真冬の一関・平泉 vol.1 (「世嬉の一」編) | FEEL J の 旅ブログ

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日本各地の豊かな食と工芸を訪ねて

1週間前、真冬の東北、岩手県の一関と平泉を訪ねてきました。
もっと早くから誘っていただいていたのですが、結局なんだか1年で一番寒い時期に・・・。
お付き合いくださいました岩手県庁の熊谷様、安彦様、寒い中ありがとうございましたっ!!

一関では、「世嬉の一酒造」さんに。


専務の佐藤紘子さんに丁寧にご案内いただきました。
世嬉の一は江戸時代から続く酒蔵です。明治天皇がお立ち寄りになられたことがあったり、島崎藤村、幸田露伴、井上ひさしなどの文化人とも縁があったりと、大変由緒のある酒蔵なのです。
今はこの場所で酒造りはしていないのですが、敷地の中にはいくつもの蔵が並んでおり、その蔵を改装した地ビールの醸造所、蔵レストラン、店舗、そして酒の民族文化博物館などを楽しむことができます。


こちらは酒の民族文化博物館。元は仕込み蔵だった建物です。


ぐるっと蔵を巡って酒造りの工程に沿って展示してある昔の道具を見学することができます。
最後にはこんな感じで酒樽に入って記念写真も(^_^;)


大正~昭和初期にかけて建てられた蔵はどれも趣があって素敵。建物はもちろん、中の調度品も素晴らしいものばかりで、アンティーク好きの私はテンションが上がりっぱなし。一人で見学していたら丸一日居座ってしまったかもしれません。






いま地ビールの醸造とビアレストランとして使われている蔵は、もともと米の精米所でした。テーブルが並ぶフロアは米の洗い場、蒸し場だったそうです。




レストランの向こうに見える立派な石壁。その真ん中あたりに大きく縦にグレーの線が入っているのがわかりますでしょうか。
そう、修復の跡です。
世嬉の一は二度の災害を乗り越えてきました。
一度目は昭和23年の水害。すぐ近くを流れる磐井川が氾濫しました。
そして二度目は3年前の震災。もちろん津波が来る地域ではありませんが、揺れは大きく、この蔵は壁が壊れて抜けてしまったそうです。


店舗として使用しているこの蔵も、大きく傾いてしまったのですが、建築の専門家のアドバイスで天井の梁にこのような木組みが設置されて修復されました。

けが人が出なかったというのが不幸中の幸い。修復の様子のパネルも展示してありました。



さて、敷地内レストランでは郷土料理を味わうことができます。
一関にはよくお餅を食べる食文化があるのです。
佐藤専務は、一関のもち文化を後世に伝えるために、もち食普及推進にも貢献されている方。20年ほどの取り組みが実って、今では若い方々の活動や学校教育などにも取り入れられています。

もともと餅料理の種類や食べる機会が多いことに加え、冠婚葬祭などで食べる「もち本膳」という料理があり、これは武家の礼法「小笠原流」と料理の家元「四条流」の流れをくむものです。

これが基本の形。

手前左に大椀(一番大きなお椀。中にはなんと、甘いあんこのお餅。)
手前右は汁もち(つまりお雑煮。)
真ん中には沢庵2切
向こうには料理もち(あんこ以外の味付けのお餅)
そして、大根なます(大根おろしに甘酢がかかったもの)

儀式では、これをおとり持ち(司会者)の口上に従って、私語をせず、順番に食べていきます。この儀式の後に無礼講の席が別部屋で用意されているので私語はそちらまでお預け。その他にも、まずなますで口直しをしてから食べる、あんこもちから食べる、など、様々な決まりがあります。
ご説明を伺いながら、茶懐石にも通じるものがあると気づきました。

ところで、料理もちはその儀式の豪華さや家の豊かさに応じて品数が増えていきます。
レストランで欲張りな私が選んだメニューは「果報もち膳」。8種類の餅だれとお雑煮、数種の小鉢が楽しめちゃいます。一関の餅文化は餅だれ文化でもあり、300種類くらいの餅だれがあるのだとか(@o@)!!


御膳の上を手前正面から時計回りに
あんこ、納豆、ずんだ、沼えび、じゅうね、ごま、くるみ、おろし。
真ん中は大根おろし(なます)です。
じゅうねとはえごまのこと。ほどよく甘くておいしかった!


この辺りのお雑煮はおすましですね。

それにしてもおなかいっぱい。
ビールも頂いたしね!
この日のビールは食前酒として季節限定ショコラスタウト。


ローストされたモルトの香ばしさ、ビターなカカオの風味が最高に美味しい!
帰りにおまとめ買いしちゃいました(^O^)。

一関は夏の地ビールフェスティバルでも有名な場所。
そして世嬉の一さんではもう一つの蔵を再び酒造りのために改装中。
まもなく、敷地内で酒造りもビール造りも楽しめる素晴らしい蔵になることでしょう。
再訪が楽しみです。


ではつづいては、お隣の平泉へ世界遺産見学へ。