愛知が15年ぶり2度目の制覇!
同一年のアベックVは史上初の快挙!


1月1日、群馬の前橋……。
ニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)で、満面に笑みをたたえ、ゴールテープを切ったランナーの姿、まだ誰しも記憶に新しいだろう。
山本修平、入社1年目ながらトヨタ自動車のアンカーをつとめ、区間2位でトヨタ連覇の原動力となった。
今大会では愛知のユニフォーム、やはりアンカーで登場、いままさにノッているランナーの勢いそのままに、優勝候補の呼び声高かった埼玉、広島の追撃をみごとにふりきった。
ゴールするときの笑顔、あれッ、どこかで観たぞ、と、己が記憶をさぐると、それが20数日前のニューイヤー駅伝だったのである。

愛知といえば、ほんの1週間前、全国女子駅伝で歴史ののこる逆転劇を演じて初優勝した。愛知は奇しくも男女とも都道府県対抗駅伝の覇者とのなった。同一年に男女そろってのアベックVはむろん史上初の快挙である。
まさに奇遇というべきか。


奇遇といえば、もうひとつある。
アンカーとしてゴールテープを切った山本修平と鈴木亜由子(日本郵政グループ)は時習館高校で同級生だったという。奇しくも実業団にすすんだ時習館コンビが愛知に栄冠をもたらしたのである。
時習館高校は、旧制・豊橋中学、県内で屈指の進学校だという。同校HPによると、20国公立大学合格者も多い。鈴木亜由子は、現役で名古屋大学経済学部に合格。中学時代から将来を嘱望されていたが、高校時代はケガガ多く目立った成績は残していない。いまや女子長距離のトップにあるが、ランナーとしての才能が開花したのは名大にすすんでからである。
山本修平は1年の浪人生活を経て念願の早稲田大学に進んでいる。だが、浪人中も2010年には1500m3分52秒46、5000m14分09秒01、1万m28分38秒15の自己新(高校時代のベストは3分53秒51=2009年、14分12秒92=2009年)で走っているというから、ランナーとして非凡なものを秘めていた。早稲田では1年から箱根の山登りに起用され、4年では駅伝部の主将をつとめている。
実業団選手としてルーキーの年に2つの駅伝で優勝のゴールテープを切った。オリンピックイヤーだけに、ひとつの弾みになるのではないか。


おりから広島の北部は大雪で、開催を危ぶんでいたが、瀬戸内海寄りはそれほどでもなかったたようだが、路面凍結のせいか、転倒する選手たちが4人もあって、選手たちは吹雪と強風に悩まされたようである。

高校生区間の第1区はハイペースで幕あけた。
1=2:51は昨年より6秒早かった。先頭集団をひっぱるのは群馬の横川巧(中之条高)と千葉の鈴木塁人(流通経大付柏高)ら。優勝候補の一角・広島の中島大就(世羅高)、埼玉の館澤亨次、京都の阪口竜平(洛南高)らもついている。
中間点通過が10:08、このころから粉雪が舞いはじめ、4㎞では先頭集団はおよそ15人だった。5㎞で福島の遠藤日向(学法石川高)がトップに出てきたが、6㎞で群馬の横川がペースアップ、だが集団はばらけない。すると福岡・鬼塚翔太(大牟田高)がトップに立ち最後のせめぎあいがはじめる。京都の坂口竜平(洛南高)、福岡の鬼塚ががかわるがわる先頭に立つのだが決め手がなく、集団を割るにはいたらない。
残り400で、群馬の横川がとびだし、福岡の鬼塚、福島の遠藤とのすさまじいスパート合戦。最後の最後で遠藤がトップでとびこんでいった。
2位は福岡で1秒差、3秒差で群馬、7秒差で三重、8秒差で京都、候補の埼玉は9秒差の6位に付けたが、広島は12秒差の11位、愛知は15秒差の14位であった。


中学生区間の2区(3㎞)で快走したのは、3位でタスキをうけたは群馬の大澤佑介(広沢中)だった。前をゆく福岡の下迫田衛(守恒中)、福島の中澤雄大(石川中)をとらえ、2㎞でトップに立ち、そのまま最後まで突っ走った。2位は10秒差で福島、あとは広島、長野、静岡、埼玉と続いた。埼玉はトップから23秒遅れ、愛知は8位で26秒差だった。
エース区間の3区(8.5㎞)は優勝するには第一関門というべきか。一般・大学生のエースランナーが顔をそろえるこの区間は、いちばんの見どころである。
1区と2区で好発進の群馬は大学1年の塩尻和也(順天堂大)、小雪が舞うなかひたすら逃げた。一時は2位集団との差が22秒までにひろがったが、後ろは名うてのランナーたちで、そうはうまく逃げさせてはくれない



広島の北魁道(中国電力)、静岡の木村慎(明治大)、福島の住吉秀昭(国士舘大)の2位集団に埼玉の設楽啓太(コニカミノルタ)、長野の春日千速(東海大学)、愛知の田中秀幸)、福岡の高井和浩(九電工)も追いつき、7人による2位集団となる。
5㎞ではトップの群馬と2位集団との差は19秒と詰まり、6㎞では16秒となる。7㎞をすぎて静岡、福島、長野が2位集団からこぼれ、広島、埼玉、愛知、福岡が群馬を猛然と追った。
群馬の塩尻はなんとかトップをまもったが、2位には田中秀幸の区間賞で愛知がやってきて6秒差、3位は広島で7秒差、4位は埼玉で8秒差と候補の三チームのそろいぶみとなって、勝負どころの4区から5区の高校生区間でタスキが渡ったのである。


4区(5㎞)は大激戦だった。
群馬の千明龍之佑(東京農大二高)に、広島の植村拓未(世羅高)、埼玉の三井貴久(埼玉栄高)、愛知の三輪軌道(愛知高)、福岡の米満怜(大牟田高)がひたひたと迫ってくる。そしてとうとう1.5㎞で2位集団はトップの群馬をとらえてしまうのである。
激しいつばぜり合いの変化が生じたのは4㎞あたり、満を持していた愛知の三輪がスパート、埼玉の三井、福岡の米満はくらいついたが、広島の植村、群馬の千明が置いて行かれたのである。
3区の勢いそのままに愛知が奪首に成功。埼玉が6秒差、福岡が11秒差でつづき、広島は17秒差の4位に後退した。
4区(8.5㎞)は好リズムにのった愛知に対し、2位に浮上した埼玉と広島がチャレンジする構図だったが、愛知の勢いがとまらない。。
ゆうゆう快調にトップをゆく青木祐人(愛知高)、広島の吉田圭太(世羅高)は4㎞で埼玉の埼玉の中村大聖(埼玉栄高)をとらえ2位まで浮上、だが全国高校駅伝1区区間賞、の長野の關颯人(佐久長聖高)が後ろから猛追してくる。かろうじて2位をまもりはしたが、タイム的には愛知に24秒とひろげられ、逆転の狼煙をあげるまでにいたらなかった。後になって考えてみると、この4区が勝敗の分かれ目になったとみる。


