第39回:福島で立ち上がったご当地電力が結集!シンポジウム報告 | 全国ご当地エネルギーリポート!

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-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

 ご当地電力リポート第39回です。8月23日に福島県会津若松市で開催されたシンポジウム『ふくしま発、「ご当地エネルギー」の可能性~自然エネルギーが拓く地域の未来』(主催:会津自然エネルギー機構)に参加してきました。たいへん多くの人が発言したのですべては伝えられませんが、今回は福島の人々の活動をご紹介します。

 このイベントは、過酷な原発事故を経験した福島県内にも次々と誕生したご当地電力がはじめて集結し、全国の取り組みと連携する場となりました。当レポートではこれまで、会津電力の取り組みを紹介してきましたが、それ以外にもたくさんのエネルギーの取り組みが動いていることを実感するよい機会となりました。いずれもユニークな取り組みなので、今後注目していって欲しいですね。



開会の挨拶:五十嵐乃里枝さん(会津自然エネルギー機構)


五十嵐乃里枝さん

「福島の地でこれほどの災害をもたらした原子力発電を、これ以上使い続けることはできない。そう考えた私たちは、徐々に仲間を増やして活動を広げてきました。その中なら、会津電力も誕生しました。このまま何もしなければ、ツケを払わされるのは次の世代の子どもたちです。私たちは、誰かを犠牲にしなければならないという今の経済の仕組みを、転換していかなければなりません。震災後に生きる大人の一人として、この問題に皆様とともに向き合っていきたいと思っています」

基調講演:金子勝さん(慶応大学経済学部教授)


金子勝さん

「再エネが固定価格買取制度で採算が取れるようになって、去年だけで1700社を越えるエネルギー関係の会社が設立されました。でもその多くは大手企業や商社が進出しているだけで、このままでは分散型にはなりません。地場の人たちがエネルギーを作ることではじめて、自立的な地方経済が生まれます。この取り組むを進めることで、我々は未来を切り開いていくことができるのです」

◆福島の地域事業:浜通りから

高橋荘平さん(えこえね南相馬研究機構) 


高橋荘平さん

「私たちは南相馬市原町区という、福島第一原発から20キロほどの地域でソーラーシェアリングをすすめています。でも農地が絡むので手続き面で苦労していて、時間がかかっているのが現状です。まず雑種地からということで農業と再生可能エネルギーの共存をめざして動いています。また、学習会や風力発電への取り組みを通じて南相馬を盛り上げていきたいと考えています」

新妻香織さん(ふくしま市民発電)


新妻香織さん

「私たちは相馬市で、知り合いのお寿司屋さんや工場、ホテルなどの屋根で太陽光発電を実施しています。4カ所で合計出力70キロワットです。また、小水力発電も検討中で、東京で実施しているような水道の浄水施設で発電できないか調整中です」

島村守彦さん(いわきおてんとSUN企業組合)
「3つのNPOが地域で新たな事業を興そうというので共同で取り組んでいます。太陽光発電の事業は4カ所で300キロワットをやっています。子どもたち向けのワークショップを通じた環境教育や、オーガニックコットンを栽培してTシャツをつくろうという活動など、幅広い取り組みも展開しています。こうした活動を通じて、地域に新たな産業を興したいと思っています」

遠藤陽子さん(富岡復興ソーラー) 

「私たちは原発事故で避難をしながら、太陽光発電事業をはじめています。現在、中間貯蔵施設をめぐる交付金の話が出ていますが、それでは事故前の原発と地域の関係と同じで、東京電力の植民地のような状態は変わりません。なんとか私たちの力で自立の道をつかみ取りたいと思い、地権者50人の土地に30メガワットの太陽光発電を検討しています。居住制限地域なので除染する必要があり、時間がかかるのですが、まずは50キロワットの設備から進めています」

◆中通りから

千葉訓道さん(元気アップつちゆ) 


千葉訓道さん

「土湯温泉は震災後に厳しい状況になり、外から観光客が来なくなったことで、16カ所あった温泉宿が6カ所も倒産廃業しました。そんな中で温泉を活かした町づくりをめざすことになり、私がコンサルタントとして関わらせていただくことになりました。小水力発電と温泉バイナリー発電の実現を目指して動いてきて、行政の許認可や事業費の調達に苦労したのですが、2年間でやっと着工まで迎えることができました」

鈴木俊雄さん(白河エナジー) 
「県の一番南側にある白河市から来ました。福島県に補助金が来ているうちは まだいいのですが、それがなくなると県はどうなるのでしょうか?そこで中小企業の経営者が30社くらいで協議会を立ち上げ、1年前に白河エナジー株式会社を立ち上げました。50キロワット程度の小規模発電所をたくさんつくろうと計画しています。今は合計で1.5メガ、計画中のものを合わせると25メガくらいになります。県内で認定されている設備は大企業が多いので、非常に危機感を感じています。小さくても地域で継続できるモデルを作っていきたいと思っています」

◆会津から

星陽子さん(南会津地域再生可能エネルギー推進協議会) 


星陽子さん

「協議会では、エネルギー資源の豊富な南会津で再エネの普及を推進するためにセミナーの開催などを行っています。また、木質バイオマスや小水力などの部会を立ち上げて調査や会員企業との情報交換を行っています」

石川彰さん(会津みしま自然エネルギー研究会)
「三島町には只見川という大きな川があり、これをエネルギーに利用できないかと3年間取り組んできました。すでに大きな電力を供給しているダムがありますが、そこでつくられる電力も、お金も町には入ってきません。それをなんとか自分たちの地域にメリットがあるようにできないかと考えています。100キロワット程度の小水力発電所をつくり、町の将来のために使っていきたいと考えて調査、研究を行っています」

閉会の挨拶:佐藤彌右衛門さん(会津電力)


佐藤彌右衛門さん

「会津電力を設立してちょうど1年がたちました。現在、太陽光発電設備を会津各地に合計で2.5メガワットくらい設置中で、11月には発電を始める予定です。原発事故以降、地元で何をしなくちゃいけないのかと何度も議論をして、会津は再エネをやろうと立ち上げました。その動きは早かったと思います。来年は太陽光だけでなく、会津には他のエネルギーも豊富にあるのでこれを利用したいと思います。会津が自然エネルギーで自立をすると、他の地域でも展開できるはずです。山形でも同じような動きが起きています。全村避難した飯館の人たちも立ち上がりました。みなさんが各地で立ち上がっているということで、私たちがやって来たことも間違っていないと確信しました。水や食料やエネルギーを自分たちの手に取り戻す。そのことで、地方は強くなって交付金をもらわなくても生きていけるんです。今日集まった人たち、そして福島各地で行動をしようとしている皆さんが、小さくても良いので各地でがんばって、お互いに力を合わせていけばいいと思っています」

●シェーナウ電力から送られた「電力革命児賞」の授賞式も


シェーナウ環境賞「電力革命児賞」受賞記念祝賀会にて

 シンポジウム終了後は、喜多方に場所を移して、会津電力の佐藤彌右衛門さんにドイツのシェーナウ電力から「電力革命児賞」を受賞した祝賀会も設けられました。彌右衛門さんは、「私はあくまで皆さんの代表として受賞しただけです。みんなで地域エネルギー革命をすすめて行きましょう」と語りました。集合写真には、全国から駆けつけたご当地エネルギー協会の幹事のメンバーも参加しました。


シンポジウムと祝賀会には、エネ経会議代表の鈴木悌介さんも駆けつけました

全国ご当地エネルギー協会 
が関係する次回のシンポジウムは、9月23日に 新潟で実施予定です。
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