全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

当サイト「全国ご当地エネルギーリポート!」は、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)が主催するものです。著書『ご当地電力はじめました!』『自然エネルギー革命をはじめよう』で、全国で動きはじめた再生可能エネルギー(自然エネルギー)をめぐる面白い取り組みを伝えた、ノンフィクションライターの高橋真樹さんを特派員として派遣。各地でリアルタイムに起きているワクワクするような活動をつぎつぎと紹介していきます!エネ経会議についてはコチラ! 

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今回は、飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所所長)への100回記念インタビューの後編をお送りします。前回は、いまの自然エネルギーをめぐる状況について分析してもらいました。今回は、さらい詳しく問題点の整理と、どのようにすれば自然エネルギーの普及が加速するかについて取り上げています。また、開始から1年が経過した電力自由化についてや、ご当地エネルギーの取り組みがこの状況でどのような役割をはたすのかについても伺っています。

 

前列中央が飯田哲也さん。環境エネルギー政策研究所(ISEP)の新しいオフィスにて。

 

◆今回のトピックス

・国は送電網をめぐるルールをコントロールすべき

・電力自由化のカギも送電網にあり!

・ご当地エネルギーが果たす役割とは?

・物語を伝える「語り人」の重要性

 

◆  国は送電網をめぐるルールをコントロールすべき

 

高橋:後編では、固定価格買取制度(FIT)の評価についてからお聞きします。自然エネルギーの電源を20年間決まった価格で電力会社が買い取ることが決められているFIT制度が改正されました。これまでのFITの評価と、今後の課題についてはいかがでしょうか?

 

飯田:これまでの日本のFIT制度には、いくつか課題がありました。たとえば送電網に接続できる状態になるかわからないような事業者に、認定を与えてしまっていたことがひとつです。今回の経産省のルール改正では、電力会社と連系(送電網への接続)の契約をしてからでないと認定しないということになったので、大きな話としては良い方向性になったと思っています。

 

送電網を運用するルールを公正なものに

 

ただし問題もあります。連系の契約について判断をするのは電力会社だけで、本来なら制度の適切な執行の責任を持つべき経産省は何もコントロールせず任せっきりです。電力会社は先ほど言ったような理由から、送電網に空き容量がないとか、接続するなら時期が五年後になるといった無茶苦茶なことを言ってきている。だから発電事業者にとっては、接続は電力会社任せ、それが終わってから経産省マターになるという、変な形の二重規制になってしまっています。

 

本来であれば、電力会社が送電の部分でいかに認定を出すかについて、経産省がきちんとコントロールしなければいけません。FIT制度の本来の法制度では、自然エネルギーは送電網に優先接続するという扱いになっていたのですが、昨年の法改正で削除され、電気事業法の下で「早い者勝ち」になってしまいました。電力会社が空き容量ゼロと言っていますが、それは石炭発電所や原発を優先的に接続しているからなくなるのであって、自然エネルギーを優先接続にすれば、空き容量はいくらでもあるのです。そんなふうに、全体のプロセスを国が主導権を握ってコントロールする方向で組み直すべきでしょう。

 

◆電力自由化のカギも送電網にあり!

 

高橋:電力の小売自由化が始まってちょうど1年がたちました。そちらの評価はどうでしょうか?

 

飯田:400社近くの多くの事業者が登録して、その中で日本版のシュタットベルケをめざす福岡県みやま市の「みやまスマートエネルギー」などが登場してきたことはとても良いことだと思います。ただ、電力自由化についてもやはり送電網をどうするかという改革が不十分で、先行きが見えません。

 

高橋:発送電分離の話ですね。これまで発電から小売まで、すべて大手の電力会社が担っていたものを、発電会社、送電会社、小売会社と分社化するという流れです。全国的には2020年に実施されますが、東京電力だけは、すでに昨年4月に分社化されています。

 

飯田:東京電力管内では、発電会社と送電会社が別会社になったといっても、あくまで東京電力のホールディングカンパニーの下での分離(法的分離)です。いくら会社を分社化しても、グループ企業の中でお金が回ってしまう仕組みになっています。

 

