■ガリレオ・ガリレイによる「重いものほど速く落下する」という考えを否定する思考実験
1.重いものほど速く落下するとしよう。
2.大小二つの鉄球を用意する。
3.小さいものは遅く、大きいものは速く落下するだろう。
4.二つの鉄球を軽いひもでつないで一つの物体とする。
5.これを落下させると、小さい鉄球は速く落下する大きい鉄球に引かれるため元より速く落下する。一方、大きい鉄球は遅く落下する小さい鉄球に引かれ元より遅く落下する。従って二つの鉄球の中間の速度で落下するはずである。
6.しかし、全体としては大小の鉄球を合計した重量になり、より重くなるのだから元の鉄球それぞれより速く落ちるはずである。
7.同じ前提から相反する結果が導かれるのはおかしいのではないだろうか。
この後、ガリレオは実際に物体を落下させて「重いものほど速く落下する」というのが間違いであることを実験により示した。ただし、ガリレオの学徒ヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニがガリレオの伝記で書いているピサの斜塔で行った落下実験は、現在では事実であるとは必ずしも認められていない。
思考実験の概要
ある小部屋の中に、アルファベットしか理解できない人を閉じこめておく(例えば英国人)。
この小部屋には外部と紙きれのやりとりをするための小さい穴がひとつ空いており、この穴を通して英国人に1枚の紙きれが差し入れられる。
そこには彼が見たこともない文字が並んでいる。これは漢字の並びなのだが、英国人の彼にしてみれば、それは「★△◎∇☆□」といった記号の羅列にしか見えない。 彼の仕事はこの記号の列に対して、新たな記号を書き加えてから、紙きれを外に返すことである。
どういう記号の列に、どういう記号を付け加えればいいのか、それは部屋の中にある1冊のマニュアルの中に全て書かれている。例えば"「★△◎∇☆□」と書かれた紙片には「■@◎∇」と書き加えてから外に出せ"などと書かれている。
彼はこの作業をただひたすら繰り返す。外から記号の羅列された紙きれを受け取り(実は部屋の外ではこの紙きれを"質問"と呼んでいる)、それに新たな記号を付け加えて外に返す(こちらの方は"回答"と呼ばれている)。
すると、部屋の外にいる人間は「この小部屋の中には中国語を理解している人がいる」と考える。しかしながら、小部屋の中には英国人がいるだけである。彼は全く漢字が読めず、作業の意味を全く理解しないまま、ただマニュアルどおりの作業を繰り返しているだけである。それでも部屋の外部から見ると、中国語による対話が成立している。
思考実験の意味
この思考実験全体はコンピュータのアナロジーになっている。すなわち小部屋全体がコンピュータを表し、マニュアルに従って作業する英国人は、プログラムに従って動くCPUに相当する