ポーリングとホッファー | 稲毛エルム歯科クリニックのブログ

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皆さんこんにちは、稲毛エルム歯科クリニック院長、長尾周格です。
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ポーリングの話に続いて、エイブラム・ホッファーのお話をしましょう。

エイブラム・ホッファーはカナダの精神科医であり、サスカチェワンで精神医学研究所の役員を勤めた後、サスカチェワン大学で精神医学の教授となりました。ホッファーは統合失調症(Schizophrenia、かつての精神分裂病)の研究を行っていました。

統合失調症は人類にとって古くからある病気であり、人種、性差問わず、全人口の1%程度に発症すると言われていました。ホッファーは統合失調症の患者を観察していて、あることに気が付きます。統合失調症の患者の中に、皮膚病変を持つ者がいて、調べてみるとこの患者はペラグラでした。


ペラグラは当時すでに、ビタミンB群の一つである、ナイアシン(ビタミンB3)欠乏であることが知られており、当然ホッファーはナイアシンを患者に投与して、ペラグラを完治させるとともに、統合失調症も治してしまいました。

ホッファーは統合失調症の患者がペラグラの精神症状に酷似していることから、統合失調症はナイアシン欠乏によって起こるのではないかと考えました。そこで統合失調症の患者にナイアシンを投与すると、統合失調症が良くなる患者が現れました。しかし、効果の無い患者もいました。

当時ナイアシンは必須アミノ酸の一つである、トリプトファンから作られることが知られており、ホッファーはトリプトファンからナイアシンの生合成が先天的に上手くできない人が、統合失調症になるのではと考えました。それならばと、通常量のナイアシン投与で良くならなかった患者に、大量のナイアシン投与を行ってみました。ナイアシンは大量に投与すると、顔面が紅潮したり、皮膚にほてりやかゆみが起こることが知られていました。これを「ナイアシンフラッシュ」といいます。

すると、普通の人ならナイアシンフラッシュを起こすはずの量であっても、統合失調症の患者はナイアシンフラッシュを起こさない場合が多い事に気が付きます。ならばさらに多量のナイアシンを投与できると考え、実践したところ、通常量のナイアシンでは効果の無かった統合失調症の患者であっても、精神症状が改善されました。

ホッファーはその後、ビタミンB6を加えたり、ビタミンCやビタミンAなど、複数の栄養素を組み込むことで、統合失調症の8割以上を改善したのみならず、社会復帰させ、納税者にまですることができたのです。この事からホッファーもまた、人間の栄養素の至適量には個人差が大きく、また、一日所要量よりはるかに多量の栄養素を補充することで、人間本来の健康が得られると考えるようになりました。

このことを精神医学の学会誌に投稿したところ、それを目にしたポーリングがホッファーに会いに行き、分子整合栄養医学が生まれたのです。