全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


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ゼロから電力自由化を考えてみるシリーズの第3回。今回はドイツで電力自由化が行われたときにどうなったかという話を紹介しながら、日本の電力自由化の問題点について考えてみます。でもまずは電気代の話からです。

◆今回のトピックス
・電気代をシミュレーションしてみよう
・ドイツも初めはうまくいかなかった
・日本はドイツから学べるのか?

◆電気代をシミュレーションしてみよう

インターネット上では、電力会社の比較サイト(エネチェンジ、電力会社.net、価格ドットコムなど多数)や、東京ガス、東京電力などの会社サイトで、現在使っている電気代(もしくは電力使用量)を打ち込めば、会社や料金プランを切り替えた場合どうなるか、というシミュレーションができるようになっています。

ただ、シミュレーションの結果「これだけ安くなります」と出てくるプランの多くは、長期加入であったり、携帯やインターネットなどのセットで契約した場合の割引である事が多いので、条件などをよく確認してみてください。

ちなみに我が家でシミュレーションしたところ、東京ガスを含むほとんどのプランでは現状より値上がりしてしまいました(笑)。うちは東京都練馬区の賃貸アパートに2人暮らしですが、電気はあまり使っていません。

総務省の統計によれば、平均的な2人暮らしの家庭では年間およそ10万円ほど使うそうですが、うちは5万円ちょっとなのでおよそ半分ほど。その分割引になる割合は少ないんですね。現状では、たくさん電気を使う家庭ほど割引されるようになっています。その方向性は、社会全体のエネルギー利用を考えるとまずいと思います。電力自由化をきっかけに、省エネという視点でもいろいろなアイデアが増えるといいなと思っています。



平均の半分しか使っていないといっても、うちは我慢して節電をしているわけではありません。電気は使っていませんが、冬の暖房はガスを使っているのでガス代は結構かかっています。

だから省エネ家庭とは言えないでしょうね。これについては、賃貸住宅の断熱性能がヤバイという日本特有の事情もからんでいますが、今回はそこを掘り下げません。(興味のある方はこちらの記事をどうぞ)

いずれにしても我が家のようにあまり電気を使っていない家庭にとっては、電力会社を切り替えても電気料金はあまり安くなることはなさそうです。よく考えると、関東のほとんどの家庭が加入している東京電力の「従量電灯B、C」という標準プランは、省エネについてはよくできています。

このプランは3段階制で、使用量が120kW時までは安め、120kW時から300kW時までは普通の料金、そして300kW時を越えた分は高めというシンプルな料金設定になっています。電気をたくさん使った月はぐんと料金が上がるけれど、使わなければ使わないだけお得、つまり節電することでメリットが生まれるというものです。

だからといって、ぼくは「東京電力のまま変えない方がいいですよ」と言いたいわけではありません。みなさんご存知の通り、原発という危うい電源に頼り、実際に事故を起こした後も再稼動に向けて準備を進める東京電力には多くの問題が残されています。

ただ、東京電力以外などこでもいいとなってしまうのは、違うのかなという気もします。切り変えるにせよ、しばらく様子を見るにせよ、自分のデータを知った上で選択をするというのが賢い対策ではないでしょうか。

「自分がどれだけの電力を使っているか」とか「切り替えたらどうなるのか」について知る事は、賢いエネルギー利用の第一歩なので、「電気使用量のお知らせ」を引っ張り出し、シミュレーションしてみる事をお勧めします。

ちなみによく質問されることですが、うちのような賃貸アパートやマンション住まいの家庭でも、新しい電力会社に切り替える事は可能です。ただしマンションで一括契約している所もあり、その場合は変えることができませんから、切り替えたい場合は確認してみてください。

◆ドイツも初めはうまくいかなかった

さてここで、90年代終わりから電力自由化が始まった欧州の経験から、日本の電力自由化の未来を考えてみたいと思います。お話を聞いたのはドイツ在住ジャーナリストの村上敦さんです。ドイツと言えば、自然エネルギーによる電力が、すでに年間を通して電力消費量の30%分を発電するなど、エネルギーシフトが進んでいる国として、このご当地エネルギーリポートでも何度も取り上げてきました。でも、電力自由化をめぐってはいろいろな問題があったようです。

村上さんによるとドイツは電力自由化については、EUの中では一番最後まで抵抗していた国でした。理由はいくつかありますが、以下のような日本にはない事情もありました。

ドイツでは、州や市などが出資した子会社や第三セクター(※)が上下水道とともにエネルギー供給を担ってきました。つまり電力供給の会社への出資分の利益が自治体の予算に組み入れられていたため、自由競争によって、顧客を失ったり、低価格競争をはじめると、州や自治体の歳入に変化が起こるので、それを政治的に嫌ったのです。最終的には、自由化のための国内法の整備も、その施行も、欧州の大国の中では一番遅れての実現でした。