愛知は6区(3㎞)の中学生もうまく繋いで、2位広島との差を28秒とひろげ、アンカーの山本修平にタスキをつないだのである。連覇をねらっていた埼玉は5区の失速を6区の中学生・関口雄大(埼玉/桜中)が区間賞の走りで3位まで押し上げてきたが、トップとは44秒差、アンカーの力関係からみて、かなり苦しいところに追い込まれてしまった。
優勝争いは逃げる愛知の山本修平、追うは広島の工藤有生(駒澤大)だが、力関係からみて逆転はのぞむべくもない。3位の埼玉は服部翔大(ホンダ)との差は前述のように44秒もあるうえに、今シーズンの服部はいまひとつ調子はあがっていない。事実、本レースでも、ひとたび長野の矢野圭吾(日清食品)、さらには後ろから急追してきた佐藤悠基(日清食品)にとらえられる始末で、首位を追うどころか3位をまもるのに精一杯だった。
かくして山本修平はニューイヤー駅伝のときほどのデキではなかったものの、やすやすと逃げ切ってしまったのである。


愛知は15年ぶり2度目の制覇である。1区、2区の前半はつまずいたものの僅差でしのぎ、3区の田中秀幸の区間賞で圏内の2位まで浮上、愛知高校の2人がしっかりと優勝への流れをつくった。
2位の広島も1区では出遅れたが、以降は堅実に上位をキープ、最後まで優勝争いにからんでいた。アンカーが鎧坂哲哉が出てきていたら、あるいは逆転があったかもしれない。
連覇をもくろんだ埼玉は3位に終わった。優勝した愛知、広島より好発進し、4区までは優勝争いにきわどくからんでいた。だが後半は失速した。高校生、一般ともに少しバランスがよくなかったようである。
4位の静岡はアンカーの佐藤悠基で一気に4位までやってきたが、前半からつねに入賞圏内につけていた土台があってのもの、その闘いぶりにはみるべきものがあった。
5位は長野、6位は福島、7位は群馬、8位は福岡、ここまでが入賞である。5位の長野は5区の關颯人(佐久長聖高)の快走が光っている。全国高校駅伝の1区で区間賞、今レースでも持てる力を発揮した。福島は1区でトップを奪うなど高校生の活躍が光った。7位の群馬は1区、2区の高校生、中学生の活躍で3区まではトップに立っていた。福岡は最終区で8位に順位を落としたが、3区以降はつねに5位以内をキープして、地力のあるところをみせていた。


今シーズンの時評もこれで最後だから、ひとつ不満点をあげておこう。全国女子駅伝もそうだったが、全国男子駅伝でも解説者に増田明美が登場しなかったこと。どうやらNHKは増田が嫌いらしい。(笑)もしかしたら、女子マラソンの代表選手選考をめぐって「これでいいんでしょうか?」と異議を唱えた例のバトルで、陸連から圧力がかかっているせいなのかも……。(笑)
ぼくたちファンがレースに登場するランナーを注目し、追っかけてみようとファンになるのは、そのランナーの人間としての個性であり、人間としての魅力に惹かれるからである。サッカーでも野球でもテニスでもラグビーでも同じだろう。ファンはその選手の人間としてのドラマに心を寄せ、ファンになるのである。
増田明美はそこのところをきっちりフォローしてくれる。彼女は足でかせいだ綿密な取材にもとずいて、選手個人の人間としての魅力をミニ情報としてエピソードで語ってくれるのだ。ファンのパーソナルインタレストを引き出し、「ああ、そういうランナーなのか。ならば注目してみよう」という気にさせてくれる。瀬古俊彦や小出義雄など、いいかげんで場当たり的なおしゃべりでなく、個の選手によりそったユニークな解説者なのである。
それはともかく男子は金哲彦、女子は増田明美、今シーズンもベスト解説者の座はゆるぎなかったようである。


◇日時 2016年01月23日(日)12時30分スタート
◇場所 広島市
◇コース 広島・平和記念公園発着/JR前空駅東折り返し、7区間48Km
◇天候:くもり 気温:01.5度 湿度:62% 風:南東6.3m(スタート)
◇愛知(長谷川令、大上颯麻、田中秀幸、三輪軌道、青木祐人、葛西潤、山本修平)
◇公式サイト:
http://www.hiroshima-ekiden.com/index.html
◇総合成績:http://www.hiroshima-ekiden.com/information/pdf/21st/21st_seiseki.pdf

◇NHKロードレース:http://www1.nhk.or.jp/rr/race04/index4.html
◇区間記録:http://www1.nhk.or.jp/rr/race04/record/divrank.html


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愛知が悲願の初制覇!
最終区のエースで世紀の大逆転!


駅伝は何が起こるかわからない!
話だけでなく、それを実証するような、歴史的な逆転劇が、女子駅伝の今シーズン・オーラスでまさまざと見せつけられるとは夢にも思わなかった。

今シーズンは大混戦になろうことは衆目のみるところだった。オーダーリストにざっと眼を通して、観戦の目玉は愛知の鈴木亜由子であろうとみていた。現在の女子長距離では最速ランナーであり、まちがいなしにリオ五輪の代表になる。彼女を活かせる展開になれば愛知に分がある。16日の記事のコメントでも触れた通りである。
誰が演出したわけではあるまい。たとえヤラセの台本があったとしても、こうはうまくゆくまい。民放のTV中継ならば、局側が泣いて喜びそうな、まさにお誂え向きの展開が最後の最後にやってきたのである。

最終の第9区(最長の10㎞区間)
レースがにわかに修羅場と化したのは、西大路通りから五条通りにさしかかったあたりからである。そこからゴールのある西京極競技場までは、もう一本道である。距離にして2㎞あまりというところ……。第一放送車がとらえた映像によると、トップをゆくのは地元・京都の奥野有紀子(資生堂)だが、その背後に愛知の鈴木亜由子(日本郵政)が影のごとく迫っていた。黒のユニフォームにオレンジ色の「愛知」、さらにゼッケンの22という赤い文字が読みとれる。その直後に兵庫の竹地志帆(ヤマダ電機)と西原加純(ヤマダ電機)の姿もくっきりとみえている。
鈴木の走りは軽やかに空を翔ぶかのようで、どこか重苦しい奥野の走りとは好対照で、もはや勢いの差は較べるべくもなかった。……。

