SLUSH-PILE. FESTIVAL 2「共感百景」 草月ホール | ブログ

SLUSH-PILE. FESTIVAL 2「共感百景」
2011年11月12日(土)
OPEN 15:00 / START 15:30
草月ホール
出演者
MC:劇団ひとり
特別顧問:俵万智
詠み手:有野晋哉(よゐこ)、カリカ家城、清水ミチコ、西加奈子、星野源、レイザーラモンRG




10分前に会場に到着し、落ち着く間もなく開演。

劇団ひとりさんの司会のもと、特別顧問に俵万智さん、アシスタントにせきしろさんを迎えて始まった。

各お題に対して1人2本、そのお題に沿った共感する、平たく言うと「あるある」を考え、それを自由律の俳句にする。計6本の中から優秀作品が選ばれ、その中からさらに最優秀作品が決定する。

ちなみに、今年6月に開催された第一回での最優秀賞作品は「東京」をテーマに詠んだ星野源さんの「その名前の劇団は行かねえ」だった。


今回は・・・、

■第一局:お題「トイレ」
清水ミチコ、カリカ家城、レーザーラモンRG

レーザーラモンRG

  昭和五十年代に建てられたビルにある和式トイレ 激流と呼ぶにふさわしい勢いで流れがち

  「あれ?TOTOやINAX以外にもウォシュレット作ってる会社あるんだ…」っていう瞬間ありがち


カリカ家城

  快便のため 独自の呼吸法をフンワリと

  出すぎだ!!僕はそんなに食べてない


清水ミチコ

  大をして はやし立てるの 男子だけ

  本当の金持ちかは トイレの数を聞け


★優秀作品:カリカ家城

  出すぎだ!!僕はそんなに食べてない



■第二局:お題「学校」
有野晋哉(よゐこ)、星野源、カリカ家城

カリカ家城

  花壇のすみで カサカサで死んでいる消しゴム

  こないだまでは 屋上に入れたのに


星野源

  ゲロ スパイラル

  「放送室ジャックか・・・」 じっと手を見る


有野晋哉

  理科室の窓 ヌーブラが貼りついている

  カワイイ転校生など 来はしない


★優秀作品:星野源

   ゲロ スパイラル



■第三局:お題「靴」
西加奈子、清水ミチコ、レーザーラモンRG

レーザーラモンRG

  寿命を終えた靴 ベランダで第二の人生 はじまりがち

  「プーマの靴って、幅せまいんですよ」と 聞いてもいないのに店員いいがち


清水ミチコ

  「忘れてきた」 シンデレラの 計算高さ

  沖縄のタクシードライバー まっとうな会話してたけど裸足


西加奈子

  パーティ会場 スニーカー履いてる奴の大物感

  あいつ、やっぱり  靴とがってた!!!


★優秀作品:清水ミチコ

  「忘れてきた」シンデレラの計算高さ



■第四局:お題「音楽」
西加奈子、有野晋哉(よゐこ)、星野源

星野源

  アーティスト

  チャゲの明るさ


有野晋哉

  アイポッド聞いてるふりして 盗み聞き

  ダンボールに入れたままの シングルCD


西加奈子

  「好きな音楽、何?」という言葉の わずかな緊張感

  「内田裕也より樹木希林の方がロックだよね?」 うるせぇ


★優秀作品:西加奈子

  「内田裕也より樹木希林の方がロックだよね?」うるせぇ



全ての優秀作品の中から選ばれた最優秀作品は、西加奈子さんの、


  「内田裕也より樹木希林の方がロックだよね?」うるせぇ


だった。お客さんも納得の結果だった。



普段からあるあるネタをやっているレーザーラモンRGさんは、深く共感できるが簡単には思いつかなような角度から切り込み、さすがだった。

合間にはテレビでも同じみのあるあるネタ、C-C-Bの「Romanticが止まらない」にのせて「学校あるある」、ワムの「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」にのせてお客さんからお題を募り「アラサーあるある」、中村雅俊の「恋人も濡れる街角」にのせて俵万智さんのリクエストで「サラダあるある」が披露された。「あるある」よりワムの「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」のアカペラでの完成度の高さに毎回ながら爆笑してしまう。バッファロー吾郎・木村さんに次いで、生で見るとテレビの10倍おもしろい人だと思った。



