね ~

    たとえ 卑怯者と言われても

    いや 積極的に 卑怯者でいいや !

    死んだら もともこもないもんね ~

    にんげん なんだもの byメロス なんつって ♪ 」



    針の先ほどの 心の痛みがありましたが、

    三日もすれば、たぶん 

    忘れてしまうだろうと思いました。



  「 ここで 時間を潰して ゆっくり 

    シラクス市に 戻れば、いいんじゃね ?

    だって 天災なんだもん、

    天災で 忘れた頃に やって行く な~んてね ♪ 」




   メロスの心の内では 生来の悪い心が 

   むくむくと 膨れ上がり、

   自己保身の考えに 支配されました。
 
   ニヤリと悪魔のような笑みを浮かべ 

   声を押し殺して笑いました。





  「 ぐぇっ  ぐぇっ  ぐぇっ  」






       続 く