最終区9区の中継所でトップをゆく京都と4位の愛知との差は1:37もの差があった。トップは京都、2位は兵庫でトップから1:13、3位は群馬で1:16である。京都は1区から終始レースの主導権を握ってきた。そういうレースの流れからみても、アンカーのランナーたちの力関係からみても、もはや京都の優位は動かしがたいと思われた。
だが、逆に1分あまりの貯金が裏目になったのか。京都の奥野の走りは重かった。後ろからは兵庫の竹地と群馬の西原という仏教大時代の僚友であり、ヤマダ電機でも同僚でもある二人が2位集団で追っかけはじめ、さらに後ろから愛知の鈴木がひたひたと迫ってくる。
中間点では京都と兵庫・群馬の2位集団とは35秒差、4位の愛知とは53秒差……。まだこの時点では京都・奥野が逃げ切れるのではないかとみていた。
後続の動きに変化が生じたのは6㎞すぎ。好調・竹地が西原を引き離して単独で2位に浮上、トップの奥野に28秒差まで迫った。遅れた西原を4位の鈴木が追ってきた。鈴木と西原という女子長距離界のビッグ2によるせめぎ合いもみどころがあった。
だが勢いは追ってきた愛知・鈴木にあり、6.9㎞で群馬・西原を置き去りにして単独3位に浮上。2位の兵庫も京都を追い、7㎞ではわずか18秒になってしまう。
鈴木の勢いはとまらず五条通りにはいって、さらにギアアップ、8㎞では2位の竹地をとらえて、京都の背後に迫ってきたのである。
そして……。
8.3㎞、阪急電車のガード下の手前あたりで、鈴木はとうとうトップをゆく京都・奥野をとらえ、ならぶまのなく抜き去ってしまった。よもやの逆転劇である。


トップで競技場にあらわれた鈴木は、軽やかにグラウンドを一周、その横顔には満足そうな表情がこぼれていた。黒い手袋の指を一本立て、ゴールするときの笑顔、実にさわやかに輝いていた。


鈴木の愛知は1区で出遅れ、2区から8区まで、京都に離される一方で、いちどもタイム差が詰まらなかった。駅伝は流れというものが大切だが、アンカーの鈴木がひとりで京都に傾きかけていた流れを断ち切ったのである。1:37というタイム差よりも、そういう負の流れを最終の一区間であっさり陽転させてしまった。そういう意味で、これはまさに歴史的な驚異の逆転劇というべきだろう。


レースのイニシャティブは終始、地元・京都の手中にあった。
エースのそろう第1区、47チームがいっせいに西京極競技場をとびだしてゆく。いつもながら壮観だった。
1㎞通過が3:12、大集団で五条通りを東へ、そして西大路通りを北へと向かう。岡山の小原怜、兵庫の田中希実あたりが引っ張って、中間点は9:40……。ペースがあがったのは4.5㎞あたりから、先頭には山梨・島田美穂(山梨学院大付高)、京都の菅野七虹(立命館大)、新潟の小泉直子(デンソー)、兵庫の田中希実(西脇工高)、埼玉の阿部友香里(しまむら)などがみえかくれするも、ここで大阪の坂井田歩(ダイハツ)、岡山の小原怜(天満屋)、愛知の荘司麻衣(中京大)が速くも遅れはじめる。
トップ集団が割れたのは残り1㎞だった。山梨の島田がトップに立つも、静岡の安藤友香(スズキ浜松AC)がスパート、そのまま中継所にとびこんでいった。安藤は昨年につづく区間賞である。2位以下は埼玉、福岡、山梨、新潟、京都、広島、千葉、北海道、沖縄とつづいた。
トップから10位沖縄までは13秒、愛知は26秒遅れの20位、群馬は29秒遅れの23位、昨年の覇者・大阪も26秒遅れの21位と出遅れた。

金閣寺の横をするぬける2区に入ると京都の安藤富貴子(立命館宇治)が地元の利を活かして圧巻の走り、700mでトップをゆく静岡をとらえてトップを奪った。3㎞では独走状態となり、後ろは静岡、千葉、神奈川、福岡、広島といったところが集団となってつづいていた。
京都御所にそって走る3区は中学生区間だが、ここでも全日本中学駅伝を制した桂中学の主力をならべる京都は強い。京都・曽根野乃花はひとたび静岡、福岡に追われる局面もあったが、後半 これを突き放した。候補の一角・兵庫は6位まであがってきたが、群馬は10位、愛知は9位て、京都は完全にリズムにのった。

4区にはいると京都の関紅葉(立命館大)が後続をちぎったが、19秒差で6位につけていた兵庫の太田琴菜(立命館大)が追いあげてくる。全日本大学女子駅伝を制した立命館の主力同士の対決、こんな風景がみられるのも本大会のおもしろいころだ。
3㎞で関の背後に迫った太田、先輩の貫禄をみせつけるように3.7㎞で粘る関を抜いて、トップでタスキリレー、1秒差で関がつづいた。
宝ヶ池に向かう5区にはいると、こんどは京都が巻き返しを謀る。真部亜樹(立命館宇治)は800mの地点で早くも兵庫の井上藍をとらえてトップを奪い返した。さらに残り1㎞では下り坂を一気に駆け下りて兵庫との差をぐんぐんひろげた。真部の区間賞の走りで、京都は再び好リズムを呼び込んだ。2位は兵庫で15秒差、群馬は51秒遅れの5位、そして愛知はようやく11位までやってきたが、トップの京都唐は1:02も遅れていた。
京都は6区でも片山弓華(立命館宇治)が軽快な走りで快走、後続をちぎりってリードをひろげた。兵庫との差は27秒、愛知は吉川侑美(資生堂)でようやく5位までやってきたが、京都との差は逆に1:08とひろがってしまった。
7区では京都の和田優香里(立命館大)が安定感のある走りで、後続との差をぐんぐんひろげた。京都は大会新記録を上まわるペース、兵庫との差は40秒とひろがり独走状態となった。和田自身も区間賞である。
さらに京都は8区の中学生・村尾綾香(桂中)が区間タイ記録で駈け抜け、2位・兵庫との差を1:12とひろげ、3位・群馬とは1:16、愛知はようやく4位まで順位をこそあげたが、タイム的には1:37とひろがってしまったのである。
そんなレースの流れからみて、もはや京都の圧勝と思われた。まさか舞台が暗転するとは考えづらい展開だったのである。……。

愛知の制覇はアンカーの鈴木亜由子を活かす展開にもちこめたこと。それにつきるだろう。スタートで出遅れ、5区を終わっても11位に甘んじていた。区間賞がひとつもないというのも珍しい。逆に区間賞がひとつもなくても優勝できるといことを事実をもって実証してみせた。
逆転の立役者・鈴木亜由子でさえ区間2位で、区間1位は後方でレースをしていた同じ日本郵政のチームメート・東京の関根花観にうばわれたのは皮肉な巡りあわせというべきか。だが二人は競り合っていたわけではないから優劣はつけられまい。

2位の兵庫は惜しかった。4区の太田でリズムアップ、優勝争いにはげしく肉薄した戦いにみるべきものがあった。
3位の群馬は前半の出遅れが惜しまれる。実業団の強豪・ヤマダ電機をもち、高校生も強い。いまや優勝争いの常連になりつつある。
4位の京都は昨年につづき、今年もトリックスターを演じるハメになった。ほぼ手中にしていた優勝が最終区1区間でこぼれていった。高校生(立命館宇治)、中学生(桂中学)、大学生(立命館大)が、ほぼ完璧なレースぶりをみせた。昨年と同じく、やはりコマが一枚足りなかったとみるべきだろう。
かりに今回控えにまわった森唯我(ヤマダ電機)を1区に起用して、菅野七虹をアンカーに回していたら、おそらく圧勝していたのではないか。けれども寄せ集めのチーム編成ゆえに、選手を借りてきた事情もあるだろうから、そうもゆかなかったのかな。
昨年優勝の大阪は前半で大きく出遅れ、12位におわった。昨年にくらべて大幅に戦力ダウンしているからしかたがないだろう。

