長野が3年ぶり7度目の制覇!
勝因は高校生3人の快走

 

風もなく、湿度は68%、スタート時の気温は7.5度、午後は10度ぐらいにあがった。長距離走にしてみれば、暑くも寒くもなく、ちょうどよかったことだろう。
途中から気温が低下して大雪にみまわれた先週の全国女子駅伝にくらべれば、気象条件はめぐまれ、ランナーたちは走りやすかったのではあるまいか。

今シーズン最後の駅伝である。
最後の駅伝であるだけに、それゆえの紛れがあるというのがこの大会の特徴である。中学生(2人)、高校生(3人)、大学生・実業団(2人)の7人構成されるメンバー、大学生と実業団のメンバーの多くは、正月に目一杯のレースをしてきている。ベストの状態で出てきているわけでないので、あまり信用できないのである。
中心をなすのは高校生である。高校生がどのような走りをするかが勝負の分かれ目になる。本大会はまさに日本長距離の未来を背負う高校生と中学生のためにある。全国大会に縁がなかったものの、実力のあるランナーが本大会には選抜されてくる。そんな彼らにとっては檜舞台なのである。
兄弟3人でタスキ渡し。そんなことが可能になるのも本大会ならではのことである。たとえば山口県である。青学の田村和希(3年)、次兄・友佑(岩国工高3年)、末弟・友伸(玖珂中3年)の3兄弟を前半1~3区に投入してきておおきな話題になった。

 

今回、候補の呼び声が高かったのは長野である。
その長野の中谷雄飛をマークするかたちで1区は幕あけた。
1㎞=3:03、スローの展開である。中谷をとりまくように、京都の清水、福岡の岩室天輝、大分の小野知大、群馬の西山和弥、滋賀の千葉直輝、広島の吉田圭太などの顔がみえる。1.4㎞で群馬の西山が集団を割って飛び出したが、3.3㎞では後続にのみこまで再びトップは大集団になる。
3~4㎞は2:54とペースはあがったが4㎞をすぎても25チームぐらいがトップ集団をなしていた。4.5㎞では長野の中谷が先頭に出てひっぱりはじめ、京都の清水、群馬の西山、広島の吉田、三重の塩澤稀夕がは背後につけた。5㎞あたらいから縦長の展開になり,トップ集団は17~18人ぐらいになる。
6㎞では西山、中谷、塩澤が前に出てくる。トップ集団はすこしづつばらけはじめおよそ15ぐらいにしぼられた。
残り1㎞で西山がペースアップ、中谷が反応、残り600で西山が二段スパート、中谷、塩澤、清水が喰いさがった。最後に抜けだしたのは三重の塩澤、長野の中谷と京都の清水がつづいた。1区をおわって、トップは三重、3秒差で長野と京都、4秒遅れで滋賀、5秒遅れで群馬、6秒遅れで広島、8秒遅れで大阪と兵庫、11秒遅れで宮崎と静岡で、ここまでが10位、トップから25秒のあいだに20位までもがはいっていた。

 

2区は中学生区間である。短い距離だが、いがいにここで差がつくケースも多い。
京都の諸富湧が三重の大塚陸渡をかわしてトップに立ったが、そこへ群馬の伊井修司、滋賀の安原太陽が追ってきて4チームで先頭集団となる。激しい先陣あらそいがつづき、残り800で大塚と安原が脱け出すかにみえたが、残り500になって京都の諸富が巻き返してトップを奪い、そのまま中継所へ。
2区を終わってトップに立ったのは京都、5秒遅れで群馬と滋賀、11秒遅れで兵庫、三重、14秒遅れで静岡とつづいた。長野は13秒差の7位、愛知は14秒差の7位、以下は千葉、福岡とつづき、ここまでが18秒差と大混戦となった。はるか後ろでは長﨑の林田洋翔が区間新の快走、14人抜きで41位から一気に27位までやってきた。

 

3区にはいると群馬の戸田雅稀がトップを行く京都の川端千都を追い、2.7㎞で背後に迫り3.1㎞で先頭に立った。3位以降は大集団となり、愛知の山口浩勢、三重の山下流、千葉の浅岡満憲、長野の春日千速、福島の物江雄利、福岡の鬼塚翔太、静岡の梶原有高、新潟の服部弾馬がつけていた。
5.7㎞で京都の川端は遅れ、群馬の戸田が単独トップに立つも3位集団もやってくる。6.1㎞の下り坂で、愛知の山口がペースアップ、京都の川端、群馬の戸田を抜いてひとたびトップに立つ。先頭は愛知、千葉、京都、三重、群馬、福岡、長野、新潟、静岡が2位集団をなすという大混戦となる。
愛知がトップに立ち、3秒遅れで福岡と静岡、5秒遅れで京都、以下千葉、群馬、静岡とつづいた。

