今日の私の住んでいる地域は、


朝から太陽がんがん照りで、


暑いです。


「不滅の太陽」を信じたくなったローマ人の気持ちもわかります。


それでは、今日も少しでも皆様の楽しみになればと祈りつつ、


「ジアルの日記」をお贈り致します。


238529日。

 今日はテインのお誕生日パーティの日だ。午後には料理を全部作ってジュウバコに詰められたので、ミラさんに通信を送った。

『ミラさん、お誕生日のプレゼントがかさ張りそうなので、前もって転送で贈ってもいいですか?』

『転送代が勿体無いわ。夜になったら、ポーターを差し向けるわよ。』

『でも、ご負担をかけては悪いですから。』と言ったのだが、

『いいのよ、格安で使える人なんですから。』と答えて、ミラさんは通信を切った。

17時になり、ドアチャイムが鳴った。ポーターの方が来たのだと思ってドアを開けると、立っていたのはエリムだった。

『貴方がポーターなの?』

『そうだよ。私は家で一番年下だから、こういう時はいいように使われるんだ。』と言って、エリムは笑った。

エリムにジュウバコの包みを持って貰って、テインのお宅へ向かう。テインのお宅のドアが開くと、ドクターとテインが話している声が聞こえてきた。

『ようこそ、ジアルさん。お待ちしていましたよ。』テインは立ち上がって、握手してくださる。

全員が揃ったところで、テインにプレゼントが渡される。ドクターのプレゼントは、ヴィンテージのカナールだった。エリムは、最新式のプログラム用データパッドをプレゼントした。(コンピューターのソフトを作るのがテインの趣味だと、私は最近になって知った。)そして、私がプレゼントを渡す番になった。

『貴女のプレゼントは、随分大きいですね。』と言いながら、テインは包みを開く。

『ほう、これは素晴らしい。』中身を見て、テインは言って下さった。

『君が全部作ったの?』ドクターにも聞かれる。

『ええ、私にできるのは、こういう心遣いだけですから。』

『カーデシアの女性でも、料理が上手な人はいます。しかし、殆どの人はカーデシア料理しか作れません。色々な国の料理を作れる貴女は、稀有な方ですよ。』テインにそう言われたので、何だか気恥ずかしい。

『この器は、ジャパン(英語で漆器の事)だね。随分高かっただろう?』と、エリムに聞かれた。

『いいえ、「アモルフォス」のネットショッピングで買ったのよ。』

『おかしいな、こういうのは職人が手作りする物だから、かなり高い筈なんだが。盗品じゃないだろうな?』エリムは、色々な角度からジュウバコを調べている。

ミラさんからのプレゼントは、地球の有名な陶磁器メーカーのカップだった。

『ミラ、これは不良品じゃないのか?取っ手が付いていないぞ。』テインは、箱から出したカップを見ながら仰った。

『大丈夫ですよ。これは二重構造になっているカップで、直接手で持っても熱くないそうです。貴方はこういう技術を凝らした面白い物がお好きでしょう?』とミラさんは言った。テインは、実際に熱湯を入れて持ってみて、面白がっておられた。

ミラさんの作った料理と、私のジュウバコがテーブルに並んで、楽しいパーティが始まった。

 テインが、私のもう一つのプレゼントであるハンカチを見てから、

『ジアルさん、私は貴女が思っている程の物知りではありませんよ。』と、仰った。

『そうでしょうか?』テインには、金の鍵の意味がすぐに分かったらしい。

『そうですとも。もし私が「何でも知っている男」なら、今でもオーダーの長だった筈です。』テインの古傷に触れてしまったかな、と思っていると、

『しかし、この方がいいと思っています。オーダーの長だったら、今ごろは仕事に追いまくられているでしょうからね。綺麗な女性たちや気の置けない人たちと、ゆっくり誕生日を過ごせるのが、なによりです。』穏やかな表情でこう仰るので、安心した。

『ところでドクター、そろそろ教えて下さいよ。どうやってあの収容所で、医療器具を手に入れたんですか?』出来上がってきたドクターに、エリムが聞いている。

『私もあの時は、完全に死ぬと思っていましたからね。是非聞きたいです。』テインも仰る。

『テインが危篤になった時、僕はガラックに心臓マッサージをさせて、部屋の外に出た。そして、ジェムハダーにこう言ったんだ。「医療器具を貸してくれ。」勿論、ジェムハダーは断った。僕はさらに言葉を続けた。「テインが助かったら、僕が彼から機密を引き出すと約束するよ。」「どうしてお前にそんな事が出来る?我々が拷問をしても聞き出せなかった事だぞ。」ジェムハダーは言った。」ワインのグラスを片手に、ドクターはオーバーアクションで話し始めた。

『拷問されたんですか?』私は思わず口を挟んでしまった。

『連邦軍以外の組織に捕まったら、普通は拷問されますよ。』事も無げに、テインは仰った。

『「僕はテインが知りたがっている情報を持っている。彼の生き別れになった子供の消息を知っているんだ。以前DS9に来たカーデシア人の急患を麻酔にかけた時、その患者が喋ったんだよ。」こう言ったら、ジェムハダーはヴォルタ人に連絡を取って、医療器具を部屋に転送してくれたんだ。』