今回は最後の最後まで眼放しできなかった。終始、伯仲したレースがくるひろげられ、観戦するレースとしては今シーズンのなかでも文句なしにナンバー・ワンであった。
各チームの関係者からすれば、胃の痛くなるようなレースだったろうが、観る側とすれば、これほどおもしろく、興趣つきないもはほかにみあたらないのである。
本大会は中学生・高校生にとってはあこがれの大会である。トッププランナーとともに走り、直にふれあえる唯一の大会である。大学生もふくめてジュニアのランナーたちは、それぞれ強烈な刺激を受けたはずである。四年後の東京オリンピックのマラソン・長距離代表は、まちがいなく本大会の出場者のなかから出ることだろう。



◇ 日時 2011年01月17日(日)12時30分スタート
◇ 場所 京都市
◇ コース 西京極競技場発着 宝ヶ池国際会議場前折り返し9区間49.195Km
◇ 天候:晴れ 気温:10.0度 湿度:40% 風:南東0.4m
◇ 愛知(荘司麻衣、川口桃佳、市原和佳、鈴木純菜、小倉久美、吉川侑美、向井智香、細井衿菜、鈴木亜由子)
◇公式サイト:
http://www.womens-ekiden.jp/
◇詳しい成績:
http://www.womens-ekiden.jp/pdf/result34.pdf
◇京都新聞・号外:
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/rensai/gougai/pdf/20160117164647K9Q8R0JE5U.pdf

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青山学院大が圧勝の2連覇!
いちども首位をゆずらず逃げきった!


箱根駅伝はTVと結びついて、ますます巨大化しつつある。
今大会の視聴率(番組平均世帯視聴率=関東)は、なんと往路28.0%、復路27.8%である。とてつもなく人気が高まっている。
みんなエアコンのよく効いた室でソファーに背を預け、ビールでも飲りながら、テレビを観ているのだ。「遅いじゃないか。1㎞3分を切らないと、ダメだよ」なんて叫んでいる。誰も彼もが監督やコーチになったつもりなのだ。そんな輩はストップウォッチをもって外に飛び出して、いちど走ってみるといい。そうすれば1㎞=3分というものが、どれだけ速いかが身にしみて分かるだろう。大会に出てくるような選手たちはすでにして、みんな走りのプロなのである。
なんどか箱根駅伝を追っかけたことがある。
まずは朝5時すぎに自家を飛び出して、大手町へ。スタートは8時だが、早く行かなければ、沿道は立錐の余地もないのだ。分厚いダッフルコートを着込み、必需品は使い捨てのカイロ、カメラとラジオ、水のはいったペットボトル、それにチョコレートなどなど。 スタートした1区のランナーがひとかたまりになって目のまえを駈け抜けてゆくのを見送ると、すぐに東京駅までダッシュである。横浜に向かうJRにとびのり、その間もラジオを聴いている。横浜で降りて高島屋の前まで走る。2区のランナーたちを待ち受け、最後尾のランナーを見おくると、またまた駅まで猛ダッシュ。藤沢で3区のランナーを待つのだ。藤沢では遊行寺の坂をくだってくる先頭をまちうける。ここでは最後尾のランナーまでフォローする余裕はない。7~8位ぐらいまでを見届けると駅にもどって電車にとびのるのだ。大磯で4区の上位をみおくると、また電車にとびのる。小田原で箱根登山鉄道に乗り換えて、大平台で下車する。大平台のヘアピンカーブを登ってくる5区のランナーたちをまちうけるのだ。箱根町まではもうゆけないから、ここではゆっくりできる。最後尾のランナーまで、読売新聞の小旗を振りながら声援するのである。往路の追っかけ一日はこのようにあわただしく過ぎてゆくのである。
ランナーたちは、アッというまに目のまえを駈けぬけてゆく。そこには高い足音とあらい吐息があるだけで、ドラマなんて何もない。だがTVは何台ものカメラワークで、ランナーたちを駅伝ドラマの主人公にしてしまうのである。
駅伝隆盛のわが日本、ところがTVの視聴率が上昇するにつれて、日本長距離は世界に置いてゆかれ、いまやマラソンの3流国になってしまった。世界一のランニング王国だというのに、なんともはや皮肉というほかない。なんでこんなふうになったのか。これでいいのかな、と思うことしきりである。


閑話休題……。
さて、今大会の箱根にのぞむ主力の動静はどうなのか。
分厚い戦力で他を圧倒する青山学院大、学生3冠をもくろんだ今年だが、出雲は制したものの全日本では東洋大に足もとをすくわれた。不覚をとったとはいえ、箱根に関してはなお優勝候補の筆頭であることに変わりはなかった。
連覇がかかる今回は、青山にとって、まさに真価を問われる正念場というべきで、大会前はそれほどメンタル面で余裕がなかったのではあるまいか。むしろ監督をはじめ陣営はかなり追い込まれていたとみるべきだろう。
当日のエントリー変更で、1区に切り札の一枚・久保田和真を配してきたのをみたとき、アッと思った。青山は王者の戦いを捨てて、なりふりかまわず仕掛けてきたのである。誰の目からみても、5区の神野大地が本調子ではないからだろうとよめるのだが、この青山の積極的な攻めのポーズにあおられ、逆に慌てたのが東洋であり、駒澤だったのではあるまいか。
結果的にみて、青山のランナーは誰も彼もが陣営の思惑をはるかに上まわる爆走で応え、それが他チームに影さえ踏ませぬという大圧勝劇をもたらした。

