デンソーが史上3チーム目の3連覇!
    前半に勝負をかけ、大会新で圧勝!


 女子駅伝の日本一を競う大会である。
 今回から予選会が一本化されて22チームによって覇を競う大会となった。3連覇をねらうデンソーを中心に予選会トップ通過のユニバーサルエンタテイメント、さらには主力が育ちつつあるヤマダ電機、前回2位のダイハツが激戦をくりひろげるものとみていた。
 だが、前日に発表された区間エントリーを見たとき、そんな構図はもろくもくずれてしまった。
 ユニバはマスコミも今回の注目選手にあげている鷲見梓沙の名前がないではないか。ならば大駒一枚を欠いたことになり、大幅な戦力ダウンで、これでは優勝争いはかなり苦しくなる。
 ダイハツは二枚看板のひとりであり、日本長距離とっても若手のエースというべき前田彩里が補欠にまわっている。これでは上位争いすらきびしくなるは必定である。
 さらに今回は万全で優勝争いにからんでくると思われたヤマダ電機だが、オーダーの組み方がなにやらすっきりしない。1区のランナーとして適性抜群の森唯我が6区にまわり、競るとあまり強くない竹地志帆が5区ではなくて、なんと1区に起用されているではないか。選手のコンディションにまぎれがあってのことだろうが、そのようにみればハナから戦力低下は歴戦としていたのである。
 よって今回の場合、レースのスタート以前にデンソーが一歩も二歩も優位に立ってしまっていたのである。

 昨年は雪のなかという厳しい気象条件のもとでのレースだったが、今年は気温も7.5度で途中から雨になったものの、ランナーにとってはむしろ好条件となった。大会新が続出したのはそのせいだろう。

 注目の1区(7㎞)は1㎞の入りが3:11とかなりのハイペース、主導権を握っていたのはデンソーの光延友希であった。ダイハツ・坂井田歩、豊田自動織機・山本菜緒、ヤマダ電機・竹地史帆、積水化学・松崎璃子らがつづく大集団。2㎞を過ぎると、昨年と同じようにホクレンの宮内宏子が先頭で引っ張るころから、集団はすこしづつくずれ、日本郵政グループ・柴田千歳、ワコール・右田愛、ユニクロ・林田玲奈、シスメックス・東村茜が早くも遅れはじめる。
 5㎞をすぎてデンソー・光延がペースアップすると集団はさらにばらけて、九電工・横石悠貴、ルートインホテルズ・渡久地利佳らがこぼれていった。
 6㎞を光延がトップで通過、ユニバーサルエンターテインメント・後藤奈津子がつづき、ダイハツ・坂井田歩が3位集団から脱け出して迫ってきた。ラストスパート合戦で3人がはげしく区間賞を争ったが、最後はダイハツの坂井田がわずかに先んじた。
 
 皮肉にも1区は優勝はむずかしかろうとみたダイハツがトップ、1秒遅れで2位はデンソー、2秒遅れで3位はユニバーサル、4位は積水化学で8秒遅れ、同じく8秒遅れで5位はヤマダ電機とつづいたが、シード組の豊田自動織機は23秒遅れの13位、九電工は32秒遅れの14位,第一生命は33秒遅れの15位とやや出遅れた。

 2区(3.9㎞)に入っての激しい首位争いは見応えがあった。デンソー・小泉直子、ユニバーサル・木村友香、ダイハツ・竹本香奈子がひとかたまりになってせめぎあうなか、豊田自動織機の福田有以が一気に背後に迫ってくる……。だが最後に競り勝ったのはデンソーの小泉直子、2位のユニバーサルに14秒差をつけ、ここでトップに立ったのである。デンソーの2区での奪首は想定通りだったのだろう。3区の高島由香を気分よく走らせてしまった。

