日本の雇用は変なのか? 経済自虐史観からの脱却 | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします


日本の雇用環境は変なんです。日本ってのは異常な国で国家主導の変な国なんです。だから、経済成長ができないのです。という人は多い。なんちゃってリバタリアン(?)の池田信夫さんや藤沢カズさんなんてのはその典型だろう。一方で日本の伝統的な価値観に戻れと叫ぶ人たちも居る。終身雇用とか年功序列と言った慣行を大事にしようという人たちだ。

どちらが正しいのだろうか?

個人的にはこのブログでいつも書いてきたがその両方とも正しくないと思う。

もちろん、日本の雇用に関する法律で変えるべきものはあるだろう。そのことは否定しない。しかし、たとえば、終身雇用というのはいつも言っているように日本特有の雇用慣行であるわけではない。そもそも大企業や公務員を除いてはそのような慣行はそもそも存在しない。また、賃金が年功に応じて上昇するのはどこの国でも普通に観察される事象である。もちろん、判例に基づくくだらない解雇規制はさっさとやめて金銭解雇などにするべく法整備をしたほうがいいことは言うまでもないが、一部のなんちゃて識者が言うように日本の解雇規制が日本経済を過度に圧迫しているとは思えない。もちろん、解雇規制の緩和は一定の効果はあるだろうが、池田氏や城氏あたりが叫ぶような画期的な効果はないだろう。


すなわち彼ら、なんちゃって識者の現状認識は何かがおかしいのだ。そして、それはビジネスの現場で色々見ている人間に非常によくわかる。

本日紹介するのはこの一冊だ。


日本産業社会の「神話」―経済自虐史観をただす

上記の僕の言っているような主張は肌感覚と同時にちょっと理屈で考えればわかるはずだ。本当に日本の労働市場がそれほど硬直的ならば今頃日本はギリシアやイタリア・スペインのようになっているだろうが現実にはそうでない。それに各国の賃金カーブや失業率を比べれば日本の労働市場がそれほど異常ではないことはすぐにわかる。

本書はもっといろんな研究をしる筆者が上記のような間違えた通念を否定する一冊である。

まず日本は横並びの評価・アメリカの企業は実力主義・成果主義という神話がまず否定される。

筆者が丹念に各種の研究を調べ実地で調査をしてきた経験によるとむしろ日本企業のほうが各人の評価に歴然とした差をつけておりアメリカの場合はそれほどでもないという構図が描き出される。また、アメリカでも年功という要素が存在するのは当然の話だともいう。(特に生産現場など)

次に否定されるのは日本人は愛社精神や仕事に対する熱心さが強く欧米人はそうでもないという一般的な通念。これも各種の国際的なアンケート調査を精緻に読み込むとそうではないという。むしろ、日本人は会社に対して忠誠心や誇りが薄く仕事に対しても好きではないが稼ぐために仕方なくやっているという姿勢が強いということがわかる。

また年功賃金に関しても日米ともに見られる側面であると各種のサラリーの調査から否定される。

僕にとっては当たり前の話であり驚く話ではない。まあ、理論的に物事を考え多少の各種の研究を見、自らの実体験に照らせばすぐにわかることだ。が、新聞や雑誌・なんちゃって評論家は相変わらずも日本はおかしな国で・・・。という主張をいたるところで繰り返している。だから本書の内容は多くの人にとってははっとした驚きを与えてくれるだろう。


だが、日本がそんなにおかしな国ならばこんなに驚異的な発展を遂げたわけがないのだ。


保守派にとっては・・・。日本は間違えた戦争を行ったという自虐史観から脱する必要を訴える人は多い。が、多くの保守派と呼ばれる人々は経済においてはなぜか“日本というのは変な国で・・・”という改革論を訴える。が、その多くは事実に全く基づいていない。経済面においてもこの一冊にあるように我々は“自虐史観”から脱する必要がある。



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