最近の箱根は各チームともに前半重視で1区~3区に主力を投入してくる。箱根で優勝を争うには3区を終わった時点でのポジションがポイントになるからだ。


スタートの1区はハイペースの展開で幕あけた。これも最近の顕著な傾向である。 1㎞のはいりが2:48、中央学院の潰滝大記、中央の町澤大雅が引っ張り、東洋の上村和生、青山学院大の久保田和真もしっかりついてくる。
5㎞も14:13と区間新ペース。だが速いペースに対応すべくスピード練習を積んできたのだろう。21選手全員がひとかたまりの集団になっている。早稲田大の中村信一郎、明治大の横手健、東海大の湊谷春紀も集団の前方につけている。
7.5㎞で中央大の町澤がスパートをかけて飛び出した。青山学院大の久保田、明治大の横手らが対応して再び集団に吸収されるが、集団はばらけはじめ、8㎞では法政大の足羽純実、上武大の東森拓らが遅れはじめる。
10㎞は28:38、ここでトップ集団は14人となり、東海大のルーキー・湊谷、さらに駒澤大の主将・其田健也もついてゆけなくなった。
13~14㎞、相変わらず中央学院大の潰滝がひっぱり、すぐ後ろには明治大の横手、青山学院大の久保田、早稲田大の中村、東洋大の上村がつけ、神奈川大の我那覇和真、山梨学院大の佐藤孝哉、帝京大の堤悠生、関東学生連合の山口修平らもつづいている。
15㎞の通過が43:38、ここで関東学生連合の山口がペースアップして、一気に集団が縦長になった。そして16㎞になって、力を温存していた青山学院の久保田がスパートした。明治大の横手、早稲田大の中村が付いていく。縦一列になった集団から明治の横手がぬけだしてきて久保田と並走状態になる。
久保田の仕掛は速く、18㎞では横手を振り切って単独トップに立つ。後ろでは駒澤の其田が遅れて14位まで順位を落としていた。
青山の久保田はその後も区間新ペースで快走、必死に追走する明治の横手の後ろでは中央大・町澤と拓殖大の金森寛人が3位集団となり、東洋大、早稲田大、関東学生連合、中央学院大が5位を争っていた。
青山学院の久保田はそのままトップを駈けぬけ、歴代3位の好タイムでタスキをつないだ。2位は21秒差で明治大、3位は中央大、4位・拓殖大、5位・早稲田大。東洋大はトップから52秒差の7位につけたが、候補の一角・駒澤大は先頭から1分49秒差の13位と大きく出遅れてしまった。


エース区間の2区……。
好発進の青山学院は一色恭志は1㎞=2:47の入りでゆうゆうトップを行くが、後ろの順位争いははげしくなっていた。
2㎞では13位発進の山梨学院大のドミニク・ニャイロが猛然と追い上げ、東洋大・服部勇馬、早稲田大の高田康暉などをかわして3位まで浮上してくる。 さらに6㎞ではニャイロが明治大の木村慎をかわし2位までやってくる。その後ろから東洋大の服部が追い上げてきて、8㎞手前で明治の木村とらえて3位集団となり、前を行くニャイロを追い始める。
はるか後ろでは駒澤大の工藤有生、さらに12位でたすきを受けた順天堂大の塩尻和也が早稲田大、拓殖大などの5位集団に追いつき、なんと9チームによる大集団となっていた。 10㎞を青山学院大の一色が28:57で通過、3位集団から東洋大の服部がぬけだしてきた。トップの一色と2位・山梨学院大のニャイロ、3位の東洋大・服部との差がジリジリと詰まってくる。
東洋の服部は13㎞で2位の山梨学院大・ニャイロに追いつき2位集団をなしてトップの青山・一色を追い始め、権太坂の本格的な上りでは、その差は100mぐらいになってくる。両者の壮絶なせめぎあいはその後もつづき、16㎞すぎでひとたびニャイロがペースアップして服部を引き離したが、19㎞手前ではふたたび服部が追いつき、逆に20㎞では服部がしかけてニャイロを突っ放した。トップの青山との差は24秒、2区で東洋大は射程圏内までやってきたのである。
青山学院大・一色がトップでたすきリレー。23秒差の2位で東洋大の服部が弟の弾馬にたすきをつないだ。服部は1時間7分4秒で惜しくも日本人4人目の1時間6分台はなかったが区間賞の走りで、青山追撃の狼煙をあげた。とくに留学生ニャイロを競りつぶした走りは高く評価すべきであろう。
3位は山梨学院大、4位は明治大、5位争いは帝京大の高橋裕太が制し、駒澤大は2分20秒差の6位。その後はオープン参加の関東学生連合がつづき、7位・拓殖大、8位・順天堂大、9位・中央学院大、10位・城西大とたすきがつながった。


東洋大は青山にゆきかかっていた勝負の流れを、なんとか2区で食い止めはした。3区はまさに勝負どころで、当日のエントリ変更で投入した服部弾馬にすべてが託されたのである。その差は23秒である。相手は箱根初登場の秋山雄飛である。歴戦の強者・弾馬なら、ここで逆転可能と踏んでいただろう。われら観戦者もそのように注目してみていた。
だが、駅伝は走ってみなければわからない。
5㎞を青山学院大・秋山は14分15秒で通過、差はつまるどころか、逆にひらきはじめたのである。弾馬は追えども追えども青山が遠ざかっていった。10㎞を青山の秋山は28:30で通過、なんと区間新ペースである。服部弾馬にとっては厳しい展開となり、14㎞ではその差は300m以上にひらいてしまったのである。気温は11度を超えるという高温のうえに風がほとんどない。汗まみれになってあえく弾馬の姿が、いかにも人間的で目をひきつけられた。
涼しげにゆったりとした走りでピッチをきざみつづけた青山学院大の秋山がタスキリレーのとき瞬時にみせた笑顔がいかにもさわやかだった。
東洋の弾馬は1:35と大きく遅れて2位、トップから2:46差の3位で山梨学院大、さらに2秒遅れで駒澤大がたすきをつなぐ。さすがに駒澤は地力を発揮、ここで3位まで押し上げてきた。

青山は3区で東洋を突き放し、2区で東洋に傾きかけた勝負の流れを再びたぐりよせたのだが、東洋にとっては大誤算、ショックが大きかっただろう。弾馬のデキはかんばしいものではなかったが、区間3位だからブレーキというわけではない。青山学院・秋山雄飛が良すぎたのである。青山連覇の最大の殊勲者をひとりあげろといわれれば、迷うことなくこの3区・秋山を推す。
最大の勝負どころで東洋のチャレンジを退けた青山、4区以降は独り我が道をゆくという展開となっていまう。

4区の青山は区間記録保持者の田村和希であった。1分をこえるアドバンテージをもらったせいもあったのだろう。実にのびのびと走っての区間賞、追ってくる東洋の小笹椋に2:28もの差をつけて5区の神野大地にタスキを渡したのである。余裕をもって神野にタスキを渡す。まさに青山のもくろみどおりとなっていった。
注目の神野大地の走りは安定していた。強い腕振りで山道を駈けあがり、区間賞こそ日大のダニエル・ムイバ・キトニーにゆずったものの、区間2位で、昨年と同じように往路優勝のゴールにとびこんでいった。


青山に死角があるとすれば復路の6区山下りだと思われたが、一年生の小野田勇次が強風をものともせずに快調にぶっとばして、みごとに乗りきった。東洋との差は4分15秒となり、7区以降は東洋が追えども追えども、青山は離れてゆくというかたちになり、青山の独走状態になってしまうのである。レースの興味はシード権争いになってしまったが、今大会は例年ほど競り合う展開にはならなかった。
8区をおわって、青山、東洋、駒澤の上位3校は不動となり、以下は早稲田、日体、中学、東海、順天、山梨、帝京、ここまでがシード圏内、9区以降は10位の帝京と日大が競るだけの展開になってしまったのである。


青山学院大はいちども首位をゆずらなかった。1977年(第53回大会)の日本体育大以来、39年ぶりの完全優勝である。分厚い戦力、加えてまったくのミスがなかった。さらに10人のランナーが何よりものびのびと走っていたのが心に残った。監督・コーチと選手たち、さらにはサポート・スタッフとの関係がよほどうまくいっているのだろう。あれほどの快勝ぶりは監督やコーチさえも想定していなかったのではあるまいか。

