今日も日曜日が巡って参りました。


もうすぐ6月も折り返し地点ですね。


月日がたつのは早いものです。


それでは、今日も少しでも皆様の楽しみになればと祈りつつ、「ジアルの日記」をお贈り致します。


 「2385120日。今日はデータ検索に手間取っていて、19時を過ぎても終らない。他の皆は帰ってしまって、私一人で検索をしていた。その時に、通信が入った。

『はい、「ピオニ-」編集部です。』

『私だよ、ジアル。君一人かい?』通信は、エリムからだった。

『どうしたの?』

『急に逢いたくなってね。今から会えないか?』

『御免なさい、検索に時間が掛かりそうなので、今日は会えないと思うわ。』

『何の検索をしているの?』

『ヴァルカンの伝統工芸についてよ。』

『そう、ちょっと待っていて。後で通信を送るよ。』と言って、エリムは通信を切った。

5分後に、コンピューターに通信が来た。ファイルを開いてみると、ヴァルカンの伝統工芸についての情報が250件も入っていた。

『これで足りるかい?』すぐに、エリムから映像通信が来た。

『ええ、充分よ。でも、どうして?』

『君に会って、話がしたいからだよ。2030時にビルの入り口で待っているからね。』

 急いで身支度をして、ビルを出た。ビルの外では、もうエリムが待っていた。

『どうしたの?』

『その場の衝動で行動するなんて、私の流儀じゃないんだが、どうしても君に逢いたかったんだよ。』歩きながら話して、近くの喫茶店に行く事になった。

『ねえ、ジアル。』注文をして、ウェイトレスが行った後で、エリムは私に話し掛ける。

『昨日は何故か話せなかった事だが、私たちは友達としては長い付き合いだ。しかし、恋人としては始まったばかりだね。これから時間をかけて、お互いを知り合っていこう。』

『そうね、エリム。私も貴方の事を、もっと知りたいわ。』

『来年の今ごろも、こうして話せるといいね。』エリムはこの事を言いたい為に来てくれたようだ。その後は、今日の出来事の話になった。

『ヴァルカノイドの男性には、成人の儀式があるけれど、女性には無いわね。これって、逆の意味の男女差別じゃないかしら?』私が言うと、

『あまり知られていない事だが、ヴァルカノイドの女性にも、成人の儀式が有るんだよ。ヴァルカノイドでは伝統的に、男性は戦士である事を求められ、女性は戦闘指揮者もしくは統治者の資質を求められた。男性には、優秀な戦士である事を証明する為のモク・ファールの儀式が有るが、女性の場合は、ヴァルカンではトゥサイ・ティラ、淑女の試練、ロミュランでは、タリアラン、指導者の試練が課せられる。女性は45歳になった以降に、本人には知らされず、回数も定められずに試験が行われる。そして50歳以降のある時点で、家長に貴女は成人の資質を持っている、一族の一員と認めると告げられるんだ。』

『大変なのね。』

『カーデシアでも、似たような制度が有るんだよ。ガルドランと言ってね、家長は、次期家長にしようと思っている子供が15歳以上になった時に、本人にも教えずに試練を与える。それに合格した子供だけが、次期家長の候補者になれるんだ。君も、ガルドランを受けたはずだよ。』

『そんな事・・・・』と答えたが、思い当たる事が有る。「グローモール」に父と乗艦していた時に、父にダマールからデータファイルを受け取ってくるようにと言われた。しかしダマールは、忙しそうにしていて、取り合ってくれない。

『急いでください。』と頼んだら、『それは命令ですか?』と聞かれた。

『貴方の上官である父に頼まれた事です。私の頼みを聞いてくれないなら、命令違反になりますよ。』と答えたら、

『了解しました。』と言って、ダマールはコンピューターを検索し始めた。なかなか見つからないので、私も手伝った。ファイルは、コンピューターの奥にあるフォルダに入っていた。父にファイルを渡し、遅くなった事を詫びたのだが、『取ってきてくれればいいんだ。』と父は言った。そしてその日は何故か上機嫌で、取っておきのカナールを夕食に開けていた。

『思い当たる事が有るようだね。』

『ええ。でも私には、父の跡を継ぐ資質は無いわ。』

『そんな事は無いよ。君は人の上に立てる人物だと、前から思っていた。』

『冗談でしょう?』

『本当だよ。』とエリムは言うが、真面目な顔で嘘をつく事もある人だから、この言葉は信用していいのかどうか。

 今日は母が待っているので、早めにお開きにした。

『貴方も、ガルドランを受けたの?』帰り道で、エリムに聞いてみる。

『父には随分色々と試練を言いつけられたから、どれがガルドランなのか分からないね。しかし、私は結局合格しなかったようだ。父の跡を継いでいないからね。』

『そう、御免なさい。』悪い事を聞いてしまったと思っていると、

『しかしそれで良かったと、今は思える。父の跡を継いでいたら、私は君を恋人には出来なかったからね。』と、エリムは言ってくれた。

『お父様の後継ぎになるより、私の恋人の方がいいの?』

『勿論だよ。君には本当に感謝している。今の自分も悪くないと思えるようになったからね。』

 家の前でキスを交わして別れた。母と一緒に遅めの夕食を食べて、父に手紙を書いてから、この日記を書いている。出来れば、エリムの言葉通り、来年の今ごろも恋人同士でいられるといいのだが。」


こんな感じでしょうか?


それでは、皆様も良い休日をお過ごしください。