昨日はブログを休んで、
CAD講習会に行っておりました。
自分の理想の部屋を設計致しました。
それでは、少しでも皆様の楽しみになる事を祈りつつ、
「ジアルの日記」をお贈り致します。
「2384年12月17日。
会社に出社したら、いきなり編集長に呼ばれた。
デスクの前に行ってみると、編集長は厳しい顔をしている。
『今日は貴女にクレームがあるのよ、ジアル。』
『何でしょうか?』思い当たる事が、全く無い。
『どうして言ってくれなかったのよ。』と言いながら編集長がデスクの上に出したのは、
「やせっぽちの子猫」の絵本だった。そして、にっこり笑った。
『済みません、何だか恥ずかしくて。でも、店頭に並ぶのは明日の筈ですが。』
『私はロスマリン社に知り合いがいるのよ。いい絵本ね。『ピオニー』でも紹介させて貰うわ。』
『有難う御座います。』
その日の午前中は、ちょっといい気分で仕事が出来た。
記事を書く為の情報集めも、順調に進む。
心の底にはわだかまりがあるが、それが少し軽くなったような感じだ。
昼休みには、みんなが編集長から絵本を借りて、読んでくれた。
評判はなかなか良くて、お子さんのいらっしゃる同僚が、
『子供に買おうかしら。』
と言ってくれたのが嬉しかった。
17時には仕事も終わり、家に帰って夕食を食べてから、テインの家に向かった。
『どちら様ですか?』今日はエリムがインターホンに出てくれる。
『トーラ・ジアルです。』
『ああ、今開けるよ。』
自動ドアが開くと、実に嬉しそうなエリムがいた。
『夕食を持ってきてくれたんだね?』
『ええ、そうよ。今日は貴方だけなの?』
エリムと2人きりになるのは、ちょっと気まずい。
『私もいますよ。』エリムの後から、ミラさんが出てきた。
『エリムに変な事はさせないから、安心して下さい。』
『何を言っているんだ、ミラ。私はカーデシア紳士だよ。』
『お帰りなさい、ミラさん。お身内のご病気は、良くなったのですか?』聞いてみると、
『ええ、峠は越えたみたいだから、帰ってきたのよ。さっき家に着いたばかりなの。
家の人達がお世話になったみたいね。本当に有難う御座いました。』と言われた。
『いいえ、私も楽しかったです。』
『今日は何を持ってきてくれたの?』エリムに聞かれる。
『ベイジョー風のミートパイよ。』
『魚?それとも肉かい?』
『ミートパイと言ったら、お肉じゃないの?』ミラさんが怪訝な顔をする。
『ベイジョー語では、魚のすり身もひき肉も「ミート」と言うんだよ。』エリムが説明した。
『お魚よ。』
『何だか楽しみね。今、オーブンで温めますからね。」
今日はミラさんと一緒に、夕食を作った。
流石にミラさんは、手際よく次々と料理を作っていく。
料理をテーブルに並べると、エリムはほくほく顔で食べ始めた。
『君はカーデシア人の血を引いているから、魚の扱いが上手だね。
それにスパイスの使い方が絶妙だ。』と褒めてくれる。
『母はベイジョー人だけど、お魚料理も上手よ。
貴方が前にお魚料理を食べたレストランが悪かったのよ。』私が反論すると、
『そうかもしれないね。あの頃の私は、
仕事の能率を下げない為にだけ食べていた。レストランの吟味もしなかったよ。』
しんみりした表情で、エリムは言った。
『でも、この3日間は違うよ。食事をするのがとても楽しかった。君が作ってくれたからね。』と付け加える事も、
エリムは忘れなかった。
『私が作ったら、楽しくないの?』と、ミラさんに言われていたが。
楽しく話しながら夕食を終えた後、後片付けをして、お茶を飲んだ。
『ジアル、やはり女性は、料理の出来る男の方が好きなの?』
ミラさんが焼いたばかりのクッキーを食べながら、エリムは私に尋ねる。
『そうね、お料理の出来る男の人の方が、何かあった時に安心だわ。
それに、彼の作ったディナーを食べられるなんて、素敵じゃない?』
『そう?』エリムは気の無い返事をした。
『だから料理を勉強しておきなさいって、小さい貴方に言ったでしょう?』
とミラさんに言われて、エリムは首をすくめていた。
