実務的に重要と思われる刑訴の最高裁決定。

論文試験では出題されないと思いますが、短答試験では出題の可能性も。


決定日
最決平成23年09月14日
 
裁判要旨
1 証人から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するために被害再現写真を示して尋問することを許可した裁判所の措置が適法とされた事例
2 証人に示した写真を刑訴規則49条に基づいて証人尋問調書に添付する措置を決するに当たり,当事者の同意は必要ではない
3 証人に示された被害再現写真が独立した証拠として採用されていなかったとしても,証人がその写真の内容を実質的に引用しながら証言した場合,引用された限度において写真の内容は証言の一部となり,そのような証言全体を事実認定の用に供することができる

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81621&hanreiKbn=02


決定文

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110920092706.pdf


「(1) 本件において,検察官は,証人(被害者)から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するために証人が過去に被害状況等を再現した被害再現写真を示そうとしており,示す予定の被害再現写真の内容は既にされた供述と同趣旨のものであったと認められ,これらの事情によれば,被害再現写真を示すことは供述内容を視覚的に明確化するためであって,証人に不当な影響を与えるものであったとはいえないから,第1 審裁判所が,刑訴規則199条の12を根拠に被害再現写真を示して尋問することを許可したことに違法はない。
 また,本件証人は,供述の明確化のために被害再現写真を示されたところ,被害状況等に関し具体的に証言した内容がその被害再現写真のとおりである旨供述しており,その証言経過や証言内容によれば,証人に示した被害再現写真を参照することは,証人の証言内容を的確に把握するために資するところが大きいというべきであるから,第1審裁判所が,証言の経過,内容を明らかにするため,証人に示した写真を刑訴規則49条に基づいて証人尋問調書に添付したことは適切な措置であったというべきである。この措置は,訴訟記録に添付された被害再現写真を独立した証拠として扱う趣旨のものではないから,この措置を決するに当たり,当事者の同意が必要であるとはいえない。
 そして,本件において証人に示した被害再現写真は,独立した証拠として採用されたものではないから,証言内容を離れて写真自体から事実認定を行うことはできないが,本件証人は証人尋問中に示された被害再現写真の内容を実質的に引用しながら上記のとおり証言しているのであって,引用された限度において被害再現写真の内容は証言の一部となっていると認められるから,そのような証言全体を事実認定の用に供することができるというべきである。このことは,被害再現写真を独立した供述証拠として取り扱うものではないから,伝聞証拠に関する刑訴法の規定を潜脱するものではない。
(2) 以上によれば,本件において被害再現写真を示して尋問を行うことを許可し,その写真を訴訟記録に添付した上で,被害再現写真の内容がその一部となっている証言を事実認定の用に供した第1審の訴訟手続は正当であるから,伝聞法則に関する法令違反の論旨を採用しなかった原判決は結論において是認できる」
※アンダーライン、強調はESP。


写真提示が「本件において,検察官は,証人(被害者)から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後」であれば、証言を不当に誘導をするものではないわけですから、最高裁の決定は支持できるものと思います。