 3区(10㎞)のエース区間は、まさに今回のレースの勢力分布を象徴するような展開になった。デンソー・高島由香がゆゆうとトップを独走、後続との差をひろげるなかで、シード権争いもふくめて、後ろで熾烈な順に争いがくりひろげられた。
 5㎞をすぎてデンソーを追うのはダイハツ・松田瑞生とユニバーサルの永尾薫、さらに4位集団はヤマダ電機・西原加純を中心に積水化学の桑原彩、豊田自動織機の沼田未知、パナソニックの山崎里菜、さらに天満屋・小原怜、九電工・加藤岬、第一生命・上原美幸が集団で追うという展開、集団がばらけ、順位がめまぐるしく変転するというありさまだった。さらに、はるか後ろからは、JP日本郵政グループの注目のランナー・鈴木亜由子が順位をあげてくる。
 6.5㎞になって、ダイハツ・松田がユニバーサルの永尾を引き離して単独2位にあがるも、後続がひたひたと迫ってくる。7㎞になると4位集団6チームが3位のユニバーサル・永尾を吸収してしまうのである。2位争いの混戦から脱け出したのはヤマダ電機の西原である。9.5㎞すぎで西原は・松田を抜いて2位に浮上、世界選手権代表の力をみせつけたというべきか。
 デンソー高島は後続を40秒ちぎってゆうゆうのトップ、3連覇への道筋をしっかりとひらいた。自身の34:30も区間新記録。2位にはヤマダ電機、3位は1:02秒遅れで第一生命、14位から順位をあげてきた。4位には1:03秒遅れで九電工だが、これも12位から一気に上昇してきた。
 2区まで上位争いを演じてきたユニバは9つ順位を下げて1分31秒差の11位、ダイハツも4つ順位をさげてしまった。
 高島の区間1位は額面通りの結果だが、区間2位、3位、4位にとびこんだ第一生命の上原美幸、九電工の加藤岬、ホクレンの清水美穂は、鈴木亜由子や西原加純、小原怜などを上まわったのだから大健闘だといえる。
 4区(3.6㎞)の外国人特区では、さすがにケニア人7人が区間上位を占めた。デンソーの1位はゆるがず、九電工がK.S.チェピエゴの区間1位の快走で2位まで押し上げ、3区で順位を落とした豊田自動織機もA.カリンジで4位に浮上、ユニバーサルもF.ワンジュグで3位まで押し上げてきた。
 逆にヤマダ電機は1:35遅れの8位まで後退、せっかくエースで2位まで押し上げても、すぐに順位をさげるというちぐはぐなありさまで勢いが付かないまま5区に突入してゆく。
 5区になると雨が降り出した。デンソーは水口侑子、それほどピッチがあがらず、もたもたしていた。それでも後続との差がそれほど詰まらなかったのは、猫の目のように2位がいれかわるなど追うチームに勢いがつかないからである。
 5区では豊田自動織機が4位から押し上げてくる。横江里沙の走りが眼を惹いた。3位位グループをなしてのユニバーサル・和久夢来とのせめぎあいはなかなか面白かった。横江は和久を競りつぶし、7㎞すぎでは、これも期待の若手のひとりである九電工の宮崎悠香を抜き去り2位までやってきたのである。
 5区を終わってデンソーと2位の豊田自動織機との差は38秒、最終6区の距離は6.795㎞だから、追えない距離でもないが、もはやデンソーに傾いていた流れはとまらない。デンソーのアンカー・橋本奈海は独走ながら、区間1位で後続をさらにひきはなして、3連覇のゴールにとびこんでいったのである。

 デンソーはワコール、三井住友海上につづく3チーム目の3連覇達成である。前半勝負のオーダーで、もくろみに何のくるいもなかった。区間賞3つで大会新記録の圧勝であった。駅伝というものは抜かれた終わりである。このチームのランナーは駅伝の勝ち方というものをよく知っているようだ。
 2位の豊田自動織機は若い選手たちのチームながら、大健闘だった。なかでも5区・横江里沙の区間賞が光っている。
 3位にはユニバーサルエンターテイメントが来た。3区ではひとたび11位まで後退しながら盛り返してきた。地力のある証拠とみた。大駒1枚を欠いたのが惜しまれる。
 4位のヤマダ電機はどうもチグハグで波の荒いレースぶりだった。3区では2位まであがりりながら、4区では8位まで下落、5区と6区でよううやく4位までやってきた。流れに乗れなかったのはオーダーミスか?
 惜しかったのは7位の九電工である。前半は健闘して4区を終わって2位、5区でも3位につけていた。十分に目標としていた3位はありえた展開だった。
 注目のシード権争いは天満屋が競り勝った。天満屋も前半から後ろに置いてゆかれて低迷していたが、5区と6区でなんとか面目を保った。
 候補の一角にもあげられていたダイハツは最終13位に終わった。2本柱のひとり・前田彩里を欠いたうえに、頼みの木﨑良子も不発に終わってはいたしかたなかろう。
 
 それにしても7位の九電工までが大会新記録である。おそらく気象条件にめぐまれたせいだろう。
 デンソーが3連覇で一時代を築いた感があるが、女子駅伝もいまは大きく潮目が変わりつつあるのは確かなようだ。ワコールの福士加代子、三井住友海上の渋井陽子、ダイハツの木崎良子、ノーリツの小崎まり(今回補欠)、ユニバーサルの那須川瑞穂(今回補欠)の時代は終わった。けれども、まだ彼女たちがかってのビッグネームがエントリーに名を連ねている。それはまだ彼女たちを蹴散らす新勢力が育ちきっていないからである。
 リオはもう間に合わないが、東京オリンピックなんとか圧倒的な存在感のある新しい勢力が出てきてほしいものである。


◇ 日時:2015年12月13日(日)午後12時15分スタート
◇ 場所:宮城県仙台市
◇ コース:松島町文化観光交流観前(スタート)→仙台陸上競技場(フィニッシュ)6区間計42.195㎞。
◇ 天気:くもり 気温:7.5度  湿度:  風:北 2.9m
◇デンソー(光延友希、小泉直子、高島由香、S・ワイリム、水口侑子、橋本奈海)
◇詳しい結果 http://home.m07.itscom.net/jita/woman_ekiden/pdf/w34_12.pdf

◇公式サイト 
http://www.tbs.co.jp/ekiden/