全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

当サイト「全国ご当地エネルギーリポート!」は、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)が主催するものです。著書『ご当地電力はじめました!』『自然エネルギー革命をはじめよう』で、全国で動きはじめた再生可能エネルギー(自然エネルギー)をめぐる面白い取り組みを伝えた、ノンフィクションライターの高橋真樹さんを特派員として派遣。各地でリアルタイムに起きているワクワクするような活動をつぎつぎと紹介していきます!エネ経会議についてはコチラ! 

ノンフィクションライター高橋真樹の自然エネルギーの書籍

 『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)

 2015年最新刊!
 ワクワクする地域や市民のエネルギーの取り組みを紹介!
 全国の「ご当地電力」のようすはもちろん、
 エネルギーにまつわる誤解や、
 これからの電力自由化についても
 わかりやすく取り上げました
 エネルギーを、ひとり一人の手にとりもどそう!
$全国ご当地エネルギーリポート!
    『自然エネルギー革命をはじめよう
           ~地域でつくるみんなの電力』


    紹介動画はこちら
 身近な素材で風車や水車をつくろう!夏休みの工作にピッタリ!
 『親子でつくる自然エネルギー工作①風力発電』
 『親子でつくる自然エネルギー工作②太陽光発電』
 『親子でつくる自然エネルギー工作③小水力発電』
 『親子でつくる自然エネルギー工作④太陽熱&バイオ発電』
※テーマは各地域とあつかっているエネルギーの種類別に分類しています
※リンクバナーはこちら ご自由にお使いください

テーマ:
電力自由化がはじまってすでに2ヶ月。現在までのところ従来の大手電力会社から切り替えた家庭は全体の2%程度と割合は少ないのですが、切り替えを具体的に考え始めた方も多いのではないでしょうか?今回は、一般家庭が契約することができる注目の新電力会社紹介企画の第二弾をお送りします。


福岡県みやま市のメガソーラー(提供:みやまスマートエネルギー)

今回紹介する「Looop(ループ)」は、基本料金0円という省エネする家庭にもメリットがあるプランを打ち出しています。また「みやまスマートエネルギー」は、地域の課題解決に電力小売を結びつけようという取り組みを進めています。いずれも、とても個性的な会社なので、ぜひ注目してほしいところです。

◆基本料金ゼロ!大震災を機に立ち上がったベンチャー企業:Looop(東京都文京区)

◇特徴

「株式会社Looop(ループ)」は、個人でも太陽光発電所を持ち、作ることができる「MY発電所キット」を販売して人気となった会社です。

会社を設立したきっかけは、3・11の東日本大震災が起きたとき、当時つきあいのあった中国企業からソーラーパネルをもらい受けたことでした。中村創一郎社長ら創業メンバーは、そのパネルを電力供給の止まった宮城県石巻市や気仙沼市にボランティアで設置、自然エネルギーの重要性を感じたことから、2011年4月に会社を立ち上げます。

設立から5年がたった現在は、160人以上の社員を抱えるまでに成長しています。自社が開発する太陽光発電所としては、14カ所に合計出力10メガワット以上を所有しています。2015年末からは企業を対象とした高圧小売事業を開始、およそ1000件ほどの企業と契約しました。


Looopの「MY発電所キット」(提供:Looop)

◇家庭向けの小売について

2016年4月からは、家庭向けをふくめた低圧電力の供給を東京電力、関西電力、中部電力のエリアを対象に始めています。

小売事業の特徴としては、基本料金が0円で、電気代は1キロワット時につき一般家庭で26円(関西圏は25円)、商店、事務所では27円(関西圏は26円)と定額であることです。各社が複雑な料金設定や複数のプランを打ち出し、消費者にわかりにくい状況になっている中、非常にシンプルな設定といえます。

契約期間のしばりもありません。基本料金がかからないので、電力使用量の多い家庭だけでなく、省エネした家庭にもメリットがある仕組みです。高圧契約がある程度安定したビジネスになっていることや、宣伝広告費などにコストをほとんどかけていないことから、このような思い切ったプランが打ち出せました。

