今週も日曜日が巡って参りました。


皆様はいい1週間を過ごされましたか?


私はオーバーワーク気味です。


少しでも皆様の楽しみになればと祈りつつ、


「ジアルの日記」をお贈り致します。


2385126日。

 今日は出来上がったクランベリーのゼリーを持って、テインのお宅へ伺った。

『いらっしゃい、ジアルさん。』いつものように、ミラさんが出迎えてくれる。エリムとテインは、リビングのソファーでデータパッドを見ていたが、私が部屋に入ると立ち上がって迎えてくれた。

『今日は、皆さんがびっくりするお菓子を持ってきたんですよ。』と言って、私はケーキ箱の蓋を取った。

『ゼリーかい?それは綺麗だけど・・・』エリムは拍子抜けした顔をする。

『これはね、カーデシアの平均気温でも溶けないゼリーなのよ。』と私が説明したら、みんなの表情が変わった。

『本当ですか?とても信じられない。』テインまで、こう言った。

『じゃあ、発酵モードのオーブンで温めて食べましょうね。』と、ミラさんが言って、キッチンへ持っていった。ニャーニャにとってはつまらない食べ物らしく、リビングの眠り籠に入って丸くなった。

『長生きはするものですね。こんなにいい物が食べられる日が来るとは思っていませんでしたよ。』と、テインが言うと、

『私もだよ。テクノロジーが進歩したんだねえ。』と、エリムも言う。

『これは400年前からジャパンに有る物なんですって。』

『なるほど、見過ごされていた知識という訳か。』

『そういえば小さい頃の貴方は、この季節になるとプレザ(カーデシアで作られている、ゼリーとジャムの中間のような、ご馳走のお菓子。とても手間がかかる為、誕生日位しか食べられない。)を作れってうるさかったわね。』ミラさんが言う。

『そう、お前はキパンのプレザが特に好きだった。誕生日前だけは、私に罰としてプレザは無しと言われないように、飛び切りいい子にしていたな。』

『そろそろゼリーが温まったんじゃないかな?』エリムは、キッチンに「亡命」した。

『貴方は触らないでちょうだい。形を崩してしまうわ。』ミラさんが後を追う。

1分後には、コンポート皿に盛り付けられた赤い大きなゼリーが、応接セットのテーブルに置かれた。

『素晴らしい、芸術だよ。』と言いながら、エリムはケーキナイフを入れた。

『実に美味しいですよ、ジアルさん。』テインは美味しそうに食べて、お替りをしてくれた。会話は、誕生日の思い出話で盛り上がった。しかし私が、

『そう言えば、テインのお誕生日は何時ですか?』と聞いた時に、エリムとミラさんの表情に緊張が走った。

『再来週の日曜ですよ。』ごく自然にテインが答えると、2人の表情に安堵と驚きが浮んだ。

『それでは、何かプレゼントを贈りますね。』

『そうだ、折角だから、パーティーにしましょうか?エズリィさんは、その週は赤ちゃんを見せに実家に帰っていて、ドクターも寂しいでしょうから、招待しましょう。ミラ、その方向で準備を進めてくれるか?』と、テインは仰った。

『はい、分かりました。』

『私はもう少し貰うよ。』エリムは、3度ゼリーにナイフを入れた。

『私の分も取ってくれ。』テインも、皿を差し出す。

『いい加減にしなさい、いくら芸術だからって、2人で半分も食べているじゃないですか。』ミラさんに言われて、2人とも首をすくめた。

『そう言えばノーグ君に、カーデシアで受けそうな物が有ったら、教えてくれって言われていたわね。これはカーデシアで喜ばれるんじゃないかしら?』と、私はエリムに聞いた。

『このテランゼリーが嫌いなカーデシア人は、まずいないね。』

『じゃあ、ノーグ君に知らせてあげないとね。それとも、クワークに知らせた方がいいのかしら?』

『クワークに知らせるのは無理だよ。愛人バンクとかいう物を作ろうとして、風営法違反でオドーに逮捕されたからね。今は留置場にいる筈だよ。』お茶を飲みながら、エリムは説明してくれた。

『オドーに?でもオドーは、今は大使なんでしょう?』

『あれ、知らなかったのかい?オドーは大使として着任したその日に、キラ司令官によって名誉保安顧問に任命された。保安主任に助言し、協力要請があれば逮捕権さえ行使できる役職だ。今の保安主任は、ベイジョー人の若い男性なんだが、オドーを捜査の神様みたいに思っていて、1日の終わりには、必ずオドーに報告に来て助言を求めるし、クワークに関しては、怪しいと思ったら捕まえて下さいと言っているんだ。オドーは、大使と保安主任を兼任しているのも同然なんだよ。』

『そうなの。じゃあ、ノーグ君に知らせるしか無いわね。でも、クワークはこのまま刑務所行きなのかしら?』私には親切にしてくれた人なので、何だか気の毒に思えた。

『大丈夫だよ。風営法違反と言っても、実際に愛人バンクを作る前に捕まえたから、書類送検だけで済むだろうとオドーは言っていた。実を言うと、これはノーグの密告なんだよ。どう言っても伯父さんが悪企みを止めないから、逮捕して止めて下さい、と言ってきたそうだ。その前から、オドーは知っていたらしいけどね。』

『・・・随分詳しいのね。』

『実は昨日、オドーと通信したんだよ。君がキラ大佐と通信しているように、私も時々オドーと話しているんだ。』

『あの男は、お前の友人の中では一番の堅物だな。』テインは仰った。

その後も楽しく話した後で、1800時頃にテインのお宅を辞去した。

『私は何かまずい事を言ったの?』人がいない所で、エリムに聞いてみる。

『いいや、カーデシアの礼儀作法に反する事は何も言っていないよ。』

『でも、私がテインの誕生日を聞いた時に、貴方とミラさんの表情が変わったわ。』

『あれは君を気遣ってだよ。今までテインは、誰にも誕生日を教えなかったからね。

君が拒絶されて傷つくんじゃないかと思った。でも、あっさり誕生日を教えた時には、驚いたよ。』

エリムと帰り道で話し合って、木曜日の夜にお茶を飲む事にした。母との会食について、打ち合わせをする為だ。

今日は何時に無く、エリムは長い間私を抱きしめて離そうとしなかった。

明日から週が変わり、次の土曜日には昼食会だ。期待と不安が交錯する。」