4区と5区は高校生の区間である。
4区にはいって福岡の森川弘康がトップを奪い、愛知の関口雄大、三重の田辺佑典、千葉の村上純大がつづき、少し離れて京都の渕田拓臣、長野の本間敬大がつづくという展開になった。トップ争いは千葉、福岡、愛知、三重の4チーム、激しいサバイバルとなり、2㎞で三重が遅れ、2.5㎞で愛知がこぼれてゆく。中盤からじりじりと追い上げてきたのは長野の本間敬大、残り700で福岡の森川がトップを奪ったが、残り500で千葉をとらえた長野の本間が一気にやってきて、残り300で福岡の森川もとらえて奪首に成功した。

5区にはいると勢いに乗った長野、名取燎太が福岡の竹元亮太にリードを奪い、トップの座を確かなものにする。しかし2位の福岡との差は12秒、だが3位の京都との差は55秒とひろがり、6区以降は長野と福岡のマッチアップの様相となったのである。

 

4区、5区の高校生区間で主導権をにぎった長野、6区はそのまま勢いにのるかと思いきや、福岡が踏ん張りをみせた。1㎞通過は長野の眞田稜生がトップ通過、だが福岡の杉彩文海が差を詰めてきた。残り700で眞田をとらえ、ラストスパートで振り切った。3位の京都以降との差は1分以上となり、アンカー結着にゆだねられたのである。

 

6区の福岡は押川裕貴、長野は上野裕一郎、ともに実業団ランナーである。福岡の押川を追う長野の上野は本大会出場が10回目、22回ののうち10回、半分以上は顔を出していることになる。上野は1.9㎞ではやくも押川をとらえて先頭に立ってしまった。
先頭争いと、もうひとつの見どころは3位争いであった。2㎞になると3位の京都に群馬、愛知、静岡が追い上げてきて3位集団となぅた。京都は青学の一色恭志、群馬は順天堂大の塩尻和也、愛知は山の神といあれたあの神野大地、静岡は青学の下田裕太、つまりOBを含めて青学3人と順天堂大のオリンピアンの争いとなったのである。
トップ争いは上野が先頭に立ってからも、押川がしぶとく粘り、およそ7秒差ぐらいで推移、7㎞ぐらいから降りだした雨が雪にかわるなか、上野は決定的なリードを奪えないまま膠着状態で8㎞、10㎞とすすんだ。
後ろでは入賞争いが熾烈となった。千葉、三重、秋田が8位集団をなしていたが、10㎞すぎで佐賀、新潟、兵庫が追いついてきた。
トップ争いは12㎞過ぎで差がひろがって、最後は上野がそのまま押し切った。3位争いは10㎞すぎでスパーとした愛知の神野大地が一色以下を押さえて先輩の貫禄をしめすかたちとなった。もつれにもつれた8位入賞争いは新潟の畔上和弥がわずかに千葉の潰滝大記に競り勝った。

 

優勝した長野は3年ぶり7度目の制覇である。中学生はいまひとつだったが3人の高校生の快走が流れを引き寄せた。最後は上野裕一郎がベテランの走りで優勝をきめたが、高校生3区間のうち区間賞が2つと区間2位、お膳立てをしたのはかれらであった。。
2位の福岡は惜しかった。このチームも中学生、高校生が強かった。1区の出遅れがなかったなら、と惜しまれる。
3位の愛知は昨年の覇者である。1区で19位と出遅れたが、2区の中学生で一気に8位まで追いあげ、3区の準エース区間では山口浩勢(愛三工業)が区間賞の力走、一気にトップまで押し上げてきて地力のあるところをみせた。
4位の京都は2区でトップに立ち、注目の静岡もつねに上位をキープしての5位、期待通りの走りをみせたが、候補の一角といわれた群馬の6位は、いささか期待はずれというべきか。3区でトップに立つ布陣だったが、頼みの3区でむしろ順位を落としてしまったのは大誤算だったろう。

本大会に出場した青学の一色恭志、下田裕太はそれぞれびわこマラソン、東京マラソンに出場する。アンカーでゴールテープを切った上野裕一郎もマラソンを視野においている。そしてあの神野大地も……。
駅伝の延長にマラソンがあるのではない。マラソンの延長に駅伝があるのだ。今では少なくなってしまったマラソンを視野において駅伝を走っているランナーに喝采をおくりたい。

 

◇日時 2016年01月22日(日)12時30分スタート
◇場所 広島市
◇コース 広島・平和記念公園発着/JR前空駅東折り返し、7区間48Km
◇天候:くもり 気温:07.5度 湿度:63% 風:西北西 1.1m(スタート)
◇長野(中谷雄飛、石川晃大、春日千速、本間敬大、名取燎太、眞田稜生、上野裕一郎)
◇公式サイト:http://www.hiroshima-ekiden.com/index.html
◇総合成績:http://www.hiroshima-ekiden.com/information/pdf/22nd/22nd_seiseki.pdf
◇NHKロードレース:http://www.nhk.or.jp/rr/race04/index4.html
◇区間記録:http://www.nhk.or.jp/rr/race04/divrank.html

