2012年印象的だったライブまとめました。仕事がかなりキツかったせいか3月~7月はほとんどライブ行けてないし、これよりも各バンドベストライブはもっとあるとは思いますが、敢えて自分が観た中で恣意性と主観たっぷりに15バンドほど選ばせていただきました。順位なんてつけられませんが、時系列ですので適当に拾い読みしていただけると幸いです。


○2/10 トリプルファイヤー@秋葉原club GOODMAN
2012年1番ライブを観たバンドはトリプルファイヤー。6回の対バン含めると15回近く観ている。なのでベストを決めるのも難しいのだが、「スキルアップ」初披露だったこの日をチョイス。あまりにシュールな歌詞にサーティーンの神宮さんとシママワリと最前で腹を抱えて笑った。
その後音源リリースから人気が出始めもう最前で観るにはわりと労力を要するようになってしまった。
音源を聴くのが先でライブに来た人はおそらくびっくりするだろう。アルバム未収の新曲はかなり挑戦的な曲が多い。ニューウェーブからヒップホップ/ファンク的なアプローチを強めており、特に「ちゃんとしないと死ぬ」はギター鳥居の狂気の才能が炸裂していて聴いていると煙に巻かれたような戸惑いばかりが残る。
音源とライブでこのようにラグが生じてしまうのはライブバンドの宿命だが、そこら辺が少し悔しい。もし「ライブ観てみたけど音源よりキャッチーさに欠けていてそんなよくなかった」と思っている人がいるなら「そうじゃねぇんだよ!」と胸ぐら掴みながら説明したくなる。「高田馬場のジョイ・ディヴィジョン」だなんて誰かが言っていたけど1stアルバムの混沌から2ndへ長足の進歩を遂げていく(であろう)辺りがJDとの共通点かもしれない。


○2/20 BOSSSTON CRUIZING MANIA@青山月見ル君想フ
この日はイベントのクオリティがとても高かった。一応ダブしばりだったのだがスティールパンを効果的に使った鬼の右腕、中華ダブ・泰山に遊ぶ、ズブズブと沼に沈められるような(最近の新曲はアッパーな曲も多いが)ボストン、お囃子ダブ、はなしと4者4様でかなり楽しめた。
このライブハウスは初めて行ったのだが(職場から徒歩5分)なんか不思議な造りで。2階席があって雰囲気もエキゾチックでちょっとSASUKEのステージみたいで、出てみたいなと想った。普段は割とお洒落な感じのブッキングが多いようだ。
さて、ボストン。カシマさんが灰色パーカーを着ていて印象的だった。アルバム中心のセトリでだいぶテンション高くて圧倒された。ボストンが演る曲は一般的にノレる曲かって聞かれたら間違いなくノーなんだが原始の躍動というか、土人の祝宴というか、語弊を恐れずに言えばすごく祭的だ。ポストパンク、或いはそれ以降の混沌としたエネルギー。でもポップグループほど前のめりな怒りがあるわけでもなく、RIP RIGやPIGBAG、マキシマムジョイはど機能的でもない。どこかギクシャクしている。80年代ブリストルのエアポケットを埋めるかのようなサウンドが個人的にとても好きだ。5回も観れていないが11月の学祭もシュチュエーション的にかなりよかった。


○5/12 extruders@秋葉原club GOODMAN
新宿motionのサエキさんが「横浜の奇跡」と形容していたが、本当にそう思う。圧倒的な緊張感、だけど音圧がどうこうではなくむしろ音作りはミニマル。それがウィスパーボイスとVJと混然一体となって、息をするのもはばかられるような空間を作り出す。その場を支配してしまう。本当に、拍手も、瞬きも、extrudersの邪魔になってしまいそうで、ただ呆然と見つめるしかないのだ。ライブ中後ろの方でお喋りしてるやつがいたら恐らくぶん殴る。なかなかこの雰囲気は纏えない。そういう意味でも「奇跡」なんだろう。
残念ながらライブに行けていないのでまた是非観たい。


○8/12 RUINS alone@新代田FEVER
swaragaのレコ発。この日はとにかくドラムが爆音だった。前のベースと観にいった。圧倒的な演奏に釘付けになってしまった。RUINSが始まると、いわゆるバンドマンたちがかつて街頭テレビでプロレスの中継を観に集まったかのような勢いでワーッと集まるのがとてもいい光景だな、と思う。


