本番でアガルこと | 音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

♪アレクサンダー・テクニークを演奏に生かすレッスン♪
~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

みなさん、こんにちは。フルート奏者の嶋村順子です。

アレクサンダー・テクニークの教師を目指している私は、
現在東京・目黒にあるBODY CHANCEというアレクサンダー・テクニークの学校のプロコースにパートタイム・トレーニーとして通っています。

実は私は静岡県在住なのです。
東京にフルタイムでは通えませんので、資格取得にかかる年数は増えますが、
パートタイム生として自分が通えるペースで学んでいます。
入学してすでに5年目になります。


さて、アレクサンダー・テクニークとは何でしょう。
私の言葉で言うと、それは

「自分を解放し、自律性を回復させるテクニーク」です。

自分が習慣にしてしまった行動パターンや体の使い方、考え方をいったん手放して、
本当に自分らしくいるためにどうすればいいのか、を学ぶことができます。



私は音楽大学卒業後長らく演奏者として仕事をしてきましたが、
学生時代からずっと抱えていた問題がありました。
ひとつは心理面、もうひとつは身体面です。
これらの問題にアレクサンダー・テクニークがどのように役立ったかを
ご紹介していこうと思います。

アレクサンダー・テクニークには大切な原理があり、
それを学んで実生活で応用できるように練習することで、
自分の身体と心を良い状態に戻していきます。
ですが、ひとまず原理の詳しい解説は後にして、
私が実際に体験したアレクサンダー・テクニーク効果の実例をご紹介しようと思います。


まず心理面、ズバリ「アガリ症」です。

この悩みを持つ方、多いですよね。
私は人から見るとそうアガっているようには見えないそうですが、
どんでもない、めちゃめちゃアガリます。
心臓はバクバク、膝はガクガク、アゴはプルプル。バクバクのガクガクのプルプルです。
この数十年もの間(歳がばれますね)
本番で練習通りにできたことなど一度もなかったのではないかと思います。
いつもいつも本番後には程度の差こそあれ徒労感(つまりガッカリ感)に悩まされました。

「どうしてこうなっちゃうのかなぁ。。。」
共感してくださる方、いらっしゃいますよね。


さて、アレクサンダー・テクニーク(以下ATと書きます)では、
余計な筋肉緊張をリリースして必要最小限の筋肉活動量で動くことを学びます。
アガっている時はたいてい身体が固くなっていますよね。
なので、ATを使えば、実践的に身体のコントロールがしやすくなります。

ちょっとまて、アガリは心理的な問題ではなかったのか、ですね。
筋肉と心理とどう関係あるの? ありますあります。

楽器演奏は身体を使ってやるものです。
身体、つまり骨や筋肉の動きが重要だということはお分かり頂けると思います。
そこで身体の緊張には心理というか考え方が影響しているということについて
是非お伝えしたいことがあります。


ご存知の通り「こわい」と思うと身体は固まります。

「本番がこわい」という意識が筋肉に緊張を与え、
そうでない時、つまり練習の時のようにリラックスして自在に身体を使うことが
阻害された状態になってしまうのです。

「こわい」だけでなく、妙に攻めの姿勢で「やってやるぞ」のような気持ちの時も
結局ダメみたいです。
同じように身体が固まりうまく使えなくなってしまいます。

原始的な反射、通称「びっくり反射」がそうさせるのですが、
進化の歴史のはるか昔から、人類が強敵に出会った時に
「全力で逃げるか、死んだふりをして固まるか」
に備えるための反射が脳の原始的な部分にインプットされているのです。

でも待ってください。そこまでの反射が演奏時に必要でしょうか?
むしろ邪魔をされている気がしますよね。

しかし、反射は自然に起こるものなので抑えることはできません。
いったいどうすれば?


ATでは思考と身体の両方に新しいプランを与えることで
自分をうまくコントロールすることを学びます。

実際に私がやっている手順は・・・

まず考え方に働きかけます。

「今起きているバクバク・ガクガク・プルプルは、反射の結果分泌されたアドレナリンがもたらしている生理上の変化なのだ。
ピンチの私を助けるためにエネルギーを補充してくれているんだ。
なーんだ!アドレナリンくん、ありがとう!

という新しい思考プランにします。
これでバクバク・ガクガク・プルプルが悪者から助っ人に変身します。

悪者を排除しようと考えていると「こわい」「やだ」「あっちいけ」のメッセージは脳に送られ続けて筋肉に緊張を起こさせます。

「助けてくれてありがとう」と受け入れれば脳から「こわい」「やだ」「あっちいけ」メッセージが消えます。


さて、私は本番がこわかったのでしょうか?
アドレナリンによって起こったバクガクプル状態がこわかったのでしょうか?
みなさんも考えてみてください。

本番のステージというより、
身体がいつもと違う状態になることに拒否反応が生まれたのではないでしょうか?


さらにこの思考プランと同時に
「緊張しちゃだめ、アガっちゃだめ」ではなく
「頭と首が自由に動けるようにしてあげる」という別の身体プランを持ちます。

「プラン」と言うより「指示」や「意図」になるかもしれません。
びっくり反射の一番大きな特徴は首が固まることです。
「今は固める必要はないよ、首を楽にしても大丈夫だよ」ということを自分に指示したり、意図したりするのです。
ステージにはライオンも大蛇もマンモスもいませんから(笑)。

さらっと出てまいりましたが、
この「頭と首を楽に自由に」というのが実はATの原理の最も大切な要素なのでした。
(この原理についてはまた別の機会に改めて書きます)


さあ、いかがですか?アガリ症克服のためにATでできることは他にもいろいろあります。
何しろアガリ症歴○十年の私が実際に経験して効果を実感してきたことですから、すべて事実です。
今後もどんどんご紹介していきますので、お楽しみに。


そして私の演奏上の身体的問題「腰痛」に関して、次回書いてみようと思います。