メッセージ(ARRIVAL)に驚き、感動!(ネタバレレビュー) | 冷やしえいがゾンビ

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めっきりノータッチですが、メインは映画に関する垂れ流し。

みなさんおはようございます。チルです。

 

2017年も順調に映画みるみるライフを走っているつもりです。プライベートにゃ何も良い事はありませんが、映画を楽しめるだけの心理的余裕があれば、私は大丈夫ですきっと。

 

さてさて今回レビューを書きたくなった映画は…

 

ARRIVAL

 

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です。邦題『メッセージ』。原作はテッド・チャンの短編小説。ホラー系を手がけるエリック・ハイセラーが脚色し、それをカナダ人のドゥニ・ヴィルヌーヴが監督した作品です。

 

http://www.message-movie.jp/

 

 

 

予告編から分かる範囲のあらすじ↓

 

人類の想像を超越した形状/大きさの物体が世界各地の12ヶ所に突如出現し、世界に動揺が駆け巡る。物体の中には知的生命体の存在が確認され、各国の文人と軍人が地球外生命体とのコミュニケーションを図ろうとするが…

 

↑アカデミー賞作品賞にもノミネートされていて、メッセージ性の強さと完成度の高さが半ば証明されているし、そもそも原作小説もSF小説として(1999年の)年間ベスト級の評価を受けている。

 

宇宙生物との戦いを描く映画は沢山あったが、今作はコミュニケーションを取ろうとする映画。予告編でもアクションらしいアクションはまったく見られません。しかも主人公は言語学者の女性である。

 

果たしてこの映画にはクライマックスらしいクライマックスはあるのか?価値観をゆさぶるような高次元のテーマ性を提示されるだけの作品なのではないか? そんな不安を抱いたまま観賞しました。

 

杞憂でした。

 

すごいクライマックスが存在していました。発想の切れ味に呆然としました。切り口の斬新さに歓喜しました。色んな角度から見て、その度にため息が出ます。素晴らしい物語だと思います。

 

結論としては以上です。あとはダラダラと

 

中盤以降、主人公は地球外生物が用いている表意文字を理解する事をある種のゴールとし、そこへ向かって進んでいきます。そこに「他の国が◯◯してしまうかも」という人為的なタイムリミットが設定される事で主人公は焦燥感を露わにし、映画全体にクライマックス的な高まりと「どうなるんだろう?」というサスペンス性をもたらしています。

 

言語を理解するためのプロセスを綿密に描いているため、そこの論理性が飲み込めない観客にとっては「んーと…どうでもいいよ」となってしまうかもしれない。やや危険なレベルのSF映画かもしれません。

 

しかし「会話」も映画における決定的な「アクション」であるし、しかも地球外生物との手探りなコミュニケートの様子は緊張感に満ちていてスリリング。個人的には飽きる暇が無いほどのめり込みました。

 

ストーリー以外の部分でも、役者の芝居(なんといっても主演のエイミー・アダムス)、音響デザインの凄み(アカデミー賞で音響編集賞を受賞)などに感動させられるのですが、やはりビジュアル/美術/映像のセンスが圧倒的!

 

主人公たちが地球外生物に会うために通る「通路」が地球の引力・重力を無視していて、「壁」にしか見えない地面に立って歩く事になる描写。「こんなの見た事ない」ですよ。しいて言えばクリストファー・ノーランの『インセプション』ですかね。あれは夢の中の話でしたが。

 

あとは一部の軍人が暴走して宇宙船にある仕掛けを残す場面。「やばいやばいやばいってば!」とヤキモキする観客の気持ちを、まさかの方法で安堵させる。「こんなの見た事ない」!

 

壁を隔てて地球外生物と対話していた主人公が、一線を越えた瞬間。物理法則を1つ2つ無視したかのような状態になる主人公。彼女を取り巻く環境。「こんなの見た事ない」!