 

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京都が3年ぶり16度目の制覇!
中盤を耐えて、混戦から脱け出す

今年は駅伝発祥100年にあたる。
京都・三条大橋の東詰に「駅伝の碑」がある。(https://www2.city.kyoto.lg.jp/somu/rekishi/fm/ishibumi/html/hi105.html)「駅伝の歴史ここにはじまる」と記されている。日本最初の駅伝は京都のまさにその地点からスターとしたのである。
日本最初の駅伝は1917年(大正6)4月27~29日にかけておこなわれた「東海道駅伝徒歩競争」である。おりからちょうど明治維新から50年目である。そこで「奠都50周年」を記念して、東京・上野で大博覧会がひらかれた。このとき読売新聞社は博覧会をもりあげようとして、京都から東京まで継走によるマラソンを企画したのである。
スタートは京都三条大橋、ゴールは上野の不忍池のかたわらにある博覧会場の正門、総距離数508㎞を23区間にわけた。東西対抗のかたちでおこなわれ、八山からトップに立ったのは関東組だった。アンカーはマラソンの父といわれるあの金栗四三である。金栗は駆けつけた大観衆を縫うように不忍池を一周してゴールにとびこんだのである。……
それから100年目である。
そういう記念の年に、しかも駅伝発祥の地でおこなわれる最初の駅伝というわけで、本大会はとくに意義深いものとなった。

節目となる大会だが、実は直前まで開催があやうかった。
原因は前夜からの降りつづいた雪である。未明の積雪は10㎝をこえ中止の判断にかたむいていた。2000人あまりを動員して雪かきをおこなったが、スタート2時間前の午前10時半になっても、1区と9区が走る五条通には雪がのこっていた。融雪剤をまくなど、京都陸協をはじめ関係者の懸命の努力で、なんとか開催にこぎつけたというのである。
大雪警報が発令されるなかでのレースとなり、選手は雪との戦いも強いられるいう過酷な大会となった。

大混戦になるだろう。オーダー表を見て、そのようにみていた。候補をあげれば群馬、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、愛知あたりではないか。優勝するには中学生・高校生が充実していなければならない。実業団や大学生はチャンピオンシップの大会で目一杯のレースをしているから、もう一押しあるかどうかで微妙。だからほかにも伏兵がいて思わぬ展開になるやもしれぬ。事実どこが勝っても不思議はなかった。

ならばスタートしだいである。スタートで後手を踏めばもはや圏外、うまく好位置につけられるかどうか、まず第一関門になるだろう。

注目の第1区、今回は競技場での転倒もなく、きわめて平穏だった。47人のランナーたちはひとかたまりになって五条通りにとびだしていった。先頭集団をひっぱるのは静岡の安藤友香、高知の鍋島莉菜、愛知の猿見田裕香、沖縄の渡久地利佳、京都の一山麻緒、埼玉の阿部友香里もうしろにひかえている。
1㎞=3:11だから、まずまずのペース、2㎞になっても大集団、だが3㎞手前になって候補の一角・兵庫の岩出玲亜、大阪の村尾綾香が集団からこぼれていった。
3㎞通過が9:39で鍋島と一山が集団をひっぱる展開になる。4㎞ではトップ集団はおよそ20チームだったが、4.3㎞からの登りになって集団はばらけはじめ、4.9㎞になって候補の筆頭といわれた群馬の岡本春美が遅れはじめた。
一山がひっぱり、神奈川の森田香織、静岡の安藤、岐阜の堀優花、山口の竹本香奈子、高知の鍋島、千葉の加世田梨花らがつづいた。
残り600mからスパート合戦になって静岡の安藤がとびだしたが、ほかの7人もついてくる。残り400mになっても決着がつかない大接戦、最後に埼玉の阿部が抜けだし、京都の一山が背後に迫る。タスキ渡しほとんど同時であった。
トップは埼玉で以下は京都、神奈川、千葉、茨城、岐阜、静岡、高知、山梨、愛知でここまで20秒以内、さらに長崎、熊本、鳥取、大分、福岡、長野と16位までがトップから30秒以内につけていた。群馬は55秒遅れの28位、兵庫は1:10遅れの38位、大阪は1:42遅れの44位と大きく出遅れて、早くも圏外に去ってしまった。

