今日は朝からエビチリでした。


昨日、お客様がいらして、


近くでカラオケパーティになったのですが、


その時の残ったおかずを持ち帰ったものです。


それでは、今日も少しでも皆様のお楽しみになることを祈りつつ、


「ジアルの日記」をお贈り致します。


 「2385314日。今日はユゴーさんのお店へ取材に行った。ユゴーさんは、イタリア風の賄いを作ってくれた。お話を伺うと、お母様がイタリアの方だそうだ。デザートまで付いている。

『デザートが無いと、食事は締まらないからね。』と言って、ユゴーさんはウィンクをした。デザートはイタリア風のチョコレートプディングだった。私の分は、室温にしてくれていた。とても美味しかったので、コンピューターで作り方を調べてみようと思っていたら、

『はい、プレゼントだよ。』と言って、レシピカードをくれた。読んでみると、プディングの作り方が書いてある。

『いいのですか?』

『ああ、これは母のレシピを私なりに工夫した物だからね。あんたが他所のレストランに持っていってどうこうという代物じゃない。』

営業に差し障りが無いように、手短にインタビューをしてから、お礼を言ってお店を後にした。

 会社に帰ってコンピューターに向かうと、絵本の印税の振込み通知が来ていた。少し嬉しい。録音や画像の整理を終えて、終業時間ぴったりに退社する。今日は、母に買い物を頼まれているのだ。

母の行き着けの手芸店に行き、刺繍糸を買った。母はここの糸でなければいけないと言う。店の中を少し歩いてみると、「チャリティーセール」のコーナーが有って、惑星ダワ・ドルマ産のニュー・シャトゥーシュのストールやマフラー、毛糸等が、通常の価格の6割位で売られている。

『どういう事ですか?』お店の方に聞いてみた。

『実は、ダワ・ドルマで家畜の伝染病が流行してね。シャトゥーシュが取れるチルーが沢山死んだんだよ。このウィルスに感染すると、神経をやられて数時間で死んでしまう。ここで売っているのは、病死したチルーの毛から作った物なんだ。毛の質には問題が無いし、滅菌処置も完全だ。このウィルスは、ヒューマノイドには感染しないと証明されているんだが、みんな気味悪がって買わないんだよ。安値でもいいからとにかく売ってくれと言われてね。人助けだと思って買ってくれないか?』と、店主さんは言う。印税で臨時収入も有るし、ストールを3枚とマフラーを2枚購入した。丁度欲しいと思っていたのだ。(エリムやテインが見ていたら、「お人よしだね」と言われるかもしれないと思ったが。)はぎれを少しおまけしてくれた。

 店を出てから、通信ブースに入って、会社に通信を送った。編集長が、まだ残っていらした。店で聞いた事を話して、「ピオニー」に記事を載せられないでしょうか、と頼んでみた。

『そういう事は、広く知って貰う必要が有るわね。いいわ、ページを増やして載せましょう。出来るだけ早く記事を書いて頂戴。』というのが、編集長の返事だった。

家に帰ると、夕食もそこそこに記事の準備にかかった。

まずは、ダワ・ドルマの歴史について調べてみる。ダワ・ドルマは23世紀前半に発見されたかろうじてMクラスの惑星だ。気圧も気温も低く、探検隊の一人は、惑星に降りた数時間後に精神錯乱を起こしたそうだ。その上、耕地として使える土地が非常に少なく、その他の場所には、どんな方法でも除草出来ない雑草が生えているばかりだった。そのため、10数年は入植者がいなかった。しかし、あるチベット人学者が気が付いた。この惑星は、全体がチベット高原と同じような環境だと。大国である中国に長い間虐げられていた人たちは、新天地を求めて旅立った。ダワ・ドルマとは、最初の移民船の女性船長の名前だ。それから20年程は、遊牧と零細農業で、人々は細々と暮らしていた。しかし、転機は訪れた。クローン再生されたチルー(チベットアンテロープ)を遺伝子操作によって品種改良し、家畜化する事に成功したのだ。チルーは、連邦最高級のウールと、かなりの現金収入をもたらしてくれる動物だった。どうやっても除草出来ない「無敵の雑草」は、チルーの良い飼料になった。この惑星の住民は、85%がチベット系で、民族色が地球のチベットよりも色濃く残っている。別名ノヴァ・チベットと呼ばれ、観光客も多く訪れる。チベット寺院では新年にラマ僧が舞い踊り、5年に一度は、法王ダライ・ラマが説法に訪れるそうだ。

 この星の歴史をかいつまんで紹介した後、この惑星を襲った深刻な状況を説明し、チャリティーセールのニュー・シャトゥーシュを購入するように勧める記事を書いた。チャリティーセールを行っている店のリストを付け、このウィルスはどのヒューマノイドにも感染しないと証明する実験データが有る事と、元々シャトゥーシュはチルーを射殺して取っていたウールなので、死体から取ったウールでも問題は無い事とを書き添えた。記事を本社に送ってから、母の淹れてくれたカナールを落としたレッドリーフティを飲みながら、この日記を書いている。編集長は、なんと仰るだろうか?チベットの人達が受けた虐待が、カーデシア占領時代のベイジョーに重なって、何時もより力が入ってしまった。明日は仕事を休みにすると決めていたので、ユゴーさんのプディングを作った後で、エリムとテインへのプレゼントを作ろうと思う。」


それでは、皆様も良い休日をお過ごしください。