卒業を視野に
高校3年。卒業まで半年を切った、高校最後の文化祭の後夜祭。
毎年作られる文化祭ソングは、やっぱりその年もお世辞にもうまいとは言えなくて。
でもそれでいきなり卒業の二文字を実感した私は、
皆でもみくちゃにジャンプしながら、
これ程大好きなものに包まれている幸せに大泣きした。
大学は高校より短かった。あっという間だった。
人脈は高校よりずっと広がって、私の学校の占める割合は小さくなってしまった。
文化祭にはほとんど行ってないし、何せ4年になってからは学校に行ってない。
だから、思い出すのが、破片を集めるように危うい。
何かを思い出し忘れているような気がして、芋づる式に出てこない誰かがいるような気がして、写真に残ってない何かがあったような気がして。
いつか忘れてしまうかもしれない。
忘れていることに気付かないのが一番恐い。
高校の時は、高校での生活を時系列を追って思い出せばまんべんなく辿れたのに。
あのスコールのような雨の中、弓を引いたのは確かに大学に入ってから。
でも、弓、それだけで高校の記憶だと思っていた。
記憶が入り混じる。時間がずれる。それだけじゃない。自分が作り上げた記憶がある。
長く生きるにつれて、私は何かを捨てていて、
生きることは、等価交換の連続だと思ってて、
だから、絶対手放さないと決めたものがある。
この記憶と等価の何を一体手に入れたんだろう。
過去の中では生きられないとしても、過去がないと、きっと私は生きていけない。
例えば君がいないだけで、私はひどく色褪せてしまうかもしれない。