2区にはいると2位発進の京都の片山弓華がすぐに埼玉の高見沢里歩をかわしてトップを奪い、神奈川の佐藤成葉、千葉の上田未奈がうしろから2位集団でやってくる。
佐藤の勢いが止まらず1.7㎞で京都の片山においついて、ふたりで後続をちぎった。大学生のなかでも5000mではトップクラスの佐藤に高校生の片山が果敢にくらいついて、マッチレースとなる。
2.5㎞、北大路から堀川通りに出たところで、京都の片山が仕掛けた。暮れの高校駅伝でも同じ区間を快走して7人抜きを果たした片山は、カーブのおおいコースの特性を熟知していた。巧妙なコース取りでながれにのって、佐藤を突っ放して中継所にとびこんでいった。
京都がトップを奪い、3秒差で神奈川、21秒差で千葉、4位埼玉は29秒差、5位は茨城で30秒差、6位には長野があがってきて31秒差、愛知は9位、10位は岡山で、ここまでが40秒差だった。群馬、兵庫、大阪はなおもはるか後方におかれていた。

3区は中学生区間である。距離は3㎞とみじかいが、ここで意外に紛れが出る。
トップの京都の小林舞妃留はいがいに伸びず、2位にやってきた千葉との差わずか10秒、これが中盤波乱の要因となる。注目は岡山で10位から一気にトップから26秒差の4位までやってきた。さらに19位にしずんでいた群馬は不破聖衣来の区間賞の快走でトップから35秒差の8位まで押し上げてきた。

4区から5区へと北へ向かうにつれて雪が激しくなり、視界がきかなくなる。まさに眼もあけていられないほどの猛烈な雪で、レースもまた勝負のゆくえがまるで見えなくなった。
4区になってまず仕掛けたのは神奈川である。出水田眞紀が1.4㎞で千葉をとらえて2位に上がる。後ろからは12位でタスキをうけた長﨑の高校1年生・廣中璃梨佳がごぼう抜きで追い上げてくる。1.8㎞で3位までやってきた。
2㎞で出水田はトップをゆく京都の和田優香里をとらえてトップをうばう。和田はスピードにのれないでいるところ、2.4㎞で廣中につかまり、長崎が2位に浮上する。その後も廣中は苦しそうな面持ちながら、雪の中を前を見つめてひたすら疾走、のこり400mでトップをゆく神奈川の出水田までとらえてしまった。11人抜きの快走である。
4区を終わってトップは長崎、2位は神奈川で2秒差、3位は静岡で16秒差、4位は千葉でb秒差、5位は岡山で25秒差、京都は6位まで順位を落として27秒差となり、群馬、兵庫、大阪はいぜんとして後方、優勝争いはますますわからなくなった。

5区から7区まで上位は一進一退に終始した。。跨線橋から宝ヶ池の折り返しまで、雪がますます激しくなり、選手たちは目も開けていられなかったという。前もみえないなか、ひたすら孤独な戦いをくるひろげていた。5区では神奈川と千葉がはげしくトップを争い、長崎と京都も差を詰めてくる。5区で順位を上げたのは長野で佐々木文華が9位から一気に5位までやってきてトップとは12秒差とした。群馬もようやく32秒差の9位、兵庫も43秒差の12位まであがってきた。
6区では5区でトップに立った神奈川がトップをまもり、16秒差で長崎、長野が25秒差の3位までやってくる。以下京都、千葉、岡山、愛知……、兵庫が34秒差の8位と射程圏内までやってくる。
7区では神奈川の久保田みずきを長崎の徳永香子とがはげしいトップ争い、そのうしろから京都の長谷川詩乃、千葉の伊藤明日香、愛知の太田幸乃、岡山の金光由樹、兵庫の大西ひかりが集団ひとかたまりで差を詰めてくる。
7区を終わったところではトップは神奈川、18秒差のあいだに、長崎、兵庫、愛知、京都、千葉、岡山、長野がはいるという大混戦、ますます優勝争いはわからなくなった。
8区の中学生区間ははげしいつばぜり合いがつづいた。ひとたび兵庫の松尾瞳子がトップに立つが、1.8㎞で京都の村松灯と千葉の橋場さくら抜けだした。残り800mで抜けだしたのはは千葉の橋場、1秒差で京都の村松がタスキをつなぎ、勝負はアンカーにもちこされた。3位以降は長野、長崎、兵庫、神奈川、愛知、岡山でここまでが28秒差である。9区は10㎞の長丁場だから、どのこれらどのチームにもチャンスありという展開になった。

