「ニセ医学」に騙されないために | jasmin jasmin 女医の子育て。

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ほぼ毎日、描いているマンガなどです。

いよいよ発売になりましたね。NATROM先生の本

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、
健康法から身を守る!/NATROM

¥1,490 Amazon.co.jp

とても頼もしく感じながら面白く読みました。

ニセ医学に騙される患者さん達、心や体が弱っている時には
頭の片隅で怪しいなとは思いながら一縷の望みを託してしまう
ことがあるとNATROM先生は擁護しながら、
医学的根拠・医療制度を示しながらニセ医学や悪徳商法を
バッサリ切っているのが頼もしくて格好いいです。

私も読んでいて「ええー?こんなことを信じてしまう??」と
思うことも出てきますが、やっぱり大事な人や自分が病気に
なったら心が揺れてしまうのかもしれません。

人気者のNATROM先生のこの本は書評がたくさん出てくることが
予想されるので、私は自分の領域に関することを付け足し。




ステロイドは悪魔の薬?p.24
実際、脱ステロイドを謳った代替療法、健康食品、”新たな治療”を
見かけることがあります。これは時に大変危険です。

外用ステロイドに限らず、ステロイド剤全般を「悪魔の薬」呼ばわり
する代替医療の推進者もいる。彼らが言うには、自然治癒力を
高めれば(たいていの場合、自然治癒力を高めんと称するなんらか
の商品をすすめられる)、副作用の多いステロイドなんかを使わ
なくても病気が治るという。本当に副作用なく病気が治るなら、
患者さんにとって大きな福音であるが、彼らが証拠を提示する
ことはない。p.26-27


本書内で大人の膠原病やアトピー性皮膚炎を例に挙げていますが、
小児気管支喘息も吸入ステロイド薬の恩恵を非常に受けた疾患です。
私が研修医の十数年前には、気管支喘息の患者さんは今よりももっと
たくさん入院していました。カルテを見ると10数回目の入院だったり
して、病棟のことを研修医の私より知ってる子もいました。
私の先輩の時代には、重症の喘息患者さんは人工呼吸管理
されることもあったそうです。現在、そんなに悪い気管支喘息の
患者さんはみかけません。



p.28に喘息死亡率が低下しているグラフが載っていますが、
吸入ステロイド薬と抗ロイコトリエン薬のおかげです。
重症化することが減ったため、死亡率が下がりました。
脱ステロイドをすると、またこの死亡率は上昇するでしょう。

死亡率も大事ですが、子どもにとっては、入院をしないで
普通の生活を送ることも、とても大事です。
入院することによって普通の子どもとして友達と遊ぶ機会、
普通に授業を受ける機会、充分に眠って成長発達をする機会が
奪われます。
ステロイドをむやみに恐れるのではなく、疑問があったら医師や
薬剤師に説明を聞いて、お子さんのためになる治療を受けさせて
ほしいと切に願います。
充分な知識がないあるいは誤解したまま子どもに治療を受け
させないのは医療ネグレクトと呼ばれます。大変問題です。




それから出産についての章、病院での出産は不自然?p.66
自然分娩だけが素晴らしい?p.73は本当にそう!とよく言って
くれましたと思います。私もブログで病院以外でのお産という
エントリーを書きました。出生直後の蘇生は一生に関わります。
自分探しを出産でしないでください。






改めて無責任だと思ったのはホメオパシー。
2009年山口県で助産師が、赤ちゃんにビタミンKを与え
なかったことが原因で硬膜下血腫のために亡くなった事件

がありました。

ビタミンKというのは血液を凝固させる因子を作るのに
必要なものです。胎盤を通りにくいこと、母乳中に少ないこと、
ビタミンKを作ってくれる腸内細菌が生後数日はいないこと等
から、赤ちゃんには不足しがちです。日本では生まれてから数回
哺乳ができた時、日齢5前後、
一ヶ月健診時に赤ちゃんに投与します。

この事件前に日本ホメオパシー協会は、ビタミンKは”マヤズム
を立ち上げる”ため良くない、レメディを与えるべきと言って
いたのですが、事件後はレメディはビタミンKの代わりになら
ないと言っているそうです。(p.86)真逆のことを言っています。

私は、友達がレメディを持っていたり、桜沢エリカさん
がはまっていたりでホメオパシー、(´・∀・`)ヘー面白そうと
思っていたことがあったんですが、もうこの一件だけでも
受け入れられません。新生児科医だった小児科医として。
欧米では保険診療でホメオパシーが受けられるそうですが、
NATROM先生が安全な偽薬として処方しているのではと書いて
いますがなるほど、それならわかります。

代替医療解剖 [ サイモン・シン ]

¥907 楽天

この本を読むとアップイギリスでもみんながホメオパシー賛成では
ないことがわかります。





NATROM先生の本には一見、医学用語に見えるけれども普通の
医療者が絶対に使わない言葉が出てきます。
「好転反応」、「マヤズム(症状の原因となる病気の土壌だそう)」
「デトックス」、「よい波動が病気を治す」、
「がんの痛みは治癒反応」

こういう言葉が出てきたら眉に唾をつけることをお薦めします。
ついでに「経皮毒」も医学用語ではありません。




「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、
健康法から身を守る!/NATROM

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何かがあって心が弱る前に知識として
知っておくといいことがたくさん!