○8/18 うみのて@サマーソニック
初めに断っておくが演奏はこの日は酷かった。というかあの環境で普段通りの演奏ができるはずがない。このシステム自体何かもの哀しいけど、早瀬さんも「いろいろ言われたけどなんだかんだ出てよかった」と言っていたので箔をつける意味ではいいのかもしれない。
だってフェスとは名ばかりの、無料エリアに作られた小さな特設ステージ、ロクにないリハ、短い演奏時間、売れない芸人の前説。どうなんだろう、と思ってしまう。でもうみのてはいずれ大きい方で演奏するバンドだから関係ないか。「東京駅」で指を血だらけにしながら狂ったようにギターを弾く高野さんはとんでもなくカッコよくて「うぉぉ」と血湧き肉踊った。その後アップされた集合写真は青春丸出しで(皮肉ではない)純粋に「あーすげーいいなー」と思ったのである。
その後の活躍はご存知の通りで。3月のアルバムが楽しみだ。
先日抜けたメンバーと話す機会があった。それでディレッタンティズムの追求としてはうみのては活動しえないんだな、という見解に至り少しだけ哀しくなった(僕の認識とうみのてのヴィジョン自体全然違うのだろうけれど)。単純に言うと売れるためには場合によっては何か曲げざるを得ない、とか、何かを選択するということは何かを捨てるということ、みたいな。たくさんの人によって使い古された言い回しなんだけど。


○8/20 殺生に絶望@新宿motion
クウチュウ戦→殺生に絶望の流れが完璧すぎた。かなり前に一度観たきりだったのだが(そのときは最後の数曲だったせいかあまり印象になかった)、アコースティックとエレキのギターと打ち込みだったりの3人組。基本ドラムとベースはない。凶々しさの籠った歌声に聴き惚れて立ち尽くしてしまった。若いのにとんでもないことをしている。はっきり言って売れるような音楽ではないのだが圧倒的な存在感と(いい意味での)一匹狼ぶり。もっと売れてほしい。CDもクオリティが高くてよく聴いている。
三上寛、股下あたりとスリーマンやらないかなぁとふと思った。


○10/18 H mountains@新宿motion
多幸感、3本のギターの構成美、なんだけどほんのちょっといびつで。東京インディー界の名うてのプレイヤーが集まっているのだから演奏はそりゃよくて当たり前なんだけど、単なるプレイヤビリティの足し算で終わってなくて、なんと言うか両手を挙げてしまうような多幸感でいっぱいになる。確かこの日初披露の「でっかいオブジェ」がすごく印象的だった。ギター3本による間奏やアウトロはまるで戦隊モノの主題歌やゲームのボス戦のBGMのよう。過剰なまでにドラマチックでキラキラしている。
久しぶりに観たのでこの日を選んだが大晦日のグッドマンもめちゃくちゃよかった。語彙が消滅して「もう最高だなぁ」としか言えなかった。


○10/20 otori@新宿motion
たぶんトリプルファイヤー、サーティーンの次にライブを観た気がする。コバラさんは僕と同い年だが、本当に肝が据わっているというか、ライブを重ねる毎に存在感と「妖しさ」が増している。ノーウェーブというか、割と歌パートが少ないんだが以前のような「観客が感じ取ってしまうボーカルの手持ち無沙汰感」がまったくなくなった。オーラがすごい。あとベースのゴリゴリ感が個人的にかなりツボ。
ドラムが替わってどうなるのか。目が離せない。


○10/29 サーティーン@新宿motion
motionでのサーティーンの安心感といったらないんだが、この日の「企画主喰ったるぜ」みたいなテンションがとにかく素晴らしくて客もかなり盛り上がっていた。セトリものっけから最後までキラーチューン連発。ズルかった。
それにしてもサーティーンの「俺たちの」感。ホント稀有な存在だよなぁと思う。木下のギターが本当にカッコいいの一言に尽きる。ピッキングの安定感が恐らく自分の100倍くらいある。
12/30も新曲がかなり攻めていて、興奮の坩堝っぷりたるや、もう年越したんじゃないかと錯覚するほどだった。