村上敦さん

村上さんは、「さらに自由化の制度にもさまざまな不備がありました」と言います。まず政治力を持っていた各州の大きな電力会社がおよそ3割ほど値下げするという安売り攻勢をかけます。そこで他の会社も一斉に3割ほど値下げしました。実際には、契約を切り替える消費者は少なかったのですが、小売り会社同士の競争ばかりが過熱していったことで、体力がない企業が1年くらいで厳しくなっていきました。

それを大きな会社が吸収していて、自由化から5年ほどでドイツ全体の発電出力の85%を4つの大企業が占めるようになってしまいました。いわゆる寡占化です。もちろん、地域主体の電力会社も細々と残っていたのですが、15%くらいの発電出力を600くらいの会社が分け合うような形にしかなりませんでした。自由化以前には、ドイツの70%ほどの発電出力を10数社が扱っていましたが、自由化によってかえって独占が進んでしまいました。

村上さんは言います。「最初の3年だけは電力価格が下がりましたが、寡占化が進んだ事でそれから毎年のように価格は上がりました。自由化のめざす透明性や公平性とは、真逆の動きになってしまったんです。さすがにこれは失敗でした」。

※ドイツの都市部では、市が出資をして上水道とエネルギー(電気や熱)を扱う会社を運営している。それらの会社は「シュタットベルケ」と呼ばれ、都市の電力系統は自治体が所有するということになっていた。現在、ドイツのシュタットベルケはおよそ600社ある。一方、農村部にはシュタットベルケがなく、市よりも大きな州が出資してエネルギー企業を運営してきた。

◆日本はドイツから学べるのか?

ドイツではその後、寡占化を止めるために国が監督官庁をつくり、新規参入の会社や地域の会社にも不利にならないよう発送電分離や送電網を利用する際のルールをきちんと作り直しました。村上さんは「そうすることである程度落ち着いてきましたが、単に自由競争にすると寡占化することがわかっているのだから、最初から監督官庁を置いてしっかりルールを決めておけばそんなに苦労することはなかったんです」と言います。

そして日本の自由化についても、同様のリスクがあると警鐘を鳴らします。「自由化によって、競争が激しくなるというのは幻想です。自由化されているけれど、インターネットの買い物はほとんどアマゾン一社です。検索はほとんどグーグル一社です。これは自由ということなんでしょうか?

電力については大きな発電所と電力網を握っているところが圧倒的に有利だから、すでに高圧契約は自由化されているのに、ほとんど市場は動いてきませんでした。低圧についてのルールも明確でありません。その中で国民が安ければ良いという方向に走ったら、今の九電体制すら縮小して、3つか4つの電力会社しかなくなってしまうかもしれません」。

当初のドイツと同じように、9割くらいの市場を大手の4社が所有して、残りの1割を地域ごとに100や200の小さな会社で分け合うような状況になるかもしれません。一応選択できなくはないけれど、それはぼくたちの望む自由化の形ではありません。



ルールをはっきりさせておかないと、自由化する事によってかえって独占に近づくリスクがあるというのは重要な指摘です。それを防ぐために、国が規制を強化する必要もあります。でも日本では託送料(送電網を利用する会社が送電網を持っている会社に支払う費用)がいくらになるか、についてオープンに議論されているわけではありません。

また、このブログでも指摘しているように電源表示は義務づけられていません。そして発送電分離は5年先のうえ、その内容も十分に中立性が保証されるわけではありません。この辺りについてもっと国民が関心を持って、議論をしていく必要がありそうです。

村上さんは最後にこのように言いました。「自由化でいろんな料金メニューが増えると言いますが、送電線から出てくる(商品としての)電気は同じモノです。本当に大切なことは地域密着であったり再エネ重視であったりというような個性豊かなプレーヤーがどれだけ増えるか、というポイントなのですが、そこがあまり議論されていないということが心配です」。

電力自由化というのは、いろいろな電力会社のプランから選べることが大事なのではなく、いろいろな電源であったり地域の中から消費者が選択できるようなシステムにするべきですね。自由化が始まって問題が起きても、決して自由化そのものが悪いわけではありません。ルール設定をやり直したり、きちんと修正することができればいいのですが、少なくともドイツが経験した失敗例を教訓として活かしたいところですね。それでは今回はこの辺りで!

ゼロからの電力自由化①自由化してもあわてなくていい
ゼロからの電力自由化②自由化って何だろう?

◆関連リンク
「パワーシフトキャンペーン」のホームページ



エネルギーシフトに注目しよう!

高橋真樹著『ご当地電力はじめました!』
(岩波ジュニア新書)

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