依頼者の家族 | 福岡若手弁護士のblog

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福岡県弁護士会HP委員会所属の弁護士4名によるBLOG
(ただしうち1名が圧倒的に多いですが、だんだん若手じゃなくなってるし)

他の人が書くまでは投稿はしないでおこうと思っていたが、さすがにこれだけ投稿の間隔があくと、ブログの意味がないので。


仕事によっては、依頼者の家族と付き合うことになる。そりゃそうだ。弁護士に依頼する人は、人生の一大事を抱えている場合が多い。それは家族にとっても一大事である。


仕事に依頼者の家族が絡んでくることで、いいこともあれば、悪いこともある。


いいこと。本人の事件解決に向ける意欲が、第三者の監視のもとにおかれることになるので、おうおうにして意欲が強くなりやすいのだが、反面、家族が熱心なあまり、本人以上に家族が感情的になってしまい、本人も引っ込みがつかなくなってしまったりすることもある。離婚事件なんかの時には、それが顕著である。本人達が和解を望んでも、家族が「また、あんたあいつに騙されるつもりね!」と、熱くなってしまい、暗礁に乗り上げたり。ご両親。そりゃごもっとも。でもね・・・。


まあ、それはそれで、私にとっては人間関係や人間心理そのものに関わることのできるまたとない機会であり、家族の理解を得られた時には、本人の理解を得られた時よりも喜びが大きいこともある。


困るのは、本人と家族の利害が対立してしまうこと。


こういうことがあった。ある日、当番弁護士で、「新聞記事を見た。息子がどうなっているか教えて欲しい。」との要請があった。事件は、暴力団関連のものであった。母親は、息子が暴力団に関係しているかどうかも含めて大変心配していた。


被疑者に接見。母親の意向を伝え、事情を聞く。本人は、新聞報道されていることに大変ショックを受けていたが、内容それ自体は間違いないとのこと。ところが、本人は、母親に現在の状況を知られたくないという。


当然、本人を説得し、母親にも事実を伝えたうえで、更生への道を探っていくべきと思われたが、どうも、本人は起訴猶予となり、勾留満期日に釈放されると踏んでおり、弁護人を依頼する気はないようで、私とそこまでの関係を築くつもりもないようだった。


母親の要請で来ている以上、母親に事情を報告をせざるを得ない。母親に嘘はつけないが、被疑者との関係では守秘義務を負っているのも事実。こりゃあどうするか?


結局は、「本人はこういっていました。ホントかどうかは分かりませんけど。」と本人の弁解を報告したうえで、「まがりなりにもこういう事件に巻き込まれたということは、本人とよく今後の生活をどうすべきか話し合って下さい。」と私としては精一杯双方の要求に反しないように伝えたつもりである。でも、いまだにこの時どうするのがベストだったか、考え込むときがある。やっぱり、後ろ向きである。


M弁護士