9月下旬から、10月上旬にかけて、法科大学院では後期(冬学期)が始まると思います。

法科大学院によってカリキュラムは異なりますが、

後期から会社法、民事訴訟法、刑事訴訟法の勉強の授業がはじめるところが多いのではないかと思います。


以下では、これから学習をはじめられる方に参考になる本を挙げたいと思います。

別に以下に挙げた本に限るわけではないのですが、選ぶ際の基本方針としては、


・なるべく新しい本

(古すぎる本は法改正、最近の判例に対応していない)

・学習者に一定程度の支持がある。

(いくら分かりやすいとしても、受験生があまり使っていない本は選ばない方が無難)


というのを挙げておきます。

また読む際のポイントは、


・細かいことを気にせず、まずは最初から最後まで一読する。

・条文の章立て、本の目次をおろそかにしない(条文の章立て、本の目次は、地図のようなもの!)。


ということではないでしょうか。

では、各科目別。


1.会社法について

神田先生の入門書などもありますが、評判の入門書はいずれも古くなっている印象がありますので、あえて和無必要もなくなったかなと思います。ですので、初学者にも十分配慮された、『Leagl Quest会社法[第2版]』(有斐閣、2011年)からはじめればよいのではないかと思います。


会社法 第2版 (LEGAL QUEST)/伊藤 靖史
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なお、会社法をはじめて勉強する人が驚くのは、おそらく憲法・民法・刑法と比べたときの条文の多さ、複雑さだと思います。しかし、条文が少なければ、理解しやすいわけでもありません。民法はまだ良いのですが、憲法や刑法は条文の少なさが、学説や判例の多さにつながっていることを想起していただければご理解いただけると思います。ですので、会社法の条文が多いのは、むしろ条文がきちんと読めれば、会社法はすぐに理解できる、ということを意味します。したがって、会社法を勉強の際には、常に条文をきちんと読むことを心懸けていただきたいと思います。


2.民事訴訟法について

民事訴訟法については、中野貞一郎『民事裁判入門[第3版]』(有斐閣、2010年)がやはり定番かと思います。余力のある方は、同『民事執行・保全法入門』(有斐閣、2010年)もお勧めします。


民事裁判入門 第3版/中野 貞一郎
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民事執行・保全入門/中野 貞一郎
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3.刑事訴訟法について

法学教室355号から連載されている、酒巻匡先生の「刑事手続法を学ぶ」が良いのではないかと思います。まだ完結していませんが、捜査手続は終わったので、ひとまずそこまで読まれると良いのではないかと思います。またちょっと不純な動機ですが、司法試験委員でもありますし(しかも作問側にも長年関与)。


刑事訴訟法の本を1冊挙げるとすれば、やはり有斐閣アルマの『刑事訴訟法[第3版]』(有斐閣、2008年)が良いかと思います。




刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)/田中 開
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4.最後に忘れてはいけないこと

もう1つ忘れてはならないのは、民法の勉強です。

カリキュラムがどうであれ、新司法試験の合格を目指すには、

特に民法の勉強を続けていかないといけないと思います。

(他の科目はやらなくてよい、ということではないです。念のため)


民法の重要性は言葉で説明しても、なかなか理解していただくのは難しいと思います。

では、どうすれば良いか。

1人1人が、自分自身で、新司法試験における民法の重要性を、身を以て知るしかありません。

そのためには、新司法試験の短答式の過去問を少しずつ解いてみると良いと思います。

もちろん、正解したかはどうかはどうでも良く、新司法試験がどういう観点から問うているのか、

ということが新司法試験の過去問を自分自身で解くことによって、分かると思うのです。

またひとまずの目標(とは言え、その目標達成のためのハードルは決して低くない)である、

新司法試験合格のために、必要な指針、プランをつかむための一歩になる可能性もあります。


で、未修者コースの方(特にいわゆる純粋未修者の方)が民法の短答式試験を解くと、

法科大学院の授業で勉強したこともない制度が問われていることに気づいたりするかもしれません。

また、知識が横断的に問われていることにも気がつくかと思います。

(これは論文式も同様で、例年、基本的ではありますが、幅広い分野にまたがった問題が問われている印象を受けます)

自分の有していない知識の多さに落ち込む必要はないと思います。

しかし、それこそが出発点だと思います。

むしろ、自己の弱点、欠点をつかんだときこそが、勝利(合格)への第1歩になっているのだと思います。