一昨年、昨年とアンカー勝負で敗れた京都、さらに前述のように節目の大会ゆえに、今年はすこぶる気合にみちていたようだ。
京都の・アンカーはヤマダ電機の筒井咲帆、全日本実業団でも快走、いま最も充実しているランナーである。筒井はすぐに千葉の松崎璃子の前に出た。軽快なフォームでひたすら逃げる。雪の中で勝負は京都、千葉のマッチアップの様相だった。西大路をくだるころは猛吹雪である。
京都・千葉の対決に動きがあったのは中間点の手前である。筒井が前に出ると、もう千葉の松崎には追う余力がなかった。差はじりじりとひろがり勝負はついたと思われた。
だが……。28秒差あった岡山の小原怜が猛然と追い上げてきた。残り3㎞で千葉の松崎をとらえると、筒井との差もみるみる詰まってくる。
五条通りにもどってきたときは13秒差、もうその差は60mぐらいしかない。にわかに岡山と京都の間に火花が散り始めた。勢いは追うほうにある。筒井の走りは軽やかなフォームで大きくくずれることはない。差はじりじり詰まるが、かんたんにはつかまりそうにない。差が詰まるにつれて小原のフォームのほうも乱れてくる。
西京極競技場に先に現れたのは筒井にほうだった。小原はさらにはげしく肉薄したが、最後は後ろに気づいた筒井が二の足をつかって逃げ込んだ。その差はわずか2秒、みごたえのあるアンカー勝負だった。

京都は3年ぶり16度目の制覇である。これまで2年連続でアンカー勝負で苦杯をなめている。その悔しさが活きたということか。勢いのあるランナーを1区と2区にならべて好発進、中盤は耐えて、後半の8区、9区で勝機をつかんだ。一般ランナーを4人まで使えるところ3人しか使ってこなかった。菅野七虹、関紅葉という立命館のエースを温存、それでも勝ってしまった。一山、筒井という登り坂にあるランナーがフルに働き、苦肉の策で2区に起用した高校2年の片山が実業団や大学生のトップクラスを区間賞の快走で蹴散らしたのが大きい。きわどい勝負だったが会心のの勝利ではないか。
2位の岡山は惜しかった。1区で20位と出遅れ、中盤ももたついて流れに乗れなかったのが原因だろう。
3位の千葉も終始、上位で戦っていた。優勝争いしての3位だからまずまずといったところ。
長崎の4位は大健闘である。その立役者は4区11人抜きで区間賞をもぎ取った高校1年生・廣中璃梨佳の快走である。
昨年優勝の愛知は5位、今年は戦力からみて健闘したといっておこう。それでも中学生がもう少し踏ん張っていればと惜しまれる。6位の静岡も中盤までは上位を争っていた 神奈川は終始上位にいて、7区まではむしろレースを支配していた。8区、9区で失速したが、優勝争いに絡んだチームであったことを銘記しておこう。
8位の長野は8区でトップがみえるところまできた。中学・高校生が強いだけに、将来、力のある一般ランナーが加われば優勝争いに絡むチームとなるだろう。
候補として注目をあびていた兵庫はかろうして入賞圏内にとびこんだが1区の出遅れで早くも圏外に去った。群馬も1区で出遅れたのがすべて、力のある実業団ランナーに一押しが効かなかった。大阪も1区で44位というブレーキ、これでは勢いが付くはずがない。

総じていえることは、実業団のランナー、暮れの30日に選抜を走った大学生の主力は全般的にいまひとつ精彩がなかったようだ。目一杯のレースをしたあとでオツリがなかったのもしかたのないところか。もともと本大会は中学生、高校生のなかから将来性のあるランナーをみつける大会である。今回もまた高校生の活きの良さに目を奪われた。実業団や大学生のランナーを圧倒した廣中や片山のようなランナーを発見できたのは果報というものである。

 

◇ 日時 2017年01月17日(日)12時30分スタート
◇ 場所 京都市
◇ コース 西京極競技場発着 宝ヶ池国際会議場前折り返し9区間49.195Km
◇ 天候:雪 気温:5.0度 湿度:68% 風:南東0.1m
◇ 京都(一山麻緒、片山弓華、小林舞妃留、和田優香里、又村菜月、谷口真菜、長谷川詩乃、筒井咲帆)
◇公式サイト:http://www.womens-ekiden.jp/
 ◇詳しい成績:http://www.womens-ekiden.jp/pdf/result35.pdf
 ◇京都新聞・号外:http://www.kyoto-np.co.jp/kp/rensai/gougai/pdf/2017011516095118E10P7123.pdf

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青山学院大が3連覇、学生駅伝3冠を達成
分厚い布陣で往路復路ともに圧勝!

 

青山学院大の学生駅伝3冠なるかどうか。
出雲、全日本、箱根……。過去において学生駅伝3冠を達成したチームは3大学である。1990年の大東文化大学、2000年の順天堂大学、そして2010年の早稲田大学と奇しくも10年ごとに出ている。
そして今シーズン
出雲、全日本と圧倒的な強さで勝ちあがってきた青山学院大に千載一遇のチャンスがめぐってきたのである。箱根3連覇と学生3冠となれば史上初の快挙ということになる。
むろん他の大学も黙ってはいない。なにより箱根だけには、ただならぬ執念をもやしている。全日本2位の早稲田、長い距離になれば強みを発揮する東洋大学、さらには駒澤大学などなど……。
青学に1区から先をゆかせてはならじ……。東洋大学は第1区に学生長距離界のエース・服部弾馬を起用してきた。青学の出鼻を叩こうという作戦だ。奇襲というより東洋のこのチャレンジ精神に拍手を送りたい。観戦者のわれらにためにレースをおもしろくしてくれたのだから……。