2016年の3月11日に受付を開始したところ、予想を越えた反響があり、2ヶ月弱でおよそ1万世帯が申し込みました。Looopは今後、10万人をめざして契約者を増やすことを目標にしています。


Looopの企画開発部長、小嶋祐輔さん

◇自然エネルギー電源について

これまでの発電設備は太陽光が中心ですが、風力発電所や地熱発電所の開発も手がけるなど、電源の多様化を進めています。電源構成は、FIT電気が20%、FITではない水力発電所との直接契約が6%で、合わせると自然エネルギーの割合は26%を越えています(2016年5月現在の計画値)。

新電力会社の中には電力の需給管理を大手に任せるところも多いのですが、これまでの経験から自社で手がけることができるというのも強みになっています。

ループのWEBサイトはコチラ

◆地域の課題解消をめざす自治体新電力会社:みやまスマートエネルギー(福岡県みやま市)


みやま市役所の前ではためく「エネルギー地産地消都市」ののぼり

◇特徴

 福岡県みやま市にある「みやまスマートエネルギー」は、全国の自治体新電力会社の中で最も早く家庭向けの小売事業を始めた自治体が出資している新電力会社です。

みやま市は、2005年に3つの町が合併してできた人口4万人ほどの自治体で、2013年に市と市内の企業が出資して出力5メガワットの太陽光発電設備を設置しています。また経産省が補助を募集した家庭向けエネルギー管理システム(HEMS/ヘムス ※)の実証事業を2014年から実施するなど、エネルギー政策に積極的に取り組んできました。

HEMSとは、端末を通じて自分がどれくらい電力を使っているか細かく確認できるシステムです。みやま市がHEMS事業を実施した背景には、急激に進む高齢化など、増加する地域の課題に対して予算や人員が追いつかないという実情がありました。

みやま市は、HEMSの情報を利用して、一人暮らしの高齢者の見守りや健康管理などを行う新しいサービスを実施し、利用者には好評でした。発電事業やHEMSの実績を踏まえて、みやま市が55%を出資して、みやまスマートエネルギーを設立しました。

実証事業を終えたHEMSの活用も、このみやまスマートエネルギーが引き継ぐことになりました。みやま市は、単に電気を販売するだけでなく、エネルギーとのつながりを通して、地域振興や高齢者対応、雇用創出、そして子育て世帯の定着率を高めるといった地域のニーズに対応できる仕組みにつなげようとしています。

※ HEMS(ヘムス)は、ホームエネルギーマネジメントシステムの略。家庭でエネルギーを効率的に使うための管理システム。端末のモニター画面から家庭の電化製品の使用状況などが把握できる。みやま市では、サポートセンターに情報を転送することにより高齢者の健康状態などを把握、必要があれば家族に連絡をするなどしてきた。


みやまスマートエネルギーの経営企画部長、白岩紀人さん

◇家庭向けの小売について

2016年4月からは、九州電力管内の一般家庭向けの電力販売を始めています。2016年5月現在では約300世帯の申し込みを受けつけています。当初は対象をみやま市に限定しようという案もありましたが、みやまにゆかりのある人が他の地域で電気を買いたいとなったときに供給したいとの考えから、九州全域で購入できるようにしています。

価格は九州電力より平均で2%ほど値引きしていて、水道料金とセットにすれば手続きが簡素化され、さらに割安になります。自然エネルギーの割合(FIT)は、年平均でおよそ40% 程度です(2016年5月現在)。


エネルギーが身近になるHEMSの端末
 
◇取り組みと今後の展開

2015年末から市の公共施設や病院、JAなどに高圧の電力を供給しスタートした電力会社ですが、補助事業が終了したHEMSの事業も、みやま市から引き継いで実施することで、電力販売に留まらない活動へ広がりをみせています。