2位の東洋大学は前半で優位に立つ戦略だったのだろうが、思いがけず後手に回ってしまったのが大きかった。
3位の駒澤は1区の出遅れがすべて。それでも5区ではちゃんと3位まで盛り返したのはさずがというべきか。この上位3校とほかではあまりにも差がありすぎた。
シード権を得た他の7校のなかで今後の注目は東海大か。チーム力がじわっと上向いてきているようで、何やら不気味な感じがする。
思いがけない凋落ぶりをみせたのは明治である。1区は横手健の好走があり、2区でも木村慎が好位置につけていながら3区~5区で大きく失速して順位を落とした。復路も浮上ならず低空飛行から脱けだせなかった。

青山は来年も強いだろう。だが4年生の主力4人がぬける影響は皆無ではあるまい。そこに他の大学がどのようにつけこんでくるのか。戦いはすでにして始まっている。


◇ 日時 2010年1月2~3日(祝) :午前8時00分 スタート
◇ コース: 東京・読売新聞東京本社前~箱根・芦ノ湖間を往路5区間(108.0Km)、復路5区間(109.9Km)の合計10区間(217.9km)
◇天気:往路 晴れ 気温:5.2度 湿度: 風:東北東(スタート前)
:復路 晴れ 気温:5.8度 湿度:68% 風:西北西2.3m
◇青山学院大学(久保田和真、一色恭志、秋山雄飛、田村和希、神野大地、小野田勇次、小椋裕介、下田裕太、中村祐紀、渡辺利典)
◇公式サイト:
http://www.hakone-ekiden.jp/
◇総合成績:http://file.hakone-ekiden.jp/pdf/92_Record_all.pdf



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トヨタ自動車が2年連続3度目の優勝
序盤おくれるも終盤に満を持して逆転!


ニューイヤー駅伝として知られる全日本実業団駅伝は、60回目の記念大会となり、今年は例年より6チーム多い、43チームでおこなわれた。
混戦が予想される今回はみどころの多い大会だった。
中部予選で圧勝したトヨタ自動車の連覇がなるかどうか。
昨年2位のコニカミノルタも戦力充実している。さらに東日本実業団を5年ぶりにHondaも勢いがある。同2位の日清食品も優勝争いに絡んできそうでる。あとDeNAなども上位争いに絡んできそうな気配感ぜられた。
若手の台頭で興味深いトピックももりだくさんである。
たとえば期待を背負う2組の双子兄弟に要注目。
まずは設楽ツインである。
Hondaの悠太は昨年の世界陸上10000mにも出場、すでにHondaのエースに成長している。昨年の本大会で4区で区間賞を獲得、今年は11月の東日本実業団でHondaを優勝にみちびいた。
コニカミノルタの兄・啓太も昨年4区でデビュー、区間4位に終わったが、チームの柱になりつつある。
旭化成のツイン・ルーキー、村山謙太と村山紘太も箱根駅伝のスターで、昨年は兄弟そろって世界陸上出場を果たした。若くて勢いのあるふたりが両輪となれば、旭化成の17年ぶり優勝も夢ではなくなるとみていた。
設楽兄弟はHondaとコニカミノルタという優勝をねらうチームで覇をあらそい、村山兄弟は同じチームで古豪復活のキイマンとなっている。
さらに今井正人(トヨタ自動車九州、順天堂大OB)と柏原竜二(富士通、東洋大OB)による箱根駅伝の新旧「山の神対決」が実現、直接対決でふたりが肩をならべて競い合うシーンがみられるのではないかという期待もあった。


オーダリストをみて驚いたのは旭化成である。1区・鎧坂哲哉、2区・村山紘太、3区・大六野秀畝、4区・村山謙太……。注目の村山ツインを含めて、すべて箱根駅伝で名を馳せた若きスターたちではないか。旭化成といえば、無名の高校生ランナーを手塩にかけて育てあげ、檜舞台に送り出すのを常としてきたが、いったいいつから宗旨替えして銘柄級の名のある大学生をとるようになったのか。
それにしても、この4人がベストのデキなら、優勝争いにからんでもくるかも、と想わせられたのである。

第1区から3区までをワンセットと考える。3区を終わった時点で、いったいどの位置に付けているかが覇権争いのポイントになるというのが本大会のポイントである。


注目の第1区……。
例年通り、1区のエキスパートの顔がそろい大混戦の幕開けだった。1㎞3分というスローペースで大集団ですすんだ。5㎞になっても14分43秒とゆったりとしたペースで43チームはだんご状態。旭化成の鎧坂が集団の中程から前方へと上がってくる。
9㎞になって旭化成・鎧坂がペースアップ、落ちこぼれるチームが出てくるが、いぜん先頭集団は35人という大集団はゆるぎもしない。
11㎞になってDaNAの高橋優太が先頭を引っ張り、最後はスパート合戦による結着にゆだねられた。ラスト勝負を制したのは日清食品グループ・若松儀裕、2位・中国電力、3位・コニカミノルタとつづいた。連覇を狙うトヨタ自動車の早川翼はトップから9秒差の14位、旭化成は先頭から10秒差の16位だった。第1区は先頭から53秒以内に全チームがおさまるという大混戦で2区に突入した。


2区はいわば外国人ランナーの特区で43チームのうち25チームまでが外国人ランナーを配している。スピード勝負の8.3㎞区間である。外国人が次つぎに前に出てきて、みるみる先頭から20位すぎまで、外国人ランナーの競演になってしまった。
5㎞を先頭の日清食品グループ・レオナルドが13分27秒のハイペースで通過、トヨタ自動車九州のズク、DeNAのビダン・カロキら外国人ランナー8人が2位集団で追ってゆく。。
興味は16位でタスキをもらった旭化成のルーキー・村山紘太の走りであった。5000mの日本記録を更新したばかりの若い力・村山が外国人ランナーにどこまで通用するのか。おおげさにいえば、日本長距離の未来を占う重要なシーンであった。
だが、村山は出足はよかったものの、中盤から失速してしまった。前を追うどころか、外国人ランナーに次つぎかわされて後退していった。苦しげに顔をゆがめる姿が、今の日本長距離のありようを象徴的にものがたっていた。村山紘太は最終的に区間24位で、旭化成は21位に後退してしまった。ちなみに2区の区間賞は九電工のP・タヌイで22:28、村山紘太は1:08も置いてゆかれ、まったく歯が立たなかったのである。


2区を終わってトップは日清食品グループ、2位は9位からあがってきたHondaで5秒遅れ、3位はタヌイの区間賞で20位から大躍進の九電工でトップから7秒遅れ、4位は12位からあがってきた安川電機でトップから10秒遅れ、5位は富士通で11秒遅れ、6位には候補の一角。トヨタ自動車が11秒差でやってきた。