○11/3 壊れかけのテープレコーダーズ@横浜国立大学
本人たちにとってはワンマンやレコ発の方が感慨深いだろうが、あくまで個人的に、2年ぶりに学祭に壊れかけがやってきて、それで「箱舟」をやってくれた。それだけで忘れられないライブになった。感無量のあまり視界がぼやけてしまった。
窓枠に貼り付くように立ちキャノンの抜けたマイクで歌が聴こえるはずないのに狂ったように吼えるコモリさんは間違いなくロックスターだった。
2年前のmotionでの企画(w/割礼、クウチュウ戦、about tess)で一目惚れし、当時大学4年だった僕は学祭の一ヶ月前に無謀にもオファー。それなのに快く引き受けてくれて。
それから僕は僕なりに、バンドを「学生時代の良き思い出」になんてしてたまるかと活動を続けて、改めてブッキングに携われて本当によかったなと思う。


○11/10 NINGEN OK@三軒茶屋Heaven's door
ピロリさんという方の個人企画。個人企画で地方のバンドをたくさん呼ぶという大博打。絶対いいバンドなんだろうと予備知識なしで行ったら、ほんとにすごかった。パイプカットマミヰズもめちゃくちゃ面白カッコよかったけど、とにかくNINGEN OKには吹っ飛ばされた。タイプは全然違えど前述のextrudersのような、場の掌握ぶり。
ドラム、ギター、キーボード(サポートらしい)の少人数編成ながら圧倒的なインパクトだった。特にドラムのスネア一音たりとも聞き逃せないような緊迫感といったら!耳を劈くぶっ壊れ寸前のギターも、仄かな彩りを添えるキーボードも、全部が必然だった。


○11/10 tacobonds@新宿LOFT
東京ボアダムも佳境の午前4時。タコボンズ、BPM4が始まる。それだけでもう満点。うぉぉぉぉぉとテンションがマックスになり拳を振り上げた。小川さんのギターの音が最高すぎる。めちゃくちゃなイベントでとにかく阿呆のように踊り狂った。
余談だがたまたまボアダムに来ていた大学の後輩の女の子が「タコボンズのドラム、女の人なのにすごいですね!」と言っており、爆笑した。


○12/15 大森靖子@新宿motion
クウチュウ戦の由美子の個人企画。バラエティ豊かな顔ぶれ、例のKやプロレタリアートファンのいかつい奴らがフロアにうろつく中、大森さんがアコギ一本で登場。多少そういった連中の「おう?この女何やるんだ?」という好奇の眼があったかもしれない。それでも当の本人はどこ吹く風。アカペラで歌い出した瞬間、会場の空気が一変した。そこから「あたし天使の堪忍袋」。ただただ圧倒された。
好きな歌はたくさんあるが、「夏果て」に於ける歌唱は特に大森さんの才能が凝縮されていると思う。「新宿」と同じ人が歌っているなんて到底思えない。アルバムが本当に楽しみだ。


○12/21 GROUNDCOVER.@新宿motion
とんでもないメンツだった。仕事の都合がつかず、全バンドは観ることができなかったが、なんというかブッカー冥利に尽きるイベントだったと思う。
特にトリのグランカ。マヤ暦最後の日にふさわしい。ぐぅの音も出ない圧巻のステージングだった。ダブ処理を施した遠藤さんのスネアが一閃すると体が自然に反応してしまう。
ボアダムのあと知り合いが「グランドカバーは何も知らない原始人に見せたら神になれますよ」と言ってて笑ったが本当にそう思った。破壊と混沌。今日が何曜日か、終電が何時か。そんなの全部どうでもよくなってしまった。


○12/30 股下89@新宿motion
股下を観るのは2年ぶりだった。中学生棺桶の企画か何か。当時アリアップが死んだ直後ということもあり、妙な音数の少なさやボーカルの歌唱から「slitsっぽいなぁ」と思っていたが2年経って(活動休止もあったが)とんでもないことになっていた。
相変わらず一般的な音圧を無視したサウンドプロダクションなのにとんでもなく重い。どのガールズバンドも持ち得ない独特の縦ノリ。異論あるかもしれないがそれは80年代UKニューウェーブというより90年代ヘヴィーロックに通じるものがある。安定感抜群のリズム隊に妙な「粘り」のあるギター、それにあの呪術的なボーカルが乗っかって…耳にこびりついて離れない。唯一無二の突然変異だ。圧倒的なオリジナリティ。観終わった後はむしろ意気消沈してしまった。


うまくまとまってないうえに語調も混濁してますがこんな感じです。自分がやってるバンドも誰かの何かの衝撃になれればなぁと思います。今年もよろしくお願いします。