例えば、みやまスマートエネルギーと電力契約をした世帯にはHEMSの機器が斡旋され、画面から地域の商店街の商品を注文、宅配サービスを受けることができます。同じようなものを買うのなら、アマゾンや楽天ではなく、地域の商店街を利用して地域振興につなげようという狙いから実現しました。HEMSを通じて、災害情報の提供や日常の御用聞きサービスも行っています。こうしたサービスは、みやま市内に住む人だけが対象となります。

みやまスマートエネルギーのWEBサイトはコチラ

新電力紹介①はコチラ(みんな電力、生活クラブエナジー、中之条電力)





エネルギーをもっと身近に!

高橋真樹著『ご当地電力はじめました!』
(岩波ジュニア新書)


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テーマ:
電力自由化の専門家、高橋洋さんへのインタビュー。最終回となる今回は、ドイツで起きている配電網の買い戻しの動きから、日本の市民が電力システムの民主化に関わる方法を探ります。

※聞き手も高橋でややこしいため、私は下の名前(真樹)だけを使用しています。

◆今回のトピックス
・配電網を買い戻したハンブルク市民
・日本でも電力網の買い戻しはできるか?

◆ 配電網を買い戻したハンブルク市民

大

真樹:その送配電網をめぐって、ドイツでは市民が買い戻したそうですね?その動きについて詳しく教えていただけますか?

高橋洋:2014年に地域配電網公社が立ち上がった、ハンブルクの話ですね。ドイツでは、地域の自治体の多くがもともと電力事業をやっていたという背景があります。しかし自由化が始まった90年代後半から2000年代前半あたりに、自治体が所有していた電力事業や電力網を民間企業に売り払うという流れが起きました。民営化です。

ドイツ第二の都市であるハンブルク市もHEW(ハンブルク電力公社)という会社が運営していましたが、電力網を含む電力事業を売却した結果、最終的にヴァッテンファルという4大電力会社の傘下に入った。ところが、ヴァッテンファルは二酸化炭素を多く排出する石炭火力発電所を建設しようとしたものだから、ハンブルク市民が怒ったんです。そして、どうして民営化したんだと訴訟騒ぎや不買運動にもつながりました。

それでもヴァッテンファルは市から認可を得て、予定通り石炭火力発電所を建設します。これに抵抗しようとする市民はドイツ特有の「コンセッション」という制度を利用します。コンセッションとは、電力や水道などの公益事業で、電力網や水道管などのインフラを利用する権利をさします。インフラ自体は事業者(この場合はヴァッテンファル)の所有物ですが、それらは道路の地下など公的空間に敷設されているため、その利用権を自治体が付与する形になっています。その契約は20年に1度更新されることになっていて、それが2014年でした。そこで、配電事業を市民の手に取り戻そう、ということになったのです。

当初、市の側はあまり乗り気ではなかったので、市当局と市民の間でいろいろなせめぎあいがありました。しかし2013年に住民投票が行われ、僅差で市民の提案が支持された結果、市が100%出資する配電網公社が設立されることになりました。ハンブルク配電網公社は、ヴァッテンファルから配電網を買い戻して、2014年の春から事業を始めています。

大
都留文科大学教授の高橋洋さん

真樹:ドイツ第二の都市の配電網の事業主体が民間企業から自治体に移って、トラブル等はなかったのでしょうか?

高橋洋:変わったと言っても、実務をしている人はほとんど同じです。もともとハンブルクが配電網を握っていた頃から働いている人が、ヴァッテンファルにごそっと移って、今度はまたハンブルク配電網公社に戻ったので、そこに属する人たちにとっては自分たちの会社の名前が変わっただけのことです。私がお話を聞いた方も、「どんどん肩書きが変わるけど、やっている事は同じだ」と言っていました。

知ってもらいたいのは、このような動きがドイツ各地で起きているということです。有名なのは1990年代に起きたドイツ南部のシェーナウという町の市民による配電網の買い取りです。でもシェーナウは人口2600人の小さな町です。ハンブルクは人口180万人のドイツ第二の都市で、規模がぜんぜん違う。これは日本で言えば、大阪市が関西電力から配電網を買い取るようなことなんです。

◆日本でも電力網の買い戻しはできる?

