成長をあきらめる | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします


産業革命以降、我々の経済は大きく成長し続けた。日本も明治維新以降、驚くべき成長を遂げた。特に戦後の成長は本当にすさまじいものであったということができるだろう。

しかし、バブル崩壊以降、日本では失われた20年といわれるような経済停滞が続いている。そして欧米諸国でも今同様に「日本化」だの、「Lost Decades」だのという言葉が流行である。先進国が停滞の時代を迎えていると多くの人が感じている。そして、その停滞に対して身の丈にあわない社会保障制度が財政を圧迫しているのは言うまでもない。特に南欧の諸国でその影響は大きく、ユーロという通貨をも揺るがしているのは皆さん、ご存知のとおりだ。

僕のブログでもよくイノベーションの喪失や生産性の向上の余地がなくなってきていると書く。(参考記事→アメリカは日本化するのだろうか? )また、規制緩和などの必要性は認めるが、それで以前のような経済成長を取り戻せるかは懐疑的に考えている。

本日紹介するのはアメリカで大きな議論を巻き起こし2011年に最も話題となった経済書に選ばれたこの一冊である。


大停滞

当ブログでもよく紹介するMarginal Revolutionという有名な経済ブログの執筆者であるタイラー・コーエンという教授の一冊だ。

シンプルに言えば、著者の主張は僕がよく述べる意見と大枠で変わりはない。経済成長の源泉たるイノベーションは停滞している。そして今後しばらくその可能性が続くかもしれないということだ。

その上で、著者は18世紀から1970年代まで先進国では大いなる経済成長を遂げたが、その後は実質的には経済はあまり成長していないし、経済成長のために必要な果実を食べつくしてしまったと主張する。

その果実とは
①無償の土地
②イノベーション
③未教育の賢い子供たち
である。

特にイノベーションに関しては1955年を境にその数は急激に減ってきている。そして、現代の我々は1500年代なみのイノベーションしか起こせていない。成長分野である医療や教育は政府の介入が強すぎて、コストが上昇する一方で生産性そのものはあまり上昇していないし、唯一の偉大なるイノベーションであるインターネットは決して大きな雇用は生み出さない。

1870年代から1970年ごろのように次々と新しい製品が市場に投入されることは現代においてはない。我々の祖父母の世代にとって今身の回りにあるものは子供の頃には考えられなかったようなものがほとんどだが、我々の世代にとって今身の回りにあるものはインターネットを除いては子供の頃から身の回りにあるものである。と考えると、上記の主張は実感が持てるだろう。

一部の人は需要不足だから財政政策を打てばいいだの金融緩和をもっと行えばいいと主張する。しかしそのような考え方には非常に疑問がある。なんとなく日本はすごい国だ。だから成長が停滞するのはおかしいなどと考えているようだが、それはおそらくとんでもない間違いなのかもしれない。(まして、いまだにバブルの後遺症に苦しんでいるという主張にいたっては。。。)むしろ先進国が今後停滞の時代を迎えるならば日本はむしろ先頭を走っているのかもしれないといえるだろう。

需要不足が停滞の原因だと考える人も、規制緩和や減税で経済は復活すると考える人も、ぜひその前の事実関係の整理やなぜ経済が停滞しているのかを知るために読んでもらいたい一冊である。今、欧州で起っている危機の背景の理解にも役立つだろう。少なくともアメリカでは彼の考えをめぐって大きな論争が起こっているようである。非常にシンプルで読みやすくわかりやすい本なのでぜひとも読んでもらいたい一冊である。



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