日清食品の3区は佐藤悠基、絶好の滑り出しのリズムに乗って、独走態勢にもちこむかと思いきや、4㎞をすぎて、後続がひたひたと追ってくるではないか。
2位集団からDeNAの上野裕一郎が抜け出し、佐藤を追いはじめたのである。そして5㎞ではとうとう上野は佐藤をとらえてトップを奪った。上野は5㎞を13分35秒と、ハイペース、佐藤も懸命に食らいついた。後ろは15秒遅れでトヨタ自動車九州・渡邉竜二、安川電機・佐護啓輔、さらにトヨタ自動車の大石港与とコニカミノルタの菊地賢人が追いつき、4人の集団となる。
6㎞でDeNA・上野が日清食品佐藤を少しずつ引き離しにかかる。差はじりじりとひろがり、上野が先頭でタスキを繋いだ。27秒差の2位で日清食品グループ。トップ38秒差の3位にコニカミノルタ、42秒差の4位でトヨタ自動車、49秒差の5位でHondaがたすきをつなぐ。旭化成は先頭から1分46秒遅れの14位といぜん低空飛行のままだった。


今回のいちばんのみどころはやはり最長区間(22㎞)4区だったろう。注目は3区で5位までやってきたHondaの設楽悠太であった。
先頭をゆくDeNAは室塚健太、位・日清食品は村澤明伸、3位のコニカミノルタは宇賀地強というエースが顔をそろえている。4位のトヨタ自動車は社会人2年目の窪田忍、そのうしろから追う5位・Hondaの設楽悠太は1㎞=2:40というハイペースの入りであった。
2㎞すぎで悠太は早くも窪田、宇賀地、村澤をとらえて2位に浮上、3㎞では逃げるDeNA・室塚の背後にひたひたと迫った。5㎞の通過が室塚が14分19秒、設楽は13分36秒だから差はみるみる詰まった。そして5.9㎞で悠太は室塚を一気に抜き去りトップに立つのである。
後では旭化成で2区を走った村山紘太の兄・謙太が追い上げを開始、三菱日立パワーシステムズ長崎の井上大仁、富士通の星創太とともに6位集団にくらいつく健走をみせていた。
設楽は先頭をうばったものの、猛烈な向かい風に阻まれて、後半は苦しい走りとなった。19㎞では2位集団のトヨタ自動車、日清食品グループが設楽との差を少しずつ詰めはじめていた。
20㎞では2位集団との差は13秒までつまり、設楽は何度も後ろを振り返り、右の太腿をたたくというシーンもあった。だが、粘りの走りで最後まで押し切り、自身が昨年マークした区間記録をみごと更新した。17秒差の2位でトヨタ自動車、1秒遅れの3位で日清食品グループがつづき、4位はDeNA、5位はコニカミノルタであった。

4区で2位まで浮上したトヨタ自動車の5区はスピードランナーの宮脇千博であった。逃げるHondaの服部翔大を、宮脇は激しい向かい風なか、日清食品の矢野圭吾と2位集団をなしてひたすら追っていった。宮脇はひとたび矢野に置いてゆかれたものの、8㎞で追いついて抜きかえした。だが10㎞すぎで、こんどは後ろから追ってきたコニカミノルタの山本浩之にとらえられるも、ここからしぶとさを発揮する。2位集団となって服部を追いかけ、11.8㎞では一気にペースアップして服部をかわし、粘る山本をも置いていったのである。
後方ではトヨタ自動車九州の今井正人と富士通の柏原竜二の「山の神」の新旧対決が相手の見えないという状況でくりひろげられていた。


5区の太田市役所中継所で、今井が7位、柏原が20位でタスキを受けとるかたちとなり、二人が直接つばぜり合いを演じるシーンは見られなかったが、それぞれ見えない相手とけんめいに戦っていた。今井はすぐ6位まで押し上げ、終盤では4位まで浮上、区間2位の快走でトヨタ自動車九州3位の原動力となった。柏原は20位で受け取ったタスキを17位で渡した。区間9位ながら順位を3つ押しあげる走りをみせたのである。
トヨタ自動車の宮脇がスパート合戦を制し、ここでわずか2秒差ながらコニカミノルタを押さえたはトヨタにとっておおきかったといえる。
トヨタ自動車の6区は田中秀幸、追うコニカミノルタは設楽悠太の兄・啓太であった。 トヨタは5区でトップに立ち流れに乗ったというべきか。田中の仕掛は速かった。1.5㎞で前に出たかと思うと、3㎞で一気に突き放しにかかる。設楽はそれでも粘り強く、持ちこたえていたが、7㎞で10秒、9㎞で17秒とその差はじりじりとひろがっていった。


6区を終わってトップのトヨタ自動車とコニカミノルタとの差は33秒、かくしてアンカー勝負に持ち込まれた。
トヨタ自動車の6区のランナーはルーキー・山本修平である。追うコニカミノルタは野口拓也、猛然とトヨタを追った。だがトヨタ自動車の山本が安定した走りでトップをゆずらなかった。一時は野口に13秒差までつめられる局面もあったが、落ち着いた走りで後半は突き放して2連覇のゴールにとびこんでいった。


優勝したトヨタ自動車は区間賞はひとつのみである。とびぬけたスーパーエースといわれるような存在はみあたらなかった。だが個々のランナーが自分の役割をよく認識して、ここぞというときに勝負強さを発揮した。監督が「総合力の勝利」といように、メンバー全員がさしたるミスもなく、安定した力を発揮したのが勝因だろう。
2位のコニカミノルタは惜しかった。わずか20秒差である。2区のポール・クイナが犬の飛び出しで転倒、後退して31秒差の区間14位に沈んだのが痛かったか? だが駅伝はアクシデントがつきものである。それが理由にはなるまい。
3位のトヨタ自動車九州は今井正人の爆走が産み出したものとみていい。
4位のHndaも中盤では、悠太の快走であわやの局面もあった。いつもながらもう一枚が不足していた。
5位のDeNAも前半はレースを支配していた。昨年より順位をひとつ上げての5位はまずまずといったところか。
ちょっと期待はずれは日清食品グループの6位か。前半は好発進したが、後半はいまひとつ伸びを欠いていた。
旭化成も最後は7位までやってきたが、その順位は銘柄級の箱根ライナーのよるものではない。皮肉にも4人の影にかくれた存在の5区からの3人が稼いだもの、なんとも皮肉というほかない。


上位に来た顔ぶれをざっと見わたして、おもしろいのは企業業績と駅伝レースの結果に相関があるという事実である。企業業績の好調な会社のチームが着実に上位を占めているのである。自動車産業、ネットによるサービス業、産業用計測機会や複合機メーカーなどなど……。当然のことながら、これらチームでは選手の待遇も良く、選手強化費なども潤沢に投じられているのだろう。


◇ 日時 2015年 1月 1日(金=祝) 9時00分 スタート
◇ 気象 天気:晴れ 気温5.4 湿度35% 西南西2.1m
◇ コース:群馬県庁スタート~高崎市役所~伊勢崎市役所~太田市尾島総合支所~太田市役所~桐生市役所~JA赤堀町~群馬県庁をゴールとする7区間100km
◇トヨタ自動車(早川翼 J.カマシ 大石港与 窪田忍 大石港与 宮脇千博 田中秀幸 山本修平 )

▽TBS公式サイト:http://www.tbs.co.jp/newyearekiden/
▽総合成績:http://home.m07.itscom.net/jita/man_ekiden/pdf/ny60_1.pdf



立命館が堂々の3連覇!
先行、逃げ切りで影さえ踏ませなかった!