真樹:そう考えると、電力網というものをめぐってものすごいことが起きているということですね。日本でもこのようなことが起きる可能性はあるのでしょうか?

高橋洋:日本ではそもそも自治体がコンセッションという権限を持っていないので、これと同じことは起こりません。また、ハンブルクでは自治体が20年前まで電力事業を担っていたことが背景にありました。日本の自治体にはエネルギー政策の権限も配電事業の経験もありません。

ただ、地方が国のエネルギー政策を先導する役割を果たしたり、無名の市民が自治体や大企業を動かしたりといったことが、日本でもできないというわけではありません。

例えば、数年前に大阪市の当時の橋下市長が、国や関西電力に対峙して独自のエネルギー戦略を作ろうとしたことがあります。戦前は、日本でも自治体が電力事業を行うことは珍しくありませんでした。大阪市も市営で電気事業を行っていました。ところが国家が戦争に向けて動き出す時期に、日本発送電という会社ができて、全国の電力事業を統合するようになります。大阪市は電力事業のインフラを現物出資させられたんですね。

戦後、日本発送電は再分割されて大阪市のエリアには関西電力ができました。そのときに現物出資した権利が引き継がれて、今に至るまで関西電力の株の10%を市が持っているのです。だから大阪市長は関西電力の最大の株主として意見を言うことができたという経緯があります。大阪市は現在、自らが主体となって地域限定の配電事業をやることを検討していると聞きます。

大
公営水力発電所の県別割合

また、自治体が持っている水力発電、これを「公営水力」と呼ぶのですが、これを経営している自治体は結構あるのです。そこで作られた電力は、今までは地域の大手電力会社に安く買われていたのですが、かねてから新電力はそれを高く買いたいと言っていました。近年競争入札を通して新電力に売電する事例が出てきており、今後さらに自治体がエネルギー事業に主体的に関与する可能性があります。

そして、4年後をメドに送配電事業が法的分離されることになったので、今後、もう一度自治体が買収しようという可能性が出てくるかもしれません。従来のように大きな電力会社の一部門であり続けるのであればそれは難しいのですが、会社としての独立性が高まっていけば、買収される、売却するという事もあり得るかもしれない。

それぞれ簡単ではありませんが、ドイツの動きから学ぶことができるとしたら、市民や自治体がエネルギー政策や事業に関わり、地域の未来を自らが選択しようとする意思と行動が大切だということだと考えています。

大

◆インタビューを終えて

「電力自由化」の話は、電力にまつわるシステム全体の話なので、さまざまなことが関係してきます。「電気の契約先を選択できる」ということは確かに大きなことではありますが、一方で電力システム改革全体としてみれば一側面でしかないことがわかります。それだけに一般的にはどうしても難しい話になりがちですが、高橋洋さんはそれをできるだけわかりやすい形で解説頂きました。

今後も、電力自由化をめぐってどういう視点で見ていけばいいのか、世界ではどんな動きが起きているのかといったことを伝えていきたいと思います。

◆関連リンク
高橋洋さんが特任研究員を務める自然エネルギー財団のサイト




電力自由化は地域から始まる

高橋真樹著『ご当地電力はじめました!』
(岩波ジュニア新書)

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テーマ:
電力自由化の専門家、高橋洋さんへのインタビュー3回目は、再エネの変動に対する誤解や、「電力システム改革」のカギを握る送電システムについて伺いました。

※聞き手も高橋でややこしいため、私は下の名前(真樹)だけを使用しています。

◆今回のトピックス
・「再エネは変動するからやっかい」というのは間違い
・送電網は空港のように開放されるべき
・不十分だが、何も変わらないわけではない

◆「再エネは変動するから扱いづらい」というのは間違い

真樹:今回のテーマは発送電分離です。まずは再エネとの関連ですが、発送電分離がきちんと行われることによって、現状より増やすことができるとされています。ところが経産省は、再エネは変動が大きくて制御しにくい「やっかいな電源」だと位置づけているようです。以下の図にある再エネの変動イメージなどもその例ですね。その辺り、どのように考えればよいでしょうか?

