賃金未払には、定型の賃金を
支払わなかった場合のほか、
昨今話題の割増残業代を
支払わなかった場合も含む。
賃金未払は、民事領域では
債務不履行の一種なのだが、
不履行のままだと罰金刑が
課されるという強烈な制裁が
待っている(労基法120条1項)。
また当該行為者たる自然人
(=代理人・使用人その他の
従業員)のみならず、会社法人
自体も罰金対象とされている
(労基法121条1項)。つまり、
自然人は労基法120条1項で、
法人は労基法121条1項で処罰
される両罰規定である
☆割増賃金の未払については
労基法119条1号により、自然人は
6か月以上の懲役又は30万円
以下の罰金とされています。
本体賃金の未払が労基法120条
1項の適用対象です
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120135661246.pdf
最高裁1959/3/26は、賃金不払の
犯罪は、犯意が単一でないときは
支払日単位でなく労働者単位で
併合罪の成立を認めた。また、
条文では〈代理人〉と表現されて
いるけれども、法人の代表者も
〈〉に包含されると明らかにした
労基署は1949/3/14基発290号で
賃金不払や支払遅延について、
企業が社会通念上なすべき最善の
努力をしていない場合は、支払
期日を指定してそれまでの間に
支払う旨を厳重に確約させ、かつ、
この確約をせず又は履行しない
ときは書類送検すべしという
通達を出している。今日も書類
送検のニュースが出ている↓
http://mainichi.jp/select/news/20120529k0000e040176000c.html
ただ刑事には二重処罰の禁止と
いう憲法39条に基づく原理があり
前記罰金を支払ってしまうと、
そして罰金前科がつくことに特に
心理的抵抗が企業にないときは、
結局、支払わせる強制力を欠く
不良債権と化してしまう。実際、
未払残業代は簿外債務であり、
しかも、一括払を請求されるため、
請求を受けたことをきっかけに、
廃業する企業もいくつもいると
いう話を税理士から聞いた
【過払バブルの後は、残業代
バブル?】という話題が業界内で
のぼっているが、実は支払能力を
欠く企業が非常に多い。それこそ
過払対象企業の比ではない
そして、刑事罰の制裁は前記の
とおりある種の経営者にとっては
支払意欲を沸かせるものだとは
限らないのだ。ネットで未払残業
請求を勧誘する専門家が複数
いるけれども、回収不能リスクまで
きちんと説明していないのでは
ないか
ろぼっと軽ジK