霊峰・富士のふもとでくりひろげられる大学女子の選抜駅伝、標高差が172mというタフなコースである。平地の全日本よりも、あるいは紛れがあるやも、と思いきや、王者はやはり強かった。
全日本5連覇の立命館は大会直前になって大森菜月が練習中に転倒して左膝を打撲。菅野七虹が故障から復帰したと思ったら、こんどはかわりに全日本制覇の原動力となった大森を欠くことになった。
菅野が復帰したのはおおきいいが故障あがりだから未知数である。他のチームならば衝撃が走ることだろう。だが現在の立命館は選手層がいかにも分厚い。替わりはいくらでもいるよと、豪語するかのようなレースぶりであった。


第1区の請負人である大森菜月を欠いて、立命館はいったい誰を1区に配してくるのかがもっぱらの興味はそこにあった。
大森がいなければ常識的には菅野だろう。競り合いでの強さは大森よりも菅野のほうが勝っている。だから菅野は第1区のランナーとしてむしろ適役だとさえ思っている。もし菅野を5区か6区の起用してくれば、故障が癒えたとはいえ、まだ不安残しとみなければならない。そういう意味で前日のオーダー発表がたいへん気にかかっていた。
第1区が菅野七虹であるとわかったとき、これで、立命館の勝利は動かないだろうと確信した。1区起用なら、すでにトップギアで走れる状態までもどっている証だとみたのである。

1区(6.6キロ)はスタートから中継所まで78mの高低差がある長い下り坂である。大東文化大の福内櫻子が積極的に前に出得引っ張ったのは、なんとか立命館に一泡吹かせようという執念からだろう。大阪学院大の新井沙紀枝、松山大の上原明悠美、名城大の青木和、そして立命館の菅野七虹がつづくという展開。
2㎞すぎでは名城の青木和がトップに立ち、このあたりからペースが少しずつあがりはじまた。タテ長の展開になり、3.8㎞で立命の菅野、松山の上原、名城の青木が肩を並べる展開になるも、登り坂の4.4㎞あたりで候補の一角・大東文化の福内がなんと、意外にもここで遅れていった。
先頭集団のイニシャティブを握ったのは立命館の菅野であった。新井、青木、上原とのサバイバルレースになったが、勝負強さではやはり菅野が一枚ぬけていた。4.9㎞で上原が置いてゆかれ、5.2㎞では新井が遅れた。最後は菅野と青木との叩き合いになったが、菅野が5.5㎞でスパート、力強い走りで後続を振り切った。
2位には6秒差で大阪学院大、9秒差で名城、松山大は11秒差の4位と好位置をキープしたが大東文化大は31秒差の9位と出遅れて明暗をわけた。


2区(3.5㎞)と3区(4.4㎞)は穏やかな下りコースである。しかし東海道線の高架橋などアップダウンがあり、どれだけスピードに乗れるかどうかが勝負となる。
好発進した立命館の池本愛は、1区・菅野の流れに一気に乗ってしまう。2㎞通過が5:50と好ペース、中間点を7:35、後ろは誰も追ってこなかった。1区で9位発進の大東文化大は小枝理奈で5位まで順位をあげてきたが、タイム的には立命館の差は51秒とひろがってしまい、早くも圏外に去ってしまった。


3区にはいっても立命館・和田優香里のきびきびしたキレのある走りに目を惹かれた。松山、名城、大東、大阪学院がはげしく順位争いをすするなか、ゆうゆうとトップを快走、4区の太田琴菜にタスキが渡るときには2位の松山に47秒もの差をつけてしまい、立命館3連覇の道筋がしっかりできあがってしまった。1区の菅野はともかく、2区の池本、3区和田の区間賞がおおきかったといえる。
立命館は4区(9.4㎞)になっても手をゆるめない。太田琴菜が攻めの走りで突っ走った。1㎞=3:14ではいり、中間点は15:00と区間新ペースでのりきり、わずかに区間新にはとどかなかったが、後続に2:22秒もの大差をつけてしまったのである。

立命館は5区(5.0㎞)と6区(6.8㎞)に関紅葉、加賀山恵奈という1年生を配していたが、後続は順位争いに精一杯で、立命館を追う力はなかった。かくして6区を終わってトップをゆく立命館と2位・名城との差は3分29秒と距離にして1㎞以上の差がついてしまっていた。

最終7区(7.7㎞)は富士山をあおぎみる登り坂で2㎞すぎから4.6㎞で169m駆け上がるというコース、途中の3.8㎞では急激な下りもあるというありさまである。競り合う展開になれば紛れもあろうが、立命館はひとりわが道をゆくというありさまだから、勝負はすでに決していた。
立命館の園田聖子は今シーズン初登場で、本調子を欠いて苦しい走りだったが、それでもやすやすと3連覇のゴールまでタスキを運んでいった。


立命館は大学レベルでは一枚ぬけた存在で、いつも異次元でレースをしている。7区間のうち5区間で区間賞、文句なしの圧勝である。ロードに強く、選手たちはだれもかれも駅伝の戦い方を熟知している。エントリメンバーのうちひとりも4年生はいない。だから立命の王座は当分の間つづくのだろう。


立命の卒業生は仏教大の卒業生にくらべて、なぜか卒業後に大成する選手は少ないのだが、皮肉にもだからこそ、大学駅伝に強いのかもしれないといううがったみかたは、どんなものだろう。


2位の名城は大健闘というべきか。全日本5位からのジャンプアップだが、全日本も3位はありえた展開だったら、確実にチーム力は上向いている。1区で上位につけたのが好リズムを呼んだようである。
3位は松山大学、4位は大東文化大、5位は日本体育大学、6位は大阪学院大学……と、終わってみれば上位校が収まるところにおさまっている。ただし意外だったのは大東文化大であろう。もうしこし際どく立命館に肉薄するだろうと思われたが、1区で後手を分であっさり圏外に去ってしまい、今回もちぐはぐな戦いぶりで期待を大きく裏切った。
ほかで7位の白鴎大だろう。全日本12位から東京農大や城西を上まわって入賞圏内の突入してきたのは評価すべきだろう。


それにしても……
本大会は例年23日(祝)に行われてきたが、どうして暮れも押し迫った30日なのか。大会主宰者の意図がさっぱりわからぬ。


◇ 日時 2010年 12月30日(水) 午前9時15分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:06.8度 湿度:39% 風:北西1.5m
◇立命館大学(菅野七虹、池本愛 和田優香里、太田琴菜、関紅葉 加賀山恵奈、園田聖子)
◇公式サイト:
http://www.fujisan-joshiekiden.jp/index.html
◇結果:http://www.fujisan-joshiekiden.jp/press/result.pdf