素直になれなくて・打ち合わせ実況中継 | 北川悦吏子オフィシャルブログ「でんごんばん」Powered by Ameba

素直になれなくて・打ち合わせ実況中継


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私の脚本の打ち合わせを再現してみたいと思います。

「素直になれなくて」


今は、私がまだ本調子じゃなく外に出られないので、電話打ち合わせです。


まず、プロデューサーの中野さんから電話があります。


私は、徹夜で書いて一睡もしてくなて、そして、全身全霊で書いたので、

基本は、一字一句、直す気がありません。

そして、ドラマの世界に行ったっきりで、気が立ってます。


ガルルルルルルッ。

虎です。虎。

檻ん中、入ってます。


ガルルルルルルッ。

ノッシノッシ歩いてます。


監督のみっちゃん(光野道夫ディレクター。敏腕。私よりずっとベテラン。年上)

「北川さん、このセリフなんだけど、こうでこうでこうならないかな?」

こっちも、全身全霊で、直しの提案。


私は、虎なので、気の立った虎なので

「ん?(私になにか、ケチを?!)ガルルルルルルルッ!」

ますます大きな唸り声。


みっちゃんさん、すぐさま撤退。


「中野ちゃん(と言ってるかどうかは知らない。でもずっと中野さんの方が年下で後輩で、そして業界だから、ちゃんね)、ダメだわ。とてもじゃないけど、檻開けられないわ。噛まれちゃうよ。俺、虎とか飼ったことないし」

「いや、ぼくもありませんけどね」

と中野さん。


しかし、ここで、中野さん再登場。

「光野監督、ちょっとそれ、貸してみしてください」

とみっちゃんが手に持ってる、肉の塊を、ゆずり受ける。

中野さん、肉を片手に持って、檻の方へ。

「よ~し、よ~し、リーリーリーリー」

リーリーリーって言わない?あれ、ネコだっけか?


いいですか、光野監督。相手は気が立った虎なんです。真っ正面から行っちゃいけない。

こう横からすべり込むように。

まず、こっちは敵じゃない、味方だってことを知らせてやって。

よ~し、よ~し、リーリーリーリー。(肉の塊をちらつかせながら)

「北川さん、ここのセリフだけどね。こんな考え方もあるんじゃないかと」

三周半くらいかかりそうな、もって回ったおっとりとした説得。


ん?

んんんんんん?

それも、あるかもしれない。

トラの気持ちが次第に、そちらの方へ。

「で、ちょっと試してみたらどうかな。そういう方向も」

みたいな、やわらかい言い方。


グルルルルルルル(虎、少し静まる)。

グルル~(それで直してみようか、という気持ちになってる)。


みっちゃんが、その電話のあとに中野さんに

「すごいな。中野ちゃん。いつの間に虎の飼育係に…」

「いや、仕方ないじゃないですか。なんだか、係になっちゃったんで…」

「でも、噛まれたりしてない?片手ちぎられたりとか…」

「あ、大丈夫ですよ。ぜんぜん、平気です」

「って、中野ちゃんっ。中野くん、足が。片方、足が半分から下、ないじゃないか!!

「あっ、実はこの前、ちょっと噛みちぎられまして…。でも、平気です」

「平気ですって…!」

「マジ、平気です。俺、『素直になれなくて』さえ、成立すれば、成功すれば。俺の足の一本や二本。ぼく、強い子なんで」

「中野くん!!

みっちゃん、感動しながら、涙を流しながらも、後退。

あとずさり。

知らないふりして、もう、台本のコンテを割り始めている(撮影の準備ってことね)。


そして、見なかったことにして走り去るみっちゃん。

コンテに没頭。


このように、プロフェッショナルなスタッフで、お届けします。

4月からのフジテレビ系木10ドラマ。「素直になれなくて」


プロデューサー・中野利幸(「ラストフレンズ」)

監督・光野道夫(「BOSS)」)

脚本・虎子


よろしくお願いしますビックリマーク



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これが、本の打ち合わせ時の私。(自画像)