そして、星野源さんもとても魅力的だった。

  「放送室ジャックか・・・」 じっと手を見る

について、俵万智さんが「じっと手を見る」は石川啄木の「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢっと手を見る」からの引用、「本歌取(歌学における和歌の作成技法の1つで、有名な古歌(本歌)の1句もしくは2句を自作に取り入れて作歌を行う方法。主に本歌を背景として用いることで奥行きを与えて表現効果の重層化を図る際に用いる。)」という技法があると解説。偶然の一致にも関わらずすかさず星野源さんは「本歌取です」と答えたが、偶然だったらさらにすごいということになり「偶然です」と言い直した。


  アーティスト

とだけで表現し、「ミュージシャンがアーティストといつの間にか言われるようになったがアーティスト(=芸術家)ではない」という思いを伝えたかったこの作品は、会場では反応が薄かったが、個人的には「アーティスト」だけで何が言いたいかが分かった。俵万智さんに「“いつから”を付けると良い」とアドバイスを受けた星野源さんの手元には「いつから アーティスト」と書いた作品もあり、悩んだ挙句「アーティスト」を出したという事実からも、やはりミュージシャンとして歌詞を書いており、「歌人」と通ずるものがあるのだと思った。



やはり、今回、全く知らなかった西加奈子さんのおもしろさにぐっと心を掴まれた。西加奈子さんの作品4つともが全ておもしろく、そして「ひねくれ」「ひがみ」「ねたみ」「そねみ」といった共通点が4つ全ての作品あったように見てとれた。字体も勝因の一つだったと思う。
最後に西加奈子さんに対して有野晋哉さんが言い放った「仲良くなったら陰口言われそう」という言葉が、彼女の人間性を的確に表していた。



そしてなんといっても、俵万智さんの解説が一々素晴らしく、それがおもしろさを後押していた。「お笑い」を「歌人」が淡々と解説する様はどこか可笑しかった。

イベント冒頭での「詩を詠むとは名もない石ころに名前をつけるようなもの」、「30文字で30文字分の内容だったらそれは電報。30文字で100文字、1000文字の内容を伝えるのが詩。」この言葉を聞き、一気にこの人に引き込まれた。

博の無い自分は、「俵万智」と聞いてもピンとこなかったが、「サラダ記念日」はピンときた。

  「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

今回この詩の裏話がイベント中に聞けた。実際は、唐揚げを作って喜ばれた時に感じた嬉しさを詩にしようとしたのが発端だったらしく、その時の感覚をできるだけ正確に伝えるには唐揚げでなくサラダの方が人に伝わりやすいのではないかという細かいニュアンスを考えてサラダを選んだとのこと。サラダの方が、爽やかなイメージ、そしてサ行の発音も爽やかな耳心地ということも計算されている。日付も、実際は5月の出来事だったが、サラダのおいしい季節である初夏、そして7月7日の七夕ではあまりにも芸が無いので1日前を選んだ。

歌人が創り出した作品は、一見、パッと思い浮かんだことを詩にしているように思いがちだが、そこには細かい計算があったことに驚いた。

先日放送されていたフジテレビ「僕らの時代」に出演された詩人の谷川俊太郎さんも「毎日推敲している。(推敲・・・詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすこと)」と言っていたことからも、作品が「作りこまれて」できあがっていることを知った。



先々月の「スタモン」しか見たことがないから何とも言えないけど、SLUSH-PILEのイベントは芸人さん以外の魅力がすごく引き出される。前回の吉木りささん、浜野謙太さんといい、今回の西加奈子さん、星野源さんといい、おもしろかった。SAKEROCKは恐るべし。


「日本語って難しいな・・・」って感じることがここ最近あったのだが、このイベントでは「日本語っておもしろい!」と感じた。特にこういった「自由律俳句」はおもしろい。TBSラジオ「小島慶子 キラキラ」で又吉直樹(ピース)さんが紹介していたせきしろさんとの共作である自由律俳句集「まさかジープで来るとは」もおもしろかった。自由律俳句の著名な俳人である尾崎放哉や種田山頭火などの作品も読んでみたい。その本の1ページ1ページも、「共感百景」での詩が書かれた色紙も、言葉で意味を感じ、そして余白で想像、そこに広がる風景を感じることができる。言葉にも余白にも無駄は無い。




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