その注目の第1区、主導権はむろん服部弾馬が握っていた。弾馬がどのように動くか。すべてのランナーは弾馬の動静をみていて、自ら仕掛けては動こうとはしない。
1㎞=3:04、3㎞通過が9:40、これじゃ女子のレースよりも遅い。超スローペースで、横長の集団ですすむ。5㎞で服部弾馬がたまりかねて一気にペースアップ、6㎞では東洋大の服部を先頭に、日本大の石川颯真、東海大の鬼塚翔太がつづき、後ろでは日本体育大の小松巧弥、駒澤大の西山雄介、青山学院大の梶谷瑠哉らが集団を形成る、この集団から早くも山梨学院大の伊藤淑記がこぼれてゆく。
9㎞をすぎても、20チームがタテ長の集団をなしていた。弾馬がハイペースで一気にゆくことを期待していただけに意外な展開に観戦者としてはストレスがたまる。あるいは弾馬の調子がいまひとつだったのかもしれない。
13㎞で服部と日本体育大の小松が前に出てきて、集団が縦長になるなか、関東学生連合の丸山竜也(専修大)と国士舘大の石井秀昂が集団からこぼれてゆき、15㎞をすぎても先頭集団には18チームもいた。どうやらラスト勝負に様相が強くなって、各ランナーは弾馬の顔色をみながらスパート合戦にそなえようという腹とよめた。
レースが動いたのは20㎞すぎである。弾馬と駒澤の西山を先頭に早稲田の武田凛太郎、青山の梶谷、東海の鬼塚でなす集団のスピードが一気にあがった。そして残り1㎞、それまで自重していた弾馬が猛然とスパート、後ろからついてきたのは東海の鬼塚で、ほとんど同時にたすきをつないだ。3位は早稲田の武田、4位は青学の梶谷、5位は神奈川の山藤篤司、6位は駒澤の西山……。ここまでトップからわずか8秒である。青学をはじめ主力校はそれぞれ好位置をキープした。

2区に入ると4位発進の青学・一色恭志がやってきて1.5㎞で早くも先頭を奪う。うしろは東洋大の山本修二、神奈川大の鈴木健吾。4位には東海大の關颯人、5位に早稲田大の永山博基、6位は駒澤大の工藤有生がつづいていた。
先頭集団6人は安定したペースで距離をかさね、そのうしろからは順天堂の塩尻和也、帝京大の内田直斗、中央学院大の高砂大地らが7位集団で追ってくる。
鈴木が關が集団を割ろうとするが、6人の集団はくずれない。権太坂で鈴木が先頭、關がここで遅れ始める。16㎞の下りで鈴木がペースアップ、駒澤の工藤、青学の一色がついてゆくも,早稲田の永山、東洋の山本が遅れた。後ろからは拓殖大のデレセが7位集団から抜けだして追ってくる。
神奈川大の鈴木はその後も快走、青学の一色、駒澤の工藤との差をじりじりとひろげ、先頭でタスキリレー、1時間7分17秒は歴代7位の記録だった。青学の一色は38秒差の2位、3位は駒澤で55秒差、4位には拓殖大のデレサ、5位は帝京の内田、早稲田の永山は6位、7位は順天堂、8位は東洋とつづいた。

3区はたんたんとレースがはこんだ。
注目の青学の秋山雄飛はすぐには動かなかった。ゆっくりとトップをゆく神奈川の越川堅太を追ってゆく。その自信にみちた走りが印象深かかった。
5~6㎞の遊行寺の坂にきて神奈川大・越川と青学・秋山との差は28秒である。後ろの。3位は駒澤大の下史典、4位は帝京大の浜川駿と早稲田大の平和真がならんで追っていた。 トップ神奈川と青学との差がつまりはじめたのは9㎞過ぎからだった。10㎞で20秒を切り、秋山はそこから一気にやってきた。浜須賀では6秒差となり、134号線に出た13㎞すぎで一気に越川をつかまえた。越川はしばらく踏ん張っていたが、14㎞過ぎから遅れはじめ、その差は少しずつひろがってゆく。越川は3位にあがってきた早稲田の平にも追い上げられ、20㎞ではその差10秒を切ってくる。
奪首に成功した青学の秋山はこの区間を1時間3分3秒で駈け抜け2年連続の区間賞、2位には中継所直前で神奈川の越川をとらえた早稲田の平がとびこんできた。トップ青学との差は1:20。3位は神奈川大、4位は東洋大、5位は駒澤大、6位は帝京大。帝京大と青山学院大との差は1:51秒。7位は創価大、8位は日本大と大東文化大、10位は順天堂大とつづいた。ここまで神奈川大、創価大は大健闘である。

