場当たり的で戦略がなく常識もない日本のエリート 今回の中国の件で | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

今回の中国の一件。民主党政権もさすがに容易には折れないだろうと思って、今朝会社についたら。。。。あっさり↓

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100925-00000004-jij-soci

中国人船長を釈放=「今後の日中関係を考慮」―尖閣沖漁船衝突・那覇地検


こんなニュースが流れた・・・。


茫然自失してしまった。今回のこの問題はもちろん、ネット上で特に『保守』といわれるかたがたが多くとりあげていたので僕は書くつもりはなかったんだけど、さすがに一言言いたくなって書くことにした。ちなみに、イギリスではほとんどとりあげられていない。


僕が思ったことは

『場当たり的で戦略がまったくない』という感想。


ま、普通の回答としては

『中国に脅せばどうにでもできる、と思わせた(ま、いつものことだが)によってこれからの事態はかえって悪化するということだろう。今後はもっと些細なことでも脅しにかかってくるかもしれない。』

というものか。


東証の社長だかが、「中国経済への依存度があまりに高いのでやむをえない・・・」みたいなことを言っていた。

僕は??と思ってしまった。

今回の一方的であきれ返るような譲歩は財界からの要望も強かったんだろう。たしかに、短期的に日系企業の経済活動に影響が出る。また、ネット上などでも譲歩してはだめだと思いながらも経済活動への影響を気にする人も多かったのでは?だから、結論として東証の社長みたいに考えて自分を慰めている人も多いかもしれない。


本当にそうなんだろうか?僕はそれはあまりに短期的で一面的な考え方だと思う。。


もし、日本が徹底的に戦った場合には何が起こっただろうか?

おそらく、中国は現地に進出している日本企業が不利をこうむるような制裁をもっと行ってきたのではないだろうか?あるいは、両国の貿易を阻害するような行為に出たのかもしれない。


だが、そのことは日本だけに不利になるのではない。実は中国にも大きなダメージをもたらす。

①まず、日系企業の中には中国から撤退して他の国に生産設備を移すところもでてくるだろう。小売業などで進出を考えているところも見合わせるかもしれない

②騒ぎが大きくなればなるほど諸外国にも伝わるだろう。そうするとどうなるか?

③一般の中国人の立場からしても不利益はあると思う。

④中国にとっても日本は第3位の輸出国であり第1位の輸入国


以上をもうちょっと考えてみる

①について


リーマンショックのときに日産がイギリスで工場をしめた。これがBBCで大きなニュースとして取り上げられていたのだ。なぜなら、その町はほぼその工場で成り立っていたから。その工場のおかげで雇用があり、さらに町の小売業や飲食業も成り立っていたのだ。

同様のことは中国にも言えるだろう。日本企業(特に製造業)が撤退しれば当然中国人の雇用が失われる。その町にある小売業や飲食業も打撃を受けるだろうし、その企業と取引をしていた中国内の別の町の製造業や小売業も損失をこうむるだろう。

さらに今後の日本からの投資(企業の進出という意味で)も減るだろう。中国は外貨を呼び込むことで成長してきたのだから、投資が減ることは当然大きな痛手なはずだし、お金だけでなく日本企業の技術やノウハウも伝わらなくなってしまう。


②について

騒ぎが大きくなれば中国が政治リスクが高い国というのが他の外国にも伝わるだろう。そうすれば、他の国の企業は今まで以上に政治リスクを高めにみつもり、中国への投資をためらうようになるだろう。別にインドでも東欧でも南米でも成長している国はいくらでもあるんだし、世界中の国が自国の発展のために外資の優良企業の呼び込みをやっているご時勢だ。

→だから、①と②を考ええれば、中国の財界だって今回の揉め事は迷惑なはずだ。中国人だってうまく日本人と商売をしたいのだから。レアアースとか他の資源だって禁輸された日には中国の資源会社も困るだろう。売り先がひとつ減るわけなんだから。それに中国はすぐに禁輸するということが実証されたわけだから、日本企業はもちろん、欧米企業も他の調達先を探したり代替品でまかなえないかをより研究するだろう。結果はレアアースなどの資源価格の下落につながる可能性が高い。


③について

消費者としての中国人にしても迷惑だろう。たとえば、日本に旅行に行きたい人・家電を買いに行きたい人も日本への渡航禁止なんて措置を中国政府ならとりかねない。そんなことされたら大迷惑だろう。スマップの上海公演を楽しみにしていた若者も多いはずだ。ネット上のウヨクはしらないが、政治に関心の薄い女子大生や女子高生にしたらいい迷惑だろう。


④のついてはいちいち論じるまでもないだろう。比較優位が・・・なんていう必要もないと思う。


日本企業が撤退したらその隙に欧米の企業が進出するのでは?という反論もあるかもしれない。でも、もし、工場などを建てるのならばとっくにたてているはずだろうから、そのことはあまり問題ではないだろう。小売業だってあんだけ広い土地で人口も多い国だし、商売熱心な人種だ。日系の小売業が撤退したくらいで急に利益が出やすくなるとも思えない。


日本が中国経済に依存しているということはむこうも依存しているということだ。そんな当たり前の理屈も日本の政治家にはわからないのだろうか?財界のお偉方もそうかもしれない。しかも、問題がおおごとになればもっと世界中が注目する。そうすればやっぱ中国っていうのは危ない国だというのが知れ渡るのだ。だから、今回の日本の外圧に屈した釈放劇にはあきれてものが言えない。


本当は今頃中国の首脳もほっとしているだろう。もし、緊張が続けば続くほど、日本だけじゃなく中国も追い込まれるのだ。だから、今回は徹底的に戦うべきだったと思う。

これは、お互いにとっての『チキンゲーム』なんだとなぜ日本のエリートは気づかないのか。貿易額も人的交流も大きい国同士が、お互いの貿易額を減らすようなもの。これは、普通の経済理論、いや、常識的に考えてお互いにとんでもないマイナスの影響が出ることなんだ。だから、どこかで中国も態度を軟化させただろうし、そうなれば日本も領土問題は毅然とした対応をしながらも妥協点を探れただろう。


今回の短期的で短絡的な思考に基づいた判断は将来へのさらなる禍根を残したのは当然ながら、日本人エリートの戦略的思考の弱さをあらためて浮き彫りにしたのではないだろうか?


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