欠陥建物を建築した者に不法行為責任が成立する場合の要件については、既に平成19年7月6日最高裁判決(民集61巻5号1769頁)が、「建物の基本的な安全性を損なう瑕疵」という立場を示しました。その具体的な意味を示したのが、今回の判決です。


最判平成23年07月21日

裁判要旨
最高裁平成19年7月6日第二小法廷判決・民集61巻5号1769頁にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」には,放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる瑕疵も含まれる

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81511&hanreiKbn=02


判決文

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110721142929.pdf


「第1次上告審判決にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。
(2) 以上の観点からすると,当該瑕疵を放置した場合に,鉄筋の腐食,劣化,コンクリートの耐力低下等を引き起こし,ひいては建物の全部又は一部の倒壊等に至る建物の構造耐力に関わる瑕疵はもとより,建物の構造耐力に関わらない瑕疵であっても,これを放置した場合に,例えば,外壁が剥落して通行人の上に落下したり,開口部,ベランダ,階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険があるときや,漏水,有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当するが,建物の美観や居住者の居住環境の快適さを損なうにとどまる瑕疵は,これに該当しないものというべきである」


さらに、

「建物の所有者は,自らが取得した建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には,第1次上告審判決にいう特段の事情がない限り,設計・施工者等に対し,当該瑕疵の修補費用相当額の損害賠償を請求することができるものと解され

とも判示しており、修補費用も認める立場を示し、損害論との関係でも重要な判断を示しています(修補費用も請求可能であるかについて、平成19年判決以降議論があったところでしたが)。


※強調、アンダーラインはESP。