エリム・ガラックといえども、ミラさんには頭が上がらないらしい。
楽しく話して、大分遅くなったので、エリムに送って貰う事になった。
『何か気がかりな事が有るんじゃないか?』暫く歩いた時に、エリムに聞かれる。
『・・・昨日の晩にカーデシアの情報サービスにアクセスして、父の詳しい経歴を見たの。』
『ああ、デュカットの経歴は、君みたいなお嬢さんには目の毒だね。』
『父は任地を変える度に、愛人を作っているのよ。私には本当に愛したのは母だけだって、父は言ったけど・・・・』
『信じられなくなった?』エリムが優しい声で聞いてくれる。
『私は信じたいのよ、でも・・・』
『こんな事はしたくなかったんだが、デュカットの弁護をしなければいけないようだね。』
彼は、通りかかった公園のベンチにハンカチを敷いて、私を座らせてくれた。
そして、自分も私の隣りに座った。
『カーデシア戦士階級の中でも、上級軍人の階級では、
親同士が決めた相手と結婚する。だから、男性も女性も、
愛人を持つ事が公認されているんだ。
デュカットも、前の妻とは顔見知り程度の付き合いで、
妻の父親がデュカットを気に入って、娘を与えて家族の一員にしたんだよ。
そしてデュカットも妻も、お互いに愛人を作っていた。
デュカットは確かにカーデシア人の中でも女好きな方だけど、
彼の育った社会では当たり前の事なんだよ。』
『そうなの?』私はちょっと不満げな声で答えた。
カーデシアの慣習だと言われても、私には納得出来ない。
『しかし、デュカットが愛したのは君の母上だけだというのは、
本当だと思うよ。私が調べた所によると、君の母上と付き合いはじめてから、デ
ュカットは今までの愛人達とは手を切って、それ以降は新しい愛人を作らなかったからね。
デュカットはそれまで、本気で愛せる女性に出会っていなかっただけだと思う。
カイ・ウィンの件は、目的を達する為に近づいただけだから、数に入れてはデュカットが可哀相だよ。』
『貴方は?父と同じで、愛人を作る事は悪い事だと思っていないの?』
私は聞かずにはいられなかった。このままでは、
カーデシア人男性全員が信じられなくなりそうだったからだ。
『私は違うよ。デュカットとは階級が違うからね。』
『えっ?』私は今まで、エリムが父と同じ階級の人間だと思っていた。
『私の父親は、カーデシア上級軍人階級の人間で、
母親は下級軍人階級の出身だった。
幼い頃に上級軍人階級の家庭に引き取られて、
その階級の人間と同じ教育を受けたが、父が認知してくれていないので、
私の正式な階級は、下級軍人階級なんだ。
母の階級では、結婚は自由恋愛の結果としてするもので、浮気は厳禁なんだよ。
私は心情的には上級軍人階級の人間だが、
この点だけは母の階級の慣習に従おうと思っているんだ。』
エリムのこの言葉ほど、私を安心させた言葉は今まで無かった。
私は何も言えずに、エリムに抱きついた。そして、暫くの間時間を忘れた。
『風邪を引いてしまうよ、そろそろ行こうか。』エリムの言葉で、我に返った。
そして無言のまま、手を繋いで家まで歩いた。
『ジアル、私が君より階級が下の人間だと知って、幻滅したかい?』
家の玄関の前で、エリムに聞かれる。
『エリム、私は貴方が好きなの。貴方の階級ではなくて。
それに私だってベイジョーとの混血だから、アウトカーストだわ。』
『そんな事は無いよ、君は立派なレディだ。』と言って、
彼はいつものように額にキスをしてくれた。私が家に入ろうとすると
、いきなり腕をつかんで引き戻され、抱きしめられた。
私が驚いている間に、エリムは私から身体を離して、
『お休み、ジアル。』と言って、少し戸惑ったような表情で帰って行った。
母が言っていた、エリムが怖がっている事とは、この事だったのだろうか?
少し混乱した頭で考えているが、どうも違うような気がする。日記を書き終わった後、
ベッドの中でもう少し考えてみる事にしよう。」
こんな感じでしょうか?
それでは、皆様も良い休日をお過ごしください。