そのため原発の廃炉費用など本来は発電会社が支払うべき費用を、送電網に上乗せして回収する(託送料金の一部)という形がまかり通っている。電力会社としては、託送料金が高ければ高いほど得をする仕組みです。そこの利害関係を切り離さないと、他の小売会社にとって公平な自由競争にはなりません。自由化の開始から1年がたって、そのことがはっきりしてきました。 

 

発送電分離を完全な別会社にする「所有権分離」という段階までやらないと、送電網のところで自然エネルギーを封じ込めることができてしまうのです。なぜ大手は自然エネルギーを増やしたがらないかと言えば、彼らはFITができないからです。よその事業者が自然エネルギーを増やせば、自分たちの売上が減るだけの構造になっているから、自然エネルギーを増やさないように邪魔をするという力学が働くのは、彼らの立場からすれば当然の反応だとは思います。

 

 

それに対して、送電網を利害関係のない会社として切り離す所有権分離をすれば、送電会社はどこに対しても中立に対応するようになります。そうなれば今の東電をはじめ発電と販売だけの電力会社は、FITでの発電ができるようになる。

 

実はドイツのRWEとかイーオンといった大手電力会社は、かつては日本の大手と同じように自然エネルギーを排除し、原発を推進していましたが、現在では公平な送電会社のもとで、自然エネルギーを増やそうと邁進するようになっています。東京電力の動きを見ていると、中途半端な発送電分離ではフェアな自由競争はできない、ということが証明されたように思います。

 

高橋:FIT改正にしても、電力自由化にしても結局は電力会社が所有する送電網(電力系統)をどこが所有するかという問題が鍵を握っているということですね。  

 

飯田:系統に関しては電力会社の奥の院なので、実は経産省でもなかなか踏み込めない部分なのです。でもそこにメスを入れなければ本当の改革はできません。 

 

◆ご当地エネルギーが果たす役割とは?

 

高橋:そのような状況下で、「ご当地エネルギー」はどのような役割を担うのでしょうか?

 

飯田:大きな流れとしては、地域分散型のエネルギー革命は間違いなく起きています。今後はそれを加速する方向で進めていくことです。先ほど言ったような低圧の発電所を増やしていくことや、電力ではない熱の部分を手がけるなど、やれることはたくさんある。バイオマスで発電だけではなく熱も同時に利用するコージェネレーションの取り組みも、もっと増やしたほうが良いでしょう。

 

匝瑳市の休耕地に設置された出力1メガワットのソーラーシェアリング(2017年4月)

 

農地の上で栽培しながら発電も行うソーラーシェアリングのように、エネルギー以外のものとのコラボレーションも登場してきています。エネルギーだけではなく、地域づくりの軸のひとつとしてエネルギーを活用するような例です。エネルギーをきっかけに多くの人が参加できる場をつくり、地域が自立する新しい社会モデルを築いていく、という方向性が見えてきたように思います。

 

グローバルなネットワークも着実に広がっています。2014年に、ISEPが主催して福島でご当地エネルギーの会議を開催しました。日本の私たちとしては、ドイツやデンマークはスゴイと思ってやってきたのですが、ドイツの人たちが「日本にもこんな動きがあるんだ」ということに刺激を受けて、世界の「自然エネルギー100%キャンペーン」を立ち上げるという流れができました。そこから、アップルや多国籍企業が自然エネルギー100%に切り替えるという動きにもつながってきました。

 

もちろん日本のご当地エネルギーの取り組みも、そのような海外の動きに刺激を受けてこの数年で大きく変わりました。3年前は「自分たちにもできるかもしれない、やってみよう」という段階だったのですが、いまでは完全に自分たちが当事者意識を持って自信を持って行動するようになっています。

 

日本の国の政策は問題だらけですが、面白いことが起きているのは間違いありません。国の中心からは変わることはありませんが、ご当地エネルギーの取り組みは、間違いなく大きなダイナミズムをおこしていると言えます。

 

この数年間で日本のご当地エネルギー会社も躍進した。会津電力もそのひとつ。写真は、会津電力の佐藤彌右衛門社長と、雄国発電所。

 

◆物語を伝える「語り人」の大切さ

 

高橋:最後に、「全国ご当地エネルギーリポート」100回を迎えてのメッセージをいただけますか?

 

飯田:エネ経会議と高橋真樹さんが協力して取り組まれてきたこのリポートは、非常に重要な仕事だと考えています。物語を伝える「語り人」は必要です。ご当地エネルギーの最前線で常に格闘しながらがんばっている人たちには、みんなそれぞれ物語があるじゃないですか? それをちゃんと伝えることが、これから取り組もうという人たちへの勇気にもなるし、また伝えてもらった人にとっての誇りにもなります。今後も重要になってくると思うので、期待しています。

 

高橋:どうもありがとうございました。これからも全国を回って自然エネルギーによって地域を盛り上げる人々の姿を伝え続けていこうと思います。

 

※次回は全国ご当地エネルギーリポートのこれまでの歩みを、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の古屋将太さんとともに振り返り、今後のご当地エネルギーの注目ポイントについても紹介していきます。お楽しみに!

 

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おかげさまで、全国ご当地エネルギーリポートが100回目を迎えることができました!!

 

2013年に始まったこのリポートを4年間続けることができたのも、エネ経会議の皆さんをはじめ、多くの方たちのご支援があったからこそです。どうもありがとうございました。これからも、ひとつずつ丁寧に地域の声やエネルギーと暮らしのつながりを伝えていくことを心がけていきたいと思っています。

 

今回は100回記念インタビューとして、環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長の飯田哲也さんに激動する自然エネルギーをめぐる状況について伺いました。飯田さんは、自然エネルギー分野の第一人者であることに加え、この全国ご当地エネルギーリポートを始めるきっかけをつくったおひとりでもあります。

 

ISEPの新しいオフィスを紹介する飯田哲也さん(提供:ISEP)

 

飯田さんから見て、いまの日本のエネルギーをめぐる状況はどのように映っているのでしょうか? 最新の映画「日本と再生」の話から、電力会社による接続制限の問題、電力自由化の評価、そしてご当地エネルギーの果たす役割などなど、多岐にわたって答えていただきました。2回にわたってお伝えします。

 

◆今回のトピックス

・映画「日本と再生」−世界はダイナミックに動いている

・太陽光発電は増えたけれど・・・

・電力会社の接続制限にどう対処するか?

 

◆映画「日本と再生」−世界はダイナミックに動いている

 

高橋:飯田さんが企画・監修された映画「日本と再生 光と風のギガワット作戦」(河合弘之監督)が公開され、全国でも自主上映会が始まっています。エネルギー問題は一般の方にとっては難しいイメージがありますが、世界各地の動きを映像で伝えるこの映画は、エネルギーの講演会などに来ないような方にとっても理解がしやすいように思います。

 

飯田:そのような感想を言っていただく方が大勢いますよ。「日本と再生」は、監督をされた河合弁護士の前作「日本と原発」の中で最後に私がチラッと自然エネルギー未来の頭出しをするのですが、その「宿題への回答」とも言える映画です。ですから、一昨年(2015年)5月に河合「監督」から電話で依頼されたときに二つ返事でお引き受けしました。

 

映画「日本と再生」

 

それから、基本的なコンセプトや全体の骨格、ストーリー、詰めるべき論点などを組み上げ、自然エネルギー先進地など国内外の取材先のアポから現地でのレンタカー運転まで私がすべてアレンジしました。自然エネルギーの「源流」であると同時に最先端の地であるデンマークとカリフォルニア、今や世界で最も伸びている中国や中東、そして日本では誤解され歪曲されて伝えられることの多いドイツの現状などを取り上げながら、世界がダイナミックに変わっている様子を伝えています。

 

残念ながら、日本のエネルギー政策は逆向きに進んでいますが、その事実についても、ドイツなどと対比しながら紹介しています。そんな日本中でご当地エネルギーの取り組みが増えてきたことは重要です。この映画の中でも、北海道から九州までご当地エネルギーに取り組む様々な人たちをそれぞれ顔が見える形で一気に映し出すことで、ご覧になった人たちが希望を持ち帰れる重要なシーンとなっています。なお、ご当地エネルギーにさらに焦点を当てた「おだやかな革命」(渡辺智史監督・2017年秋公開予定)という映画の制作が進んでいますので、世界全体と日本のダイナミックな動きを伝える「日本と再生」と、日本のご当地エネルギーに焦点を当てた「おだやかな革命」を、セットで見るととても良いのではないでしょうか?

 

映画「おだやかな革命」は、現在クラウドファンディングを実施中!

 

◆太陽光発電は増えたけれど・・・

 

高橋:FIT(固定価格買取制度)の開始からまもなく5年、「全国ご当地エネルギー協会」が立ち上がってからも3年半がたちました。この間に自然エネルギー設備の数は大きく増えた一方で、さまざまな新しい課題が浮かび上がってきています。日本の自然エネルギーの現状について、評価と課題についてお伺いします。

 

飯田:おっしゃる通り、まず量的にはFITの効果で電力量が圧倒的に増えました。この間に増えた設備容量は32ギガワットで、累積ではドイツを越え、驚異的に成長している中国に次ぐ世界2位の設置量を誇ります。発電量でも2010年の10%から2016年に15%へと5ポイント増え、この100万キロワット級の原発で言えば6〜7基分を、ほぼ太陽光発電のお陰でまかなえるようになったわけですから、全体的に見ればとてもすごいことが起きているわけです。

 

それにより、たとえば去年の5月の晴れた昼間には、日本全体の電力供給の約30%、四国電力や九州電力では50%以上を太陽光発電がまかないました。また、太陽光発電のコストが安くなってきました。FITの値段も40円から21円になりました。5年で半額になったのはすごいことです。とはいえ日本の設備の建設コストなどは世界的にはまだまだ高いので、今後はさらに安くしていくことが必要です。

 

 

高橋:一方で課題としては、地域にメリットが残らない外資や都市部の大企業だけが儲かる事業が多いという問題が顕在化しています。まさに飯田さんが長いこと訴えてきた、単に自然エネルギーを増やせば良いのではなく、地域が主権を持つべきということがより重要になってきているように思います。

 

飯田:特に太陽光事業で目立ちますが、地域にメリットが少なく自然破壊も心配される「植民地型」の事業が大半を占めているのは問題です。現在も山形や福島で、1基で100メガワットを越える大規模の太陽光設備の建設計画が出ています。これはかつて地方で頻繁に起きていたリゾート開発や不動産投機の問題とまったく同じ構造で、資源収奪が行われてしまっているのです。地域密着型の事業も、以前と比べると増えてはいますが、まだまだ足りません。

 

高橋:改善していくためには、どんなことが求められるのでしょうか?

 

飯田:環境や地域主権という意味では、自治体の役割が大切です。土地利用計画をしっかりとつくり、自然エネルギーを開発する際もその計画に基づいて進めることを前提に行うようにするべきです。

 

土地利用計画を見直すということは、何も自然エネルギーの開発に限った問題ではなく、さまざまな地域社会の課題とも結びついている問題です。いままでそこをしっかりやってこなかったツケが、無茶苦茶な事業者による太陽光発電の開発問題として表面化してきていると言えます。自然エネルギーそのものの問題ではなにのですが、現在の社会システムで抜け穴のようになっている部分に、歪みが現れてきているのでしょう。

景観などでも地域のメリットにならない発電所も目立ってきた

 

◆電力会社の接続制限にどう対処するか?

 

高橋:電力会社による送電網への接続制限によって、新たに自然エネルギーの発電所をつくろうとしても、つなげないといった問題も全国で起きています。

 

飯田:電力会社の所有する送電線につなげないという問題は、これまでは風力が対象でしたが、このところ太陽光や小水力など他の電源にも適用されるようになってきました。

 

大きく3つの問題があります。「接続可能量」という事実上の総量規制、送電線の空き容量ゼロという問題、そして過大な接続負担金の3つです。

 

「接続可能量」は、日本が欧州では廃れた「ベースロード電源」という旧式の考えに固執しながら、原発を復活させ、自然エネルギーを封じ込めることに利用する考え方です。

 

しかし、昨年5月に8割近い自然エネルギー電源を導入できた電力会社の実績から言えば、欧州と同じ「柔軟性」という考え方に立てば、そもそも「接続可能量」という考えは不要ですし、仮に「接続可能量」を設けるとしても、「無制限・無補償」ではなく「無制限・補償付き」にするだけで問題はクリアされます。

 

2つめの送電線の空き容量ゼロという問題は、電力会社は送電線の空き容量がないから、つなぐことができない(接続制限)と言っていますが、実際には容量は空いているはずですし、本当に空きが無い場合でも、系統を増強すれば良いだけです。その際に、あらためて自然エネルギーの優先接続を復活させる必要があります。

 

3つめの過大な接続負担金は、たとえば3億円程度の1メガソーラー事業に対して6億円ものとんでもない負担金を請求するような問題が、全国で頻発しています。しかも、お金を支払っても、完成は何年も先だという訳です。

 

送電網をめぐる公正なルール作りが求められる

 

これは、送電線の整備費用を誰が負担するか、という問題です。送電線は、いわば高速道路と同じ公共的インフラですから、利用者や社会全体で負担することが当然なはずです。

 

それなのに、日本では「原因者負担」の立場で、ほとんどの費用を自然エネルギー事業社に押しつけるルールとなっています。これでは、まるで高速道路の整備を私費でやれと言っているようなものですし、すべての費用を消費者に上乗せしてきた原発とは真逆のダブルスタンダードです。

 

これらの問題は、急激な変化を望まない電力会社が、自分たちの「奥の院」である送電網を使って自然エネルギーの封じ込めをしているという側面があるのでしょう。自然エネルギーの増大に対して、既得権益の反発が非常に目立ってきたということです。

 

高橋:ご当地エネルギーに関わる人々は、接続制限に対してどのように対処したら良いのでしょうか?

 

飯田:厳しい状況ですが、いまできることは2つあります。ひとつは、ISEPもやっているように、データを集めて国や電力会社に対してきちんと異議申し立てをしていくことです。

 

接続可能量がゼロと言っていますが、具体的な根拠があるわけではありません。情報公開がされていないので、検証することができないのです。そのことは国会でも問題になっているほどなので、質問主意書などを使って申し立てをしたり、送電網運営の監督をする電力広域的運営推進機関(OCCTO)などに情報公開をしっかりすべきだと訴えていく必要があります。

 

もうひとつは、出力の小さな50キロワット未満の低圧の設備に関しては、まだ封じ込めがほとんどないので、低圧分散型モデルのビジネスをどんどん広めていくことです。低圧分散型というのは、50キロくらいの設備を各地にバラバラにつくっていくことで、ISEPが関わっている地域では福島県飯舘村や宮城県、新潟、熊本で協力しています。

 

高橋:いずれは低圧分野も制限をかけられる可能性もありますか?

 

飯田:しばらくは大丈夫だと思いますが、増えてくればその可能性はあります。そうなればこんどは送電線に頼らず、自家消費やオフグリッドでやっていこうという方法も選択肢として出て来るかもしれません。この先数年で、そうした意味での大きな転換点が来るように思います。

 

※今回の内容はここまで!次回は、電力自由化や送電網の問題をより踏み込んで聞いています。また、そのような中で各地のご当地エネルギーが果たす役割につてもコメントしてもらっています。お楽しみに!

 

各地で公開中の映画「日本と再生 光と風のギガワット作戦」についてはこちら

 

ご当地エネルギーのいまを伝える映画「おだやかな革命」は、現在クラウドファンディングを実施中!

 

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災害は、いつどこで起きてもおかしくありません。いざというとき避難所となる公共施設に独立した電源があれば、できることの幅は大きく違ってきます。

 

今回は、自然エネルギーによる防災対策を進めている神奈川県松田町を紹介します。松田町は、小田原箱根エリアに位置する人口11,000人ほどの小さな町です。松田町はエネ経会議との出会いをきっかけに、行政と企業が連携して公共施設に防災対策を行うことになりました。松田町の本山町長と、事業を担った湘南電力に話を伺ってきました。

 

松田町では、2016年に「エネルギー地産地消モデルの構築に関する協定書」を締結した。

左から、湘南電力の渡部健社長、ほうとくエネルギーの蓑宮武夫社長、松田町の本山博幸町長、エネ経会議の鈴木悌介代表。

 

◆今回の内容

 ・小さい町なりにできることを

 ・地域でエネルギーとお金を回す仕組み

 ・山間部をエコタウンに

 

◆小さい町なりにできることを

 

 古くから交通の要衝として栄えてきた神奈川県西部の松田町は、川や山など豊かな自然が残るのどかな地域です。しかし近年は他の地方と同様に、高齢化と人口減少に悩まされています。

 

「行政として『このままではいけない』という危機感が足りなかったのかもしれません」と語るのは、3年半前に町長になった本山博幸さん(47歳)です。 町長には以前から、持続可能な町づくりにエネルギーを取り入れたいという思いがありました。具体的になったのは、2016年にエネ経会議とつながってからのことです。 

 

「未来の子どもたちに何を残せるだろうかと、ずっと考えてきました。そういう意味で、エネ経会議の『地域でつくったエネルギーを地域で使うことで、地域経済のエンジンを回す』というコンセプトは、すごくいいなと思ったんです。松田町の自然を大切にしながら地域経済を回せるようになれば、いったん町を出ていった子どもたちも雇用の場があることで安心して戻ってくることができるかもしれない。都市部のマネをするのでなくて、小さい町なら小さいなりにできることがあるはずだと感じました」。

 

松田町役場屋上から見る山に囲まれた松田町の眺望。写真奥には富士山が見える。

 

 まず手掛けたのは、2016年11月に公共施設(9ヶ所)の電力を新電力の湘南電力に切り替えたことです。リポートでも度々取り上げている湘南電力は、主に神奈川県内の太陽光発電所などから電力を調達している電力小売会社です(※)。切り替えにより、電気代は年間で50万円ほど削減できる予定になっています。しかし本山町長は、切り替えた最大のポイントは価格ではないと言います。

 

 「松田町は、すでに東京電力から別の新電力に切り替えていたので、以前に比べて電気代は下がっている状態でした。今回は湘南電力さんにさらにもう少し下げてもらっています。それはもちろんありがたいのですが、湘南電力を選んだ最大の理由は、地域でつくった自然エネルギー電源の地産地消を推進している会社ということでした。長い目で見れば、地球温暖化の改善や地域経済の好循環にもつなげることができる。町がそういう方向に積極的に取り組んでいく姿勢を見せようということで、議会にもご理解いただけました」。

 

 ※湘南電力の地元での電源調達割合はおよそ50%程度(2016年度見込みの数値)。電源の種類は主に太陽光発電で、一部小水力発電も入っている。

 

◆地域でエネルギーとお金を回す仕組み

 

 さらに、町の公共施設2ヶ所に太陽光発電設備と蓄電池(出力は各10キロワット)を設置して防災対策に活かしました。今回の仕組みはユニークなもので、松田町の他に、4つの組織が関わっています。

これまでに紹介したエネ経会議と湘南電力の他、湘南電力の親会社である「エナリス」、そして近郊の小田原で誕生したご当地エネルギー会社の「ほうとくエネルギー」です。

 

今回の取り組みの仕組み図

 

まずは、ほうとくエネルギーが一部に経産省の補助金などを使って太陽光発電と蓄電池の設備を購入、松田町の公共施設に設置します。設備の所有者であるほうとくエネルギーには、売電収益が入ります。一方で松田町は、町の予算を使わずに災害時の非常用電源を確保することができます。

 

 設備から生まれた電力を買い取るのは、エネルギーの地産地消をめざす湘南電力です。湘南電力は、電力の小売事業者として9つの公共施設への電力供給も行っているので、地域で生まれた電気を地域で使うことになります。

 

裏方として、電力の制御を担当するのがエナリスです。エナリスは、蓄電池の遠隔制御も行っています。遠隔制御とは、蓄電池をある程度活用して普段から受給調整に役立てたり、いざというとき電池の残量がゼロにならないよう監視しておくという意味があります。そして、この仕組み全体のコーディネートをしたのがエネ経会議ということになります。

健康福祉センターに設置された蓄電池

 

 設備そのものは小さいながらも、地域で発電した電気を地域で消費、さらに利益も地域入り、非常時には防災対策にもなるという、とことん地元にこだわったこの仕組みは、全国的にも珍しいものと言えるでしょう。湘南電力はこの仕組みを通して、何を実現しようとしているのでしょうか?湘南電力の渡部健社長は、規模が小さいのでこの事業単体では利益は見込めないものの、大切なのはこの先にあると発言します

 

 「この事業は、地域の防災対策になっているのが大きな特徴です。このような取り組みを通して、地域にこだわった小売会社として自治体さんと長くお付き合いができる関係を築ければ良いと思います。今後はHEMSなどの技術を活用しながら、エネルギーを通して地域の課題を解決していく新しいサービスも検討しているところです」。

 

健康福祉センターのソーラーパネル

 

 単に電気の売り買いをしているという関係性では、価格面だけで比較されて安い方を選ばれてしまいます。しかし、地域のためにさまざまな面で協力関係を築くことができれば、簡単には関係を切り離すことができません。地域にこだわった小売会社として、地域とのつながりを大事にしてくことが、ビジネスにとっても長い目で見ればプラスになるということでしょう。なお湘南電力では松田町で実施した防災対策の取り組みを、周辺の他の自治体にも広げようと検討しています。

 

◆山間地域をエコタウンに

 

 ソーラーパネルと蓄電池を設置した2つの施設を紹介します。ひとつは、主に高齢者社や障がい者が利用している健康福祉センターです。ここは災害時には、ボランティアを受け入れるボランティアセンターとなります。そのような施設は防災対策が欠かせません。

 

健康福祉センター外観

 

 もう一ヶ所は、松田町の市街地から離れた寄(やどりき)地区の小学校です。山間部に位置する寄地区は、1本の細い道路でしか市街地への出入りができないようになっています。もしその道が塞がれてしまえば、地区が孤立する可能性もあります。大きな災害が発生した場合、この寄小学校と隣接している寄中学校は、避難所となる予定です。寄中学校の方には、すでに県の補助金によりソーラーパネルと蓄電池が設置されていましたが、小学校にはまだついていませんでした。そこで、今回の設置場所に選ばれたというわけです。 

 

もともと、松田町の市街地と山間部の寄地区は別の自治体でしたが、およそ60年前の1955年に合併しています。当時は地域で食料とエネルギーを自給していたようです。また現在も、多くの観光客が訪れる箱根に農産物などの食材を提供しています。都会の感覚では「アクセスの悪い山間部」と見る向きもありますが、本山町長はこの地区には実は豊かな可能性があると感じ、寄をエコタウンにしたいと考えてきました。ソーラーパネルと蓄電池の導入は、そのエコタウン構想の最初の小さな一歩になるかもしれません。

 

 「寄地区の歴史的背景を考えたら、今の時代に沿った形でエネルギーを地域で自給することは十分に可能だと思っています。安心、安全というだけではなく、CO2の排出をゼロにすることができるかもしれない。エコツーリズムもできるでしょう。現在は高齢化して人口も減っていますが、そのような自然が豊かな地域ならではの努力を続けることで、寄地区に移住したいという人が増える、そういう可能性のある場所だと思っているんです」(本山町長)。

 

松田町の本山博幸町長

 

 松田町では今後、他の公共施設でも順次、ソーラーパネルと蓄電池の導入を進めていく予定にしています。この取組は、単なる防災対策にとどまらず、地域をより魅力的なものにしていこうという構想のもとで行われていることがわかりました。このような取り組みが、全国の他の自治体にも普及してほしいところです。

 

◆【お知らせ】ご当地エネルギーを描く映画の制作が進行中!

 

自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」を現在制作中です。監督は、「よみがえりのレシピ」という地域と食をテーマにした映画をつくった渡辺智史さん。ぼくも「おだやかな革命」にはアドバイザーとして関わっています。この映画には、「ご当地エネルギーリポート」で紹介している地域のエネルギープロジェクトが数多く登場しています。映画の公開を応援するためのクラウドファンディングが行われています。ぜひ応援よろしくお願いいたします。

 

映画の内容とクラウドファンディングについて詳しくはこちら

 

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