今日はFavorite Banana Indians第10回本公演出演者オーディション1日目であった。お陰様で、たくさんの人がエントリーしてくれた。書いてもらう項目に、「自己PRまたは志望動機」というのがある。ここを読んでいると、人それぞれで面白い。割と素っ気なく書いている人もいれば、これまで歩んできた芸歴(や人生)に対しての思いを綴っている人もいる。中には、「生きていたいからです」と書いている人もいて、この人を落としたらどうなってしまうのだろうと考えると、もし不合格だった場合に、それを伝えるのが怖くなる。今日の参加者の中にも、自分の辛かった過去の話をした人がいた。とても重い過去を背負っているんだなというのは分かった。
しかし、どんな背景があろうと、それはお客様には何の関係もないことだ。どれだけ切迫した事情があろうと、ただ単に興味本位であろうと、結果が全ての世界である。いいものさえ見せてくれれば何でもいいのだ。人生を賭けて作った芝居でも、お客様がつまらないと思ったら、それはきっとつまらないものなのである。



これが例えばワークショップの参加者募集であれば、原則全員に参加してもらうことができる。経験も不問だ。ただ、今回は公演の出演者を募っている。FBIの公演の舞台には演技経験者しか立てないのが大原則だ。どんなに小さな役であっても、経験のない人を、この短い期間内に、ちゃんとお客様からお金を取って見せられるレベルまで引き上げる力が僕にはない。ゆっくりなら育てられるかも知れないが、それをやっている時間はないし、その人だけに時間を割くわけにもいかない。
作品のクオリティを保つためには、最初からある程度力があると分かっている人に出てもらうのが早道である。しかし、中には、経験が浅いのに伸びしろが凄くある人もいる。そういう人は、座組の中で、他の出演者から刺激を受けてどんどん成長する。それを見られるのは嬉しいし、ゾクゾクする。(といっても、先に述べたとおり、お客様にはそれは何の関係もない。)短時間のオーディションでそこまで見抜くのは正直難しいが、そういう人がいてくれるといいなと思う。



募集の段階では、ごくごく簡単なあらすじしか載せていない。それに惹かれて応募したという人が結構いる。前回の「Singularity Crash」では、設定の面白さや、ダンス・歌・殺陣といったエンタメ要素があるからということで興味を持った人が大半だった。今回はテーマ性の方に注目がいっている。当然といえば当然だ。ぱっと見は、「Fairy Melody」の方がかなりストレートで、取っつきやすいテーマだからである。だからこそ難しいとも言える。それに、再演にあたってはかなり手を入れるので、初演からは印象が変わる。公開されているあらすじでは捉えきれない要素も入ってくる予定だ。
テーマ性が強いということは、それだけ鼻につくと感じる人がいるかも知れないということでもある。そう感じさせずに、如何に自然に、柔らかく、抵抗感なく伝えたいことを感じ取ってもらえるか。これは結構高度なことである。初演は、幸いなことにそれに成功した。改訂された脚本でそれができるのか。そのことまで担ってもらえるような役者と出会いたい。



応募のメールに書かれていることからは伝わってこないこといろいろなことが、実際のーディションの現場では見えた。思いがいくら強くても、表現力が高いとは限らない。拙くても何か伝わってくればいいのだが、そういう人は凄く少ないというのが実感としてある。逆に、技術に溺れていて、それで全てを処理しようとする人もいる。
1回目を終わって思うのは、そのバランスがいい人と一緒にやりたいということだ。頭数だけ揃えばいいという考え方を、僕はとらない。あと1回(正確には2回)オーディションがあるが、求める人材に出会えなければ、追加のオーディションを行うことも考えたい。
ちなみに、前回のブログに書いた僕自身が受けたオーディションには落ちてしまった。求められる人材ではなかったということだと思う。



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