偶然か必然か | ケセラセラ通信日記

偶然か必然か

満56歳の誕生日。奇しくも、シネ・ヌーヴォの誕生日と同じなのだ。ヌーヴォは今日で満10歳になった。よくもったなあと思う。私の誕生日より、余程めでたい。
私のほうは、今日もキリキリ仕事して、夕食も食べずに閉店間際の本屋へ飛び込み、別の仕事に必要な資料用の写真集をようやく手に入れ、ホッとして夜の街へ出た。誰からも「おめでとう」と言われなかったけれど、こうして元気にしていられるだけで善しとしなければと思い、さて何を食べようかと思案していると、携帯が鳴った。
30の息子からで、いま梅田にいるから一緒に飯でも食べないかという。それはちょうどいいと、洋食屋の前で落ち合うことにする。会ってみれば、べつに私の誕生日だからというわけではなく、たまには親父の顔でも見て帰るかということだったらしい。
息子はビーフストロガノフとビール、私はビールなしのBランチを食べ、次は喫茶店へ。お互いに煙草を何本も吸いながら、1時間ほどおしゃべり。話せば話すほど、ものの考え方や感じ方が、イヤになるほどよく似ている。こいつも苦労するなあと思いつつ、悪い気はしないのである。
なにより、息子がまだ幼いときに離婚し、彼にはずいぶん寂しい思いをさせたのに、こうして何のわだかまりもなく話せるのがありがたい。
「いい誕生日になったよ、ありがとう」と言って別れたが、私は彼の誕生日を思い出せないのだった。なんと薄情な父親か! これからは、絶対に忘れないようにしよう(〈絶対〉はありえないと思うけど)。