『あの時は驚きましたよ。私たちがいた部屋に、いきなり連邦の医療機器が転送されてきて、ドクターが治療を始めたんですからねえ。』エリムは感慨深げに言った。

『私も驚きましたよ。エリムと話した後、意識が薄れて、これで死ぬと思いました。しかし意識が戻ってみると、ドクターがいて、「お願いです。カーデシアの機密を話して下さい。話してくれたら、貴方が一番知りたい情報を差し上げます。」などと訳の分からない事を言っているんですからね。』テインは、思い出し笑いをしながら仰った。

『ドクターとテインが別の部屋でヴォルタ人に問い詰められている間に、私は作業を進めて、シャトルと連絡を取る事が出来ました。ずっと不思議でしたが、そういう事だったんですか。貴方のついた最高の嘘ですね。』

『君にそう言って貰えて、光栄だよ。』ドクターは、私の作ったパイに手を伸ばしながら言った。

『最後の方になると、ヴォルタ人は、「貴方がどうしても話して下さらないなら、ドクターを拷問にかけて、お子さんの情報を引き出します。そしてお子さんをここに連れて来て、貴方の目の前でジェムハダーに拷問させますよ。お子さんがじわじわと死ぬのを見たいですか?」と言ってきたよ。私には子供はいないのにな。』この言葉を聞いた時のエリムは、普段と全く変らなかった。

ミラさんのお料理はとても美味しくて、沢山有ったのに全部食べてしまった。テインとエリムの共通の好物であるキパンのプレザとお茶で食事を締めくくり、1時間ほど話をしたり、カーデシアの音楽で踊ったりしてから、お開きになった。

『今日はとても楽しかったですよ、貴女に身寄りが無かったら、養女にしたいものです。』玄関先で、テインは私に握手をして、こう言って下さった。これは、カーデシア人の年長者が年少者に与える最高の賛辞なので、有り難く頂戴した。

ドクターは、チーフオブライエンに教わったという歌を歌いながら、上機嫌で家に向かった。

『テインは、君のプレゼントがとても気に入ったみたいだよ。』2人きりになった時に、エリムが言う。『あの言葉をテインが使ったのを聞いたのは、これが初めてだ。』

『貴方には言わなかったの?』

『私には、「私に年頃の娘がいても、お前とは結婚させたくないな。」と言ったよ。私は性格が悪いと知っているからね。』

『貴方はいい人だわ。』と私が言うと、

『本当に君だけだよ、そう言ってくれるのは。』エリムは言う。暫くは無言で歩いた。

『ねえ、エリム。貴方のお誕生日ももうすぐでしょう?プレゼントを考えていますからね。』

『私にも、ハンカチとジュウバコいっぱいの料理をくれるかい?』

『それでいいのなら、そうするわよ。』

『嬉しいね。今は酒が入って上機嫌だから、お礼代わりに君に機密を2つ教えてあげよう。』エリムは私の肩に手を回して、耳元で囁いた。

『何なの?』

『まず一つ目だけどね、君は、ドクターは可変種にとって替わられたのに、2回とも殺されなかったのを不思議だと思わなかったかい?』

『今まで考えた事が無かったけれど、言われてみると不思議だわ。』

『私やテインのように、機密が取れる人間ならともかく、ドクターは只の医者だからね。セクション31にも疑われたんだよ。オドーもその点を不思議に思って、偉大なるつながりに帰った時に聞いたそうだ。そうしたら、他のメンバーは、「ああいういたいけな赤ん坊のような生き物を殺す気にはなれなかった。」と言ったそうだ。ドクターには絶対に内緒だよ。傷つくからね。』確かに、これはドクターには言えない。

『もう一つの機密は何?』

『これはテインとミラには秘密にして欲しい事だ。実を言うとね、私は彼らに内緒で、もう一人家に住まわせているんだよ。』

『テインはともかく、ミラさんには隠せないでしょう?』

『それは大丈夫なんだ。その人は、私の心の中にいるトーラ・ジアルだからね。』酔いが覚めつつあったところなのに、また熱くなってきてしまった。

『私も母に内緒で、心の中にエリム・ガラックを住まわせているわ。』

『有難う、嬉しいよ。』家の前で、エリムは私を抱きしめてくれた。

『本当に嬉しいんだ。』エリムは繰り返した。

『駄目だな、もう少し気の効いた台詞を言いたいのに、出てこないよ。』暫くの沈黙の後に、エリムはこう言って、私の額にキスをしてから、家に向かった。

母はもう休んでいたので、部屋でシャワーを浴びてから、この日記を書いている。かなりお酒を飲んできた後だというのに、ドキドキして眠れそうにない。」


こんな感じでしょうか?


それでは、皆様も良い休日をお過ごしください。