大
太陽光と風力は不安定で、火力発電の消費量は減らせるが、原発の代替にはならないということを示す経済産業省製作のイラスト(平成27年経済産業省「長期エネルギー需給見通し」より)

高橋洋:このイラストのようなことを言っている例は、世界中で日本以外では聞いたことがありません。欧州の実例では、再エネが増えてもこのようにギザギザにはなりません。1本の風車の出力だけをデータにすればこのようになりますが、実際には多数が重なるので、たいていその変化はなだらかになるものです(平滑化効果)。また、予測技術も年々進化しているので出力予測は十分に可能です。欧州の事例から言えば変動することが克服できない問題とは言えなくなってきています。変動に対応する技術を整備すれば再エネを活かすことはそれほど難しくありません。

経産省は、再エネは原子力の代わりにはならないし、再エネが代替するとしたら火力の電力でしかないと言っています。変動する再エネを動かすときに、火力発電の出力調整が不可欠になる。すると、再エネが増えることで火力発電の設備利用率が下がり、維持などで採算性が落ちるという判断をします。従って、日本全体の電源構成を考えると、再エネが増えても安定供給やコストに大きくは貢献しないという立場を取っているのです。

そのような考え方は、国際的には時代遅れです。一定の発電をし続ける「ベースロード電源」が一定割合必要というのは、すでに古い考え方になっています。欧州では、燃料費がゼロの変動型再エネが増えてきた結果、火力発電の出力調整だけでなく広域運用や電力貯蔵、需要側の調整を含めて、総合的にバランスを取る方法が一般的になっています。特にドイツやスペインでは20%や30%の変動電源が入って、そちらを優先的に動かすのが当たり前になっています。あえて言えば、再エネがベースロードになっているのです。

原子力のような昔ながらのベースロード電源が今後も必要で、日本では60%くらいないといけないとか、2030年までその状況が続くかのような話を前提に政策を決めていくのはおかしなことです。

大
実際の自然エネルギーの変動量。複数の設備を集めれば変動はなだらかになる

◆ 送電網は空港のように開放されるべき

真樹:やり方を工夫すれば変動しても十分入れられるわけですね。ここは世界の常識になりつつありますが、日本社会では大きく誤解されている点なので重要です。さて、発送電分離の行方についてお聞きします。

2016年の小売自由化以上に私たちと電力の関わりを変える可能性があるのは、2020年に予定されている発送電分離です。一連の電力システム改革を考える上では、小売の方ばかりではなくこちらにも注目したいところですね。

高橋洋:確かに、電力システム改革がうまくいくかどうかは、独占されていた送電網をどれだけ中立で公平なものにできるかということにかかってきます。日本中に張り巡らされた送電網というネットワークインフラを、電力市場に参入したすべてのプレーヤーが同じ条件で使えるように開放するべきです。

私がよく使う喩えは、同じ公益事業である航空システムです。いま、日本航空が全国の空港を所有し、航空管制も行っているとしたらどうでしょうか?そこを使用するのが日本航空の飛行機だけであれば、独占であることでサービスの質や航空運賃の問題は出てきますが、運用上のトラブルは起こりにくくなります。

しかし独占ではなく、国内外の航空会社が多数参入してくるとどうなるでしょうか。日本航空は自らが運用する航空ネットワークインフラを競合他社に自由に使わせないようにしたり、自社便のみを優先的に離発着させたりということをするかもしれません。それではいくら日本航空以外の航空会社が参入したとしても、まったく公平な競争にはなりません。

