ミュージアム [アーティスト気取りの早漏映画人に捧ぐ] | 冷やしえいがゾンビ

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めっきりノータッチですが、メインは映画に関する垂れ流し。

ミュージアム

見ました。
http://wwws.warnerbros.co.jp/museum/

 

早速不満を書いていきまーす。


連続殺人に走る犯人の行動が不可解。アーティストを気取る割に、衝動的で運任せの殺人行為に走るところに疑問が浮かびまくる。主人公の後輩を殺す場面、主人公を大型トラックで轢き殺そうとする場面。どちらも主人公が転倒しなければ犯人は逃げ切れていない。やってることに統一性が無いから魅力を感じない。

犯人が誰を殺そうとしているのかが判明したのにも関わらず、それ以降の警察が犯行を止められない無能っぷりに呆れる。

あるいは、一切の証拠も残さずに次々と殺人を成し遂げる犯人の超越的な能力に呆れる。陳腐な言い方になるが、こう言いたい。「ありえねえよ」

殺人の場面を見せないことで観賞規制なしになってるみたいですが、規制を回避する事よりもリアリティのないストーリーを誤魔化すための手段にしか見えない。逃げているだけだ。子供だましのような描き方で小中学生を呼び込むくらいならもっと質を高めるべき。

被害者のうちの一人であるニートについてのみ、自宅の内装から家族との関係性やら食事描写、殺すまでの経緯まで綿密に描いてるのはどう見ても浮いてる。テンポを悪くしてでも描きたかったのは引きこもり・ゲーマー・アニヲタに対するヘイトですか。

妻と子供が危険な立場に置かれている事が早い段階で判明する構成の下手さには閉口したが、それによって主人公が絶叫マシンと化す。叫びたいのはこっちだ。

犯人や妻子の足取りを探る方法はいくらでもありそうなのに、そういったアプローチをまったく描写しないから主人公の焦燥にまったく同調できない。街中に監視カメラは無いのか? 妻と友人が連絡を取っていたのなら通話記録で居場所が判明するのはもっと早かったのでは?

犯人の動機と連続殺人の真相に関わってくる過去の殺人事件の描き方信じられないほど軽く、なぜ冤罪に至ったのかがまったく描かれていない点も酷い。

冤罪に巻き込まれた人間がどんな人間だったのか、どういった証拠があったのかも分からないのに、そこを連続殺人の動機に設定されても観客は置いていかれるばかり。変に語ろうとするとボロが出る部分だからか、冤罪被害者を自殺させているのも悪質。フィクションの語り手として誠意が無いし、テーマから目を背けている。

クライマックスへ至るまでの道のりがガタガタすぎて終盤のシチュエーションがまったく盛り上がらない。連続殺人の犯人にも、こんな映画でドヤ顔の製作陣にも辟易である。

リアリティや整合性以前に、細かな演出自体がことごとく失敗に終わっているのも絶望的。説明過剰な無駄セリフの多さにイライラさせられっぱなしな上、冒頭から終盤までモノローグをトッピングするセンスの無さには呆れるしかない。言葉を廃した演技を小栗旬から引き出すのがディレクターの腕の見せどころでしょうに。

主人公が巻き込まれるより以前の連続殺人が幼稚なアイディアの羅列でしかなく、その羅列の間に主人公の回想を乱雑に挟み込んでいる脚本構成自体が稚拙。語り口が下手なせいで警察が死体を発見するだけの組織に見える。

とにかく全体的に回想シーンの多さと無意味さが顕著な映画だが、「クライマックスのそこでまた回想挿れるんかい!?」と驚愕させられる。説明不足を補足すれば観客は理解し納得してくれる、スジが通ると勘違いしているのだ。

テンポ良く、流れを止めずに伝えないとキャラクターの背景などの情報はストーリー進行を阻害するノイズ要素にしかならない。逆に言えば情報のタイミングと分量さえ正しければリアリティや感情移入に寄与してくれる。その辺りへの配慮がまったく感じられない映画である。

主人公が妻子の「変わり果てた姿」を見て絶望している真っ最中に「実は生きてるんだけどね」と、あっけなくネタバレしてしまうのにはほとほと呆れ果てた。観客は主人公と同調する暇もない。情報をどんな順番で提示すべきかについて何も考えられていない。

はっきり言えば監督自身がアーティスト気分に浸っているとしか思えない。自分が創った作品を早く褒めてもらいたがっている早漏野郎ですよ。

EATの絶望についても描き方が浅いし、妻がマスクをかぶせられる展開も「なんで先にネタバレするの?」と絶望したし(監督が犯人に感情移入しすぎ)、最後の最後に銃つきつけて脅すだけなのも馬鹿みたいだし、屋外に出たら犯人の大演説大会になって警察が棒立ちしてる光景はスクリーンを直視できませんでした。

セブンっぽい漫画を映画化したところでセブンの五番煎じにしかならないのでは? という危惧が大当たりだったわけですが、むしろそんな予想をはるかに超えたダメサスペンス映画に出会えるなんて驚きました。セブンが低予算でいかにすぐれた作品であるのかを再認識するのと同時に、セブン以降のサスペンス映画というものを一切理解しないままこういうジャンルに挑む映画人が日本にいる事を理解できました。ありがとうございました。

 

上記画像が置いてあるページにリンク貼っておきますね。。。

 

http://www.aeoncinema.com/event/comment/voice35.html