4月の番外公演vol.8「Fairy Melody~私はピアノ~」の稽古開始が近付いてきた。先週チラシが完成し、知り合いや出演者の劇団の公演に折り込みが始まっている。既に結構な数の枚数を使っているので、出演者の手撒きの枚数があまりないという状態になっている。
通常、この規模の公演では、チラシは最低限しか作らない。基本は出演者が知り合いに手渡しをする分と、出演者が他の舞台へ出演する場合は、その公演への折り込みである。しかし、大抵は枚数が限られるため、全部には入れられない。結果、本当に周囲だけになる。
しかし、今回は、この規模としては異例の枚数を作った。その分印刷代はかかったが、それはそれでいいと思っている。何故そんなに作ったのかといえば、知り合いだけにチラシを配るだけでは広がりがないと感じたからだ。



前々から言っているように、小劇場は、知り合い同士がお互いの芝居を見合っているという、発展性のない状態になっている。だから、チラシも自分の手の届く範囲にしか配布されない。これが商業ベースに乗っている公演であれば、大劇場から中劇場クラス位のどこに行っても、その公演のチラシが折り込まれている。それだけ多くの人がチラシを目にするわけだ。ネット等のメディアが発達しても、劇場のチラシで情報を得る公演もまだ多い。やはりチラシは、演劇公演においては主流の宣伝・情報発信手段である。
その一方で、特に小劇場の世界では、チラシの宣伝効果は常に疑問視されてきた。チラシを見て、全然知らない人が足を運んでくれた事例というのは、東京全体で見ても、本当に数えるほどだと思う。多くの人は、開演までの間やることがなかったりするので、チラシをパラパラと見て過ごすのだが、劇場を出る頃にはもうチラシの中身は忘れてしまい、家に帰ればゴミになる。途中で捨てる人もいるかも知れない。もっと悲しいのは、持ち帰ることすらしないで、席に残して劇場を出てしまう人がいることだ。
このような実態があるため、近年では公演チラシは「資源の無駄遣い」とする考え方まである。



しかし、基本的にお金のない小劇場の団体にとって、チラシは有力な宣伝手段には違いない。SNSも大きな役割を果たしてはくれるが、チラシに取って代わるまでにはいっていないと思う。そのような状況の下、ではチラシをどのくらい作って撒くかは、予算との絡みもあって思案のしどころである。大抵、予算の問題が大きくなるので、先に書いたように、周りだけに限って撒くことになるのが普通である。
でも、それだと今までと全然変わらないなと思った。顔の見える範囲にだけお知らせをすれば、確実性は上がるだろう。そうすると、コスパがよくなる。しかし、見知らぬお客様を獲得することはできない。たとえ劇場に足を運んでくれなくてもいい。ここで僕達が公演を行っているという事実を、できるだけ多くの人に伝えたい。ますは知ってもらわなくては何も始まらない。だから、今回はたくさん作り、色々な劇場に折り込みを行うことにした。
以前なら、これは制作さんの仕事で、多くの制作さんは他の団体さんと掛け持ちしているので、折り込みに行ける範囲も限られていた。しかし、今は「カンフェティ」のような有り難いサービスがある。僕も今回これを使った。新宿エリアが中心になったが、来週あたりから折り込まれ始めることになっている。
枚数の関係で、まだまだ入れられる公演は限られるが、意識改革のひとつにはなると思う。



効果の程は未知数だが、僕としてはささやかながら一歩踏み出したつもりである。「身内」だけにとどまらないお客様を獲得しなければ、活動の未来はない。とにかく、息吹肇とFavorite Banana Indiansの存在を、1人でも多くの人に知ってもらうことだ。そのために、今回のチラシには、初めて「Favorite Banana Indiansとは」という短い紹介分を載せた。このことで、Favorite Banana Indiansがただの「記号」ではなく、公演主体の「名前」であると認識してもらえればという狙いである。
番外公演であり、50席にも満たない小さなライブハウスでの公演である。そこまでしなくてもという声も聞こえてきそうだが、たとえ小規模の公演であっても、1人でも多くのお客様を獲得することには貪欲にいきたい。せっかくいいものを作っても、ごく一部の人にしか知られずに終わっていくのは寂しすぎる。
前にも書いた通り、「発表会」をやるつもりはない。小さなライブハウスだろうが、グリーンのBIG TREEだろうが、紀伊國屋ホールだろうが、やることは同じである。そういう思いを、今回のチラシには込めたつもりだ。
お客様に対して誠実に向き合う。納得していただけるものを見せる。
それだけを目指して、来週からの稽古に臨みたい。
そんな意気込みが入ったチラシが、都内のいくつかの劇場の公演で間もなく見られる。いや、今日から配られた劇場もある。1人でも2人でも、頭の片隅に残る人がいて欲しいと願っている。



Favorite Banana Indians番外公演vol.8
Favorite Banana Indians×memu

「Fairy Melody~私はピアノ~」

作・演出/息吹肇
楽曲・歌/memu

誰にも弾かれなくなった一台のピアノが引き寄せる、時の中に置き去りにされてきた思いと、失われた時間…
戦争で死んだ者と今を生きる者の思いが交わるメロディが、桜の森に流れていく。
死者は「神」になるのか?
安らぎの場所は何処?

●日程
4月22日(金)・23日(土)

●場所
御茶ノ水KAKADO
(JR・東京メトロ御茶ノ水駅徒歩7分)


●キャスト
柚月かな
長紀榮
春田奨
江島志穂
西村守正
高安有紀
小谷陽子(製作委員会)
長谷川彩子

●開演時間
4月
22日(金)19:00
23日(土)14:00/18:00

※開場は開演の30分前

●チケット料金
前売・当日 3000円+1ドリンク(500円)

※全席自由

●チケットご予約

https://ticket.corich.jp/apply/72307/001/

または、息吹に直接ご連絡いただいても大丈夫です。
Favorite Banana Indiansのサイトからもご予約できます。

●Favorite Banana Indiansサイト

http://fbi-act.com

ご来場を心よりお待ちしております!