医学的に不確かな説への反証についての愚痴 | jasmin jasmin 女医の子育て。

jasmin jasmin 女医の子育て。

ほぼ毎日、描いているマンガなどです。

「◯◯と思われていたけれど、実際はこうなんだって。」、
「子どもは◯◯しないとダメなんだって。」など
耳に新しい情報に、特に母親は敏感です。
我が子が可愛くて、その将来に責任があると思っているからです。
だから、少しでも子どもに害になることは避けたいし、
少しでもいいということはやらなくちゃと思っています。
しかし、その中には昔から、本当でない情報や噂、
科学的・医学的に正確でない情報が紛れています。

そういった耳新しいことを思いつく人、それを広める人の
動機はいろいろです。
みんなが驚くようなことを言って注目してもらいたい、
誰かを不安にさせると面白い、
自分はすごい人なんだと認めてほしい、
自分の商品を買ってもらいたい
・・・といったところなんでしょうか。

でも、それを検証して否定するのは骨が折れます。
医学文献を検索するのは有料です。
本を買ったり、論文を取り寄せて確かめたりするのも有料です。
時間も手間もかかります。

あまりに荒唐無稽な場合だと、そもそもどうやって探したら
いいのかわからない場合もあります。
例えば「赤ちゃんが泣いてばかりで眠らないのは、骨盤が
ゆるんだ母親の胎内にいたせいだ」というようなことです。
某ベルト屋さんが言っているようです。
言うのは簡単ですが、どこから手を付けたらいいのか
しばし躊躇します。

まずは骨盤がゆるむというのが、本当かどうか産婦人科の文献を
あたり、ゆるむならどの程度なのか、から始めましょうか。
そして、泣いてばかりで眠らない子という定義も難しいですね。
平均で赤ちゃんはどのくらい泣いたり寝たりするものなのか、
どのくらい平均からずれていたら泣きすぎなのか、眠りが少ない
のか、その理由となる状態や疾患はなにかを調べるとします。
でも、それが母親の骨盤のゆるみと比較した文献なんて
見つからないでしょう。
だって荒唐無稽で、だれも科学的に証明しようと思わないから。
うちの長女が言ってた「二人が同時に同じことを言っちゃった時、
ブラジルで誰かが一人、亡くなってるんだって聞いたよ。」と
いうのを証明しようとするのと同じくらい荒唐無稽。

この場合だと、ゆるんだ母親の骨盤がベルトでどのくらい治るのか
証明すればいいのかもしれません。
科学的に検証したいので、ダブルブラインドで行うのが
望ましいでしょう。某ベルト屋さんが売るものとそっくりだけれど
謳われている効果が無いものを用意して、無作為に被験者にも
実験者にもわからないように配布して
装着してもらわなくてはいけません。
もう、考えただけで面倒で、費用と時間がかかります。

そんなこと、実際にできるわけがないと思う人は多いでしょう。
しかし、実際にこういったたぐいのことを検証した人達が
いるんです。現在でも、信じる人達が多い以下の”治療法”について。

鍼、
ホメオパシー、
カイロプラクティック、
ハーブ療法


代替医療ですね。補完医療とも言われます。
その本がこれ。

代替医療解剖 (新潮文庫)/サイモン シン

¥907 Amazon.co.jp

イギリスで実際に行われた実験と
それぞれの”治療法”の効果がわかります。
残念ながら骨盤矯正ベルトについては、実験がありませんが
効果があるとは、どういう過程を経て検証されていないと
いけないのか理解できると思います。

最近、ハフィントン・ポストに書いた記事のことをtweetしたり、
実際的子育てというFacebookページで情報を交換したり
していると、よくもまあ次から次へといろんな説を思いつくな
という説が出てくるので、今日はこんな本の紹介になりました。




◯◯を食べれば△△の効果が!とか、◯◯は食べてはいけない!
とある種の食物を過大評価するのをフードファディズム
といいますが、それに対してはこれらの本がいいです。

メディア・バイアス
あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)/松永 和紀

¥799 Amazon.co.jp

フードファディズム―メディアに惑わされない食生活
(シリーズCura)/高橋 久仁子

¥1,296 Amazon.co.jp

下の本は実際的子育てで教えてもらったので、
今、読んでます。興味深いです。




本当は医師免許を持っていながら、変な説ばかり提唱している
人も大問題だし(信じてブログを書き話題になった船橋の議員が
いましたね)、議員さんの娘で、ご本人は勉強家で信じやすい
だけなのかもしれないけれど、間違ったことばかりAmebaの
オフィシャルブログで流布している女性も大問題なんですけれど、
本当に検証して否定するって労力がいるし、できれば
誰も好き好んでやりたくないのではないかな。







このエントリーは本を買って頂いても私に印税は入らないので
ステマでもないし、トンデモ説の流布じゃないですよ。