大

実際に航空管制でこのようなことが起こらない理由は、ネットワークインフラを日本航空が独占していないからです。航空事業者から切り離され、中立的な主体によって運営されています。

欧州の電力システムは、いまの航空管制の話と同じように発電や小売りから独立した送電会社が送電網を運用することで、公平性を確保しています。日本でもそうするべきですが、残念ながら今のところはそういう話になっていません。

◆不十分だが、何も変わらないわけではない

真樹:いまの航空管制のたとえ話は、送電網の中立性の大切さについて非常にわかりやすく実感できると思います。日本では東京電力管内だけは、2016年4月の電力小売り自由化と同時に発送電分離を行いますが、全国的には4年後の2020年ということになっています。しかも欧州のような完全に中立な機関が送電網を握るわけではないという状況です。そのあたりについて高橋さんはどうお考えでしょうか?

高橋洋:欧州の発送電分離の主流は、完全に大手電力会社と切り離すスタイル(所有権分離)ですが、日本で4年後に予定されている発送電分離は、持ち株会社制のスタイル(法的分離)です。

つまり一応別会社にはするけれども、関西電力管内は関西電力グループが送電網を握るということになります。東京電力だけは例外的に2016年4月からその法的分離を行ったのですが、私としては東京電力だけでなく全国的に今年からできるのではないかと発言してきました。しかし電力会社には「とんでもない、十分な準備期間が必要だ」と言われ、実際そのように進んでいます。

大
都留文科大学教授の高橋洋さん

とはいえ、今後の4年間は何もしなくていいとか、法的分離では何も変わらないのかといえば、そうことではありません。電力システム改革の方向性は、「今までより透明性や公平性をしっかり担保していこう」ということではっきりしています。

例えば送電子会社が自分のグループ企業(既存の大手電力会社)に有利な運用をしていたり、公平性が疑われたりするようなことがあれば、電力取引監視等委員会が注意することはできるようになる。

所有権分離をしていないから、既存の電力会社が好き勝手にやっていいということではないんです。現在の発送電分離の段階は「会計分離」といって、送配電部門については会計を分けましょうという段階ですが、本来は会計分離の段階であっても「送電網を開放すること」が義務づけられています。

でも、それでは不十分だから法的分離をしましょうという流れになりました。だから法的分離が始まる前でも、電力取引監視等委員会が果たす役割はあるし、そこに期待したいと思っています。

では2020年以降の先はずっと法的分離で行くのかと言うと、必ずしもそうとは言い切れません。例えばいつまでたっても送電網が開放されなければ、強制的措置として欧州のように所有権分離に変更するということもあり得るでしょう。まだ運用が始まってみないとわからない点もあるので、あらゆる可能性はあると思います。

だから一般の方も4月から始まって競争が生じないから「やっぱりダメだ」と考えるのではなくて、長い目で関心を持ち続ける事が大事になってくると思います。

大
自然エネルギー財団のイベントRevision2016にて、コーディネータを務める高橋洋さん(左、2016年3月9日東京にて)

先ほど言ったように、私は2013年の審議会の時から2016年にはすべての電力会社が法的分離をできるはずだと言ってきました。そして偶然にも東電だけ2016年から始めることになった。

だったら他の電力会社もどうして同じことができないのかという話になる。私としては今からでもいいから、他の電力会社も前倒しで発送電分離を行うよう政府が指導する、といったことがあっても良いと思っています。

※電力取引監視等委員会
経済産業省が設立した中立機関で、電力市場が公正なものになるよう監視すると共に、送電事業を監督する組織。


※次回(最終回)は、送電網を中立化するために電力会社から買い戻すという行動に出たドイツ・ハンブルクの市民の例から、電力事業のあり方を考えます。

◆関連リンク
高橋洋さんが特任研究員を務める自然エネルギー財団のサイト




電力自由化は地域から始まる

高橋真樹著『ご当地電力はじめました!』
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