待望のトップに立った青山学院大、昨年より2㎞距離が伸びた4区の森田歩希はゆっくりと逃げた。早稲田の鈴木洋平が懸命に追うのだが、その差はつまるようで詰まらない。
後ろからは駒澤大の中谷圭佑と東洋大の櫻岡駿が4位集団で追ってくる。だが中谷のピッチがあがらない。櫻岡は3㎞すぎで神奈川の東瑞基をとらえて3位までやってくるが、駒澤の中谷は完全にブレーキー後続にもつぎつぎととらえられる。
トップをゆく青学の森田はゆうゆうの独走、2位の早稲田の鈴木との差を終盤になってひろげ1:29の差を付けてタスキをつないだ。3位は東洋で1:52の差、帝京大が4位、5位には創価大、6位が順天堂大、7位は神奈川大、いずれもここまで大健闘。駒澤はエースの中谷のブレーキで順位を4つ落として6:18差の9位に沈んでしまった。

青学の5区は貞永隆佑、5キロを16分8秒というゆったりしたペースで坂をのぼってゆく。追う早稲田の安井雄一との差は詰まらず、むしろ10㎞では1:50と開いてしまった。早稲田にとっては前半に追い切れなかったのが痛かった。安井は18㎞から猛追して、最後は33秒差までやってきただけに、もし前半で追って慌てさせていれば、おもしろい展開になっていただろうと惜しまれる。
貞永かゆうゆうと逃げ切って、5時間33分45秒でゴール! 3年連続の往路優勝である。2位は早稲田大で青学との差は33秒。3位は順天堂大でトップと2:24差、4位は東洋大で2:40差。5位には鈴木洋平の快走で4つ順位を上げた駒澤大、以下は神奈川大、中央学院大、上武大、創価大、日本大ととつづいた。
シード圏内突入の上武大、創価大は大健闘。だが今シーズンは復路でタイム差でのスタートがみとめられる10分以内に、11位以下の帝京大、法政大、日本体育大、拓殖大、東海大、山梨学院大までの16チームが入っており、10位の日大から16位の山梨学院大まではわずか、2:02というありさま。復路のシード権争いは例年にまして熾烈なものとなった。

青学の往路優勝、早稲田との差は結果的にわずか33秒だが、復路のランナーの顔ぶれからみて、この時点ですでに総合優勝はきまったといっていい。2位の早稲田は往路に主力をほとんどすべて投入してしまっていた。東洋とは2:40、駒澤とは4:01もの差がついてしまっていた。

それでも33秒差というのが気になったのか、青学は控えに回していた田村和希(7区)、下田裕太(8区)、安藤悠哉(10区)の3人を当日のメンバー変更で投入してきた。もし往路で5分以上の大差がついていれば、エントリー通りで押し切っていただろう。
かくして復路の興味はもっぱらシード権争いにしぼられた。
6区の山下り、青学は小野田勇次が堅実な走りで逃げ、早稲田の石田康幸に追わせず、2:08にその差をひろげた。後続は順位変動がめまぐるしく、13位発進の日本体育大学が秋山清仁の区間新記録の快走で一気に7位までやってくる。12位発進の法政も1年生・佐藤敏也の快走で8位まで押し上げてきた。5位以降13位の上武大まで3分弱となり、シード権争いはますます激しくなった。

しかし7区のハプニングは青学にとっては想定外だったろう。
駅伝は走るたびに区間賞という田村和希に異変が生じたのは16㎞すぎだった。突如、顔つきが苦しげにゆがみ,足もとがよろけだした。1㎞のペースが3:20を超え始めた。脱水状態が顕著、明らかにブレーキである。ひとたびが2:52まで開いた早稲田の井戸浩貫との差がつまりはじめる。
田村はそれでも必死の形相で踏ん張った。だが早稲田の井戸のほうも追い切れなかった。その差は1:21まで詰まったものの、青学の逃走をゆるしてしまったのである。背後では東海大学の石橋安孝が区間賞の走りで順位を4つあげて11位、シード圏内目前までやってきていた。

8区は 青山学院大の下田裕太が区間記録に遅れること16秒という好タイムでたすきリレー、2位の早稲田大との差を5:32秒として独走態勢をきずいてしまった。3位の東洋大は6:38秒遅れ、4位の神奈川大は6:44遅れ、シード権争いは9位の駒澤大と10位の東海大は16秒差、東海大と11位の帝京大とは2秒差、3チームの競り合いがつづいた。

青山はこの8区で後続にとどめを刺した感じで、9区は池田生成、10区は安藤悠哉と堅実につないで堂々の3連覇、最後はチームをまとめてきたキャプテンが学生3冠のゴールにとびこんでいった。

終わってみれば往路、復路ともに青山学院大の圧勝である。往路では2区のエース一色の調子がいまひとつ、復路では7区田村のブレーキがあったものの、ひとつやふたつの紛れがあってもびくともしない。選手層がいやがうえにも厚く、これぞ総合力の勝利といえるだろう。