 

あとはもちろん、地球外生物が描き出す図形。「円形をベースにした表意文字」と、言葉にするのは簡単だけどそれを実際に映像化するのは大変でしょう。というかどれくらい大変なのか想像すら出来ない事をやっている…

 

地球外生物自体のデザインも、「火星人はタコ型」という古き良き時代からさほど進歩していないように見えかねないのですが、参考にした生物がクラゲであり、クラゲならではの身体的特性を考えると実にロジカルで、納得するしかないデザインなのです。

 

決して過剰ではなく、シンプルの極みとも言うべきデザインでありながら斬新。とにかくこの映画の美術全般には圧倒されるばかり。

 

そしていよいよクライマックス。バラバラだったピースが集められ、美しい完成品を見せられたような衝撃を受けました。以下にネタバレ全開で感動ポイントを書きます。

 

過去の記憶を呼び起こすフラッシュバック(回顧・回想)描写だと思っていたら…

 

主人公は冒頭から終盤まで「愛娘の記憶」を振り払いながら地球外生物との交流を続けるのですが、終盤に「あの子は誰なの!」というセリフを口にした瞬間に観客の中に困惑をもたらします。

 

主人公は娘と死別した哀しい過去を持った独身女性であるかのように描かれてきたのですが、観客はそれがミスリードであると知る事になります。

 

主人公の「過去」では無いとすれば、彼女が脳裏から振り払えないあの映像は一体何なのか!?

 

過去を思い出している映像ではなく、フラッシュフォワード(予知・未来視)だった!

 

このトリック、トリックを巧妙に取り入れたシナリオ構成、まさに大発明といえます。「こんな物語見たことない」!

 

未来視という超能力を得るためのきっかけが…

 

主人公が人間としての能力を超えた証として「未来視」を会得した事が分かるのですが、じゃあそのきっかけは何だったのかと言うと、未知の言語を「理解」することなのです!

 

最後まで対話を諦めなかった主人公だからこそ身につける事が出来た能力。言語学者を主人公に設定している理由が明らかになります。同時に驚かされるのです。

 

「理解」するために主人公が取った行動とは…

 

主人公は地球外生物との対話を続けながらも「未来の自分が何を成したのか」を知る事になります。フラッシュバックのように突然脳裏をよぎる映像。主人公はまだ能力を制御できません。

 

戸惑いながらも彼女は未来の自分の運命を感知し、未来の自分から学ぶのです。つまりカンニングです。表意文字を理解し、何をすべきかを理解し、そのために必要な情報を未来から学ぶ。「こんな物語見たことない」!

 

人類にとって最大の危機は人と人とが争う戦争であるという至極真っ当な結論

 

人類が争いを辞めて結束するためには宇宙からやってきた外敵がやってくる必要がある、そんな結論のSF映画はごまんと作られてきましたが、この映画はその結論の真逆。

 

人類はまだお互いについて理解できていない。真の理解があれば、どんな困難・危機であれ乗り越えられる!そんな素晴らしいメッセージの下に組み上げられた物語なのです。

 

そして主人公は、その危機から人類を解放します。人類が初めて持ち得た「武器」、つまりは言葉によって。

 

主人公が「誰に」「何を」「どうやって」伝えるべきか。唯一とも言える正解にたどり着くまでの怒涛の展開が本当に本当に感動的でした。

 

描き方が下手な監督だと「んー、まあ言いたい事は分かるけど…」という感触に終わっていたように思うのですが、SF映画初挑戦のドゥニ・ヴィルヌーヴがここまで完璧に仕上げてくるとは…驚きです。

 

『君の名は。』『ミッション8ミニッツ』などのタイムリープものを連想しつつ、フラッシュフォワードを取り入れた表現は未来へのタイムスリップとも言うべき描き方。

 

その予知能力をエイリアンから授かるというアイディアにも脱帽だし、そのために言語学者を主人公にした点も脱帽…

 

とにかく圧倒された映画でした。卵が先かニワトリが先か?のようなタイムパラドックスとも言うべき疑問点はあれど、これほどまでに大胆でドラマチックなクライマックスを体感できた事が本当に幸せでした。

 

まだ理解が足りない部分もあるので、2回3回と観賞したい大傑作です。今年のナンバーワンかも…

 

アカデミー賞作品賞をあげたくなる、それくらい大好きな映画でした。言うまでもなく超超超オススメです!!!