トランス脂肪酸。
今なお、ご存じない方が多いようなので書きましょう。


WHOでは、食事・栄養及び慢性疾病予防に関する合同専門家会合(2002年開催)や米国のFDA(食品医薬品庁)は、食事中のトランス脂肪酸をエネルギーの1%以下にするよう勧告しています。先進国と呼ばれている国々では、健康を害する可能性が高いと言うことで規制がかかっています。日本は任意表示の許可が2011年7月に出ただけです。

多くの先進国:危険の可能性が有れば規制するのは当然
アメリカ:危険性を公表して選ぶのは国民
日本:死人が何人も出て世間が騒いでから規制を考える国

その様な国に住んでいるという自覚が大切です。
アスベストを国は安全だと言っていましたが、8年後には「実は危険でした、ごめんなさい」と言ってます。水俣病も、イタイイタイ病も、日本の歴史を見れば日本国が何を考えているか解ります。原発事故による低線量被曝も「直ちに健康被害は無い」が、「中長期的にはある」ということですし。

話が逸れましたが、日本ではトランス脂肪酸がまともに規制されていない以上、健康を考えるならば自覚を持って排除する努力を必要とします。


脂肪酸の種類ですが、形を表す名称です。天然に存在する殆どの形が「シス型」でくの字に曲がっているのですが、人工物に豊富に存在する「トランス型」は真っ直ぐです。トランス型が天然に存在しない訳ではありませんが、数%と極めて少ないのです。形は違うのですが、身体はどちらも使います。

植物油(常温で液体)に水素を添加し、脱臭処理や高温高圧処理する課程で発生します。トランス型脂肪酸は本来の形と異なりますが、形が似ているために脂肪酸として体に取り込まれて細胞膜やホルモンの材料になってしまいます。しかし、取り込んだはいいけれども、使い物にならないので細胞膜は構造的に弱くなり、有害成分が侵入しやすくなるとされています。木だと思って家を建てていたが、一部は木では無くて木に似せて作られた発泡スチロールだった というような話しです。

細胞膜が弱ると言うことは、細胞で構成されている人体が弱ると言うことです。

世界では、どのような病気と関わりがあると言われているかを見ますと、現代の病気の世相を反映していると言えます。

・免疫能の低下(風邪などにかかりやすい)
・癌(各種)、悪性リンパ腫
・クローン病などの自己免疫疾患
・花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎や結膜炎などのアレルギー
・LDLコレステロール(悪玉)の増加とHDLコレステロール(善玉)の低下
・動脈硬化(心疾患、脳卒中など)
・慢性関節炎
・認知症

関節炎と認知症の関連は良く解りませんが、免疫細胞の膜が弱れば、免疫機能の低下を招くのは当然で有り、感染症や悪性腫瘍が起こり易くなるのは納得です。アレルギーも免疫細胞が関わりますから、花粉症などのアレルギー患者数が増え続けているのも当然と言えます。LDLが増えれば動脈硬化のチャンスが増えるので(特に酸化環境で)当然です。

取り込まれたトランス脂肪酸が消えるのは、その細胞の寿命が尽きるまでそこにあり続けます。ですから、トランス脂肪酸をとり続けると言うことは、劣化した細胞を作り続けると言うことになるのです。すなわち、人体は劣化したままを維持することになるのです。病人が減らない訳ですよね? とも言えたりもします。


*コラム*
トランス脂肪酸にも種類がありまして、反芻動物の消化管にいる菌が作り出すものをバクセン酸、水素添加で出てくる物をエライジン酸とがあります。天然に存在するトランス脂肪酸はこのバクセン酸で問題視されていません。人工処理の際に出てくるエライジン酸が不健康なトランス脂肪酸だということです。



 ~ つづく