2位の東洋大は最後に早稲田を交わして2位にくいこんだ。果敢にチャレンジして玉砕したという感じだが、1区に弾馬を配して積極的に仕掛けるなど、その積極的な姿勢は評価されるべきだろう。

3位の早稲田は往路に主力をあつめて往路優勝をもくろんだ。やはり玉砕というべきでその結果、復路が手薄になって9位。総合では3位に終わったが、まあ、しかたがないところか。

4位の順天堂大、5区の神奈川大は大健闘である。ともに箱根を制覇したことのあるチームだがひさしぶりに上位を賑合わせてくれた。

神奈川大と同じく予選会からあがってきた法政大もひさしぶりに8位でシード権を獲得した。往路5位はみごとだった。

期待された東海大は1年生主力の往路でみごとにずっこけた。復路では3年生、4年生が踏ん張って4位にもぐりこみ、みごと総合10位で最後のシード権をもぎとった。惨敗して苦杯をなめた1年生たち、いずれも潜在能力のあるランナーたちだから、その悔しさを生かせば、きっと驚異の的となること必至である。

期待を裏ぎったのは9位の駒澤大、かろうじてシードはたもったものの、往路も復路もちぐはぐな戦いぶりで最後まで浮上できなかった。

山梨学院大はなんと17位、落ちるところまで落ちてしまった。あのエースのニャイロもなんと区間9位というありさま、これでは戦えない。戦う以前の問題があったのだろう。

すでにして来シーズンの戦いははじまっているが、青山学院大の選手層の厚さは図抜けている。来年もやはり青学中心にまわってゆくのだろう。4連覇に待ったをかけるチームが見当たらない。なんとか、「伸び代」がありそうな東海大あたりに期待したいと思うのだが、どんなものだろう。旭化成の例にならって奮起してほしい。

◇ 日時 2017年1月2~3日(祝) :午前8時00分 スタート
◇ コース: 東京・読売新聞東京本社前~箱根・芦ノ湖間を往路5区間(108.0Km)、復路5区間(109.9Km)の合計10区間(217.9km)
◇天気:往路 晴れ 気温:5.0度 湿度:50% 風:北1m(スタート前)
 :復路 晴れ 気温:0.0度 湿度:% 風:西北西m
◇青山学院大学(梶谷瑠哉、一色恭志、秋山雄飛、森田歩希、貞永隆祐、小野田勇次、田村和希、下田裕太、池田生成、中村祐紀、安藤悠哉)
◇公式サイト:http://www.hakone-ekiden.jp/
◇総合成績:http://file.hakone-ekiden.jp/pdf/93_Record_all.pdf
 

 

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旭化成、若い力で古豪復活
後半勝負で18年ぶり22度目の制覇!

駅伝が冬のビッグな観戦スポーツになったのはいつのころからか。テレビでライブ中継されるようになったときからであろう。
マラソンのテレビ生中継は物心つくころからおこなわれていたが、駅伝のテレビライブがはじまったのは、それほど昔ではない。
1979年の高校駅伝(NHK)が最初だから、およそ38年まえからだということになる。続いては1983年の全国女子駅伝(NHK)である。日本テレビの箱根駅伝は1987年、TBSの全日本実業団駅伝は1988年の第32回大会からである。
駅伝のテレビ放映ビッグ4の相乗効果により、いまや駅伝ライブは高視聴率番組になるとともに、良くも悪くも陸上競技としてもカラバコス化していったのである。

ビッグ4の一角・全日本実業団駅伝がテレビ放映されるようになったのは第32回からである。奇しくもコースが滋賀県から群馬県に変更され、開催日も1月1日となって、ニューイヤー駅伝と称せられるようになった。伊勢や彦根で開催されていたとき、さらに群馬開催となっても全長84~99㎞だった。7区間全長100㎞の現在のコースになったのは2001年の第45回大会からである。

古豪・旭化成がいつから優勝から遠ざかっているのか。調べていると1999年の3連覇を最後に優勝戦線から姿を消している。つまり現在のコースになってからは、いちども制覇がないということになる。

過去62回のうち21回優勝……。つまり旭化成は3回に1回、優勝チームとして名をなしてきた。だが新世紀になってから、コニカミノルタ、富士通、中国電力、日清食品などに名をなさしめてきた。もはや忘れられた存在におとしめられた感ありの昨今だったが、今回、18年ぶりに返り咲き、古豪がみごとに復活を果たしたのである。

本大会は7区間だが、1区~3区までを、ひとつの区間と考えたほうが分かりやすいだろう。1区は12.3㎞、2区は8.3㎞、3区は13.6㎞だが、2区は外国人特区である。唯一、外国人が走ってもよろしいという区間になっている。1区の順位は2区の外国