*これは 味彩箸~ディナーバイキング~ の続きになっています。
もしも、この記事を・・・

予想に反し、店内はガラガラだったため
私たちはちょっと人目につきにくい、座敷のほうに腰を下ろした。
ここに来るまでの逸る気持ちがどんどんと冷めていった。
とりあえず・・・バイキングのおかずが並ぶその場に向かう。

おかずの種類がやけに少なく感じるが・・・。

以前利用した時のおかずとは比べ物にならないほど少ない。

とりあえず、ひと皿盛り付けてみた。
旦那がお酒でも・・・と勧めてきたが
私は待ったをかけた。
ひと皿のそのおかずをまず食べてみた。
和え物、サラダ等はいいとして
鶏の唐揚げ、春巻き、
うずらの卵フライ、串カツ・・・全てにおいて
ほんの少しの湯気もなく、冷め切っていて眉間にしわが寄った。
フレッシュな野菜や果物がまったくない。
以前、トマトスライスやオニオンスライス、パイナップル、オレンジなどもあったはず・・・
ポテトサラダ・マカロニサラダ・千切りキャベツしかなかった。
そう言えば・・・
ランチの時に、途中で焼きたてのピザや熱々のスパゲティなどが出てきた。
もう少ししたら、出てくるんだろうな・・・と
この状況下においても、期待してやまない私。
この日の夜は風がきつかった。
外は冬のように寒かった。
店内には私たち2人だけ・・・静かだった。
ヒュウヒュウ~と風の音がやけにうるさく感じ
またその音は私たちの心まで冷えさせた。
嫌な空気だ。
デザートを取りに行く。

2種類のケーキが遠慮がちに置かれていた。
嫌な流れだ。
新しいおかずなど出てこなかった。
なんとなく察した。
たった2人しか客がいないから、おかずなど追加する意味がないのだ。
いつから作り置いてあったのか定かではないが
その冷め切ったおかずたちをすべて平らげてしまえば
次のおかずが出されるのかもしれない。
だけど、それは無理だ。
1600円もするディナーバイキングだ。
このままじゃ、割に合わないような気がしてならない。
従業員らしき女の人が、買い物袋を提げて入ってきた。
これから厨房に入るのか?
私たちの席を素通り・・・バイキングコーナーをぐるりと1周し
ひょいと手を出した。
その手にはうずらの卵のフライがしっかりと握られていた。
( ̄△ ̄)エッ..?
つまみ食いっすか?!
いったん、厨房に入ったかと思いきや
すぐにまた出てきて、バイキングコーナーへ。
さっきのうずらの卵が口の中にあるのは遠めで見ていても分かるほど
その女は口をモグモグさせ、次のエサを物色する。
串カツのようなものに手を出した。
皿に盛るでなく、トングで取るでなく、素手でだ。
呆れた・・・。
客の見ている前でそれはないだろう。
なにがホテルのビュッフェだ!
聞いて笑わせる・・・そう思った。
どんどんと冷めていく。
私たちの空気も、バイキングに並ぶおかずも
この店に対する期待も・・・。
体まで冷えてきて温かい何かが欲しくなった。
私の口から出るのはブツブツ文句ばかり。
だってスパゲティが食べたいんですもの。
焼きたてのピザだって、スコーンだって食べたいのに
ないんですもの・・・葉っぱばかりでお腹が膨れないんですもの。
旦那が溜まりかね、店員に尋ねた。
何か温かいものはないんですか?と。
この状況・・・
店員も私たちを哀れだと思わないのかな?
1600円払ってるんだ!私たちは・・・。
たった1食分でもいいから、ママースパゲティでもいいから
日清焼そばでもいいから、作りたての温かいものを食べさせてくれよ。
店員には心がなかった。
誠意などみじんもない。
同情する心もないのか?
出てるだけですねぇ。
そんなふざけたこと言うなよ!と思った。
食べ放題のバイキングの店に来て
お腹のみならず、心までハングリーな気持ちになるなんて・・・(泣)
旦那が苦笑いで努めて明るく私に言った。
温かいもの発見したぞ!と。
旦那も同じようになんなんだ?!この店は?!と腹立たしい思いのはず。
それでもなんとか怒る気持ちを表に出さず
私に笑いかけるなんて、気を遣ってるんだな・・・。
そんな旦那に私も苦笑いで答えた。
味噌汁、取ってくるっ!

あまりにも不憫だと味噌汁を注ぎながら思った。
保温時間が長いのか、やけに濃すぎる味噌汁を
旦那はお湯で薄めて飲んでいた。
やばいくらい空腹だった。
バイキングでご飯を食べることはまずないのだが
ご飯でも食べなきゃ満たされない。

これが1600円のディナーなのか・・・解せない。
ドアが開いた。
新たにお客が入った。
しかも3人。
店にしてもカモだろうが、私たちにしても3人はカモだった。
早くあの冷め切ったおかずを食ってくれ!
何でもいいから平らげてくれ!
そうすればなにかひと皿でも、作りたてのおかずが出てくるはず。
もしかしたら、スパゲティもピザも出てくるかもしれない。
この期に及んで、かすかな期待にしばらく席を立てずにいた。
ケーキでも食べるか・・・。
しかし、ショーケースにケーキはない。
まさか、ケーキがないとは言わないだろう。
たった今、3人の客が来たばかり。
ケーキくらい出してくれるだろう。
そう思ったので、静まり返った厨房に声を掛けてみた。
あのぉ~ケーキがないんですけど・・・。
あ~出てるだけですねぇ。
え?いまなんて?
(゜ロ゜)・・・絶句!
信じられない。
客を馬鹿にするのもほどがある。
ランチよりも値を上げ、おかずは減らし
冷たいものも温かいものもとことん無視して
作り置きの弁当屋か、惣菜屋か?ここは!
たとえ800円だって払えないよ。これじゃ。
金、返せっ!みたいな暴言を吐きたくなる気持ちを
グッと堪え、二度と来るかっ!と心で叫び、店を出た。
客が今、どんな気持ちで席を立ったか考えろ。
このままじゃ、つぶれるのは時間の問題。
っていうか、完全にもう潰れてるよ。ここ・・・。
店員の心まで潰れてるよ。ここ・・・。
せめて、ランチタイムが閑散としていなければいいのだが・・・。
いや、もしまだランチタイムに賑わいがあったとしても
足を運ぶ気にはならないだろう。
客ってそんなもんだ。
おいしいバイキングの料理が、2人を和ませてくれる・・・。
そう信じていた私だったが、意に反して冷めるばかり・・・。
風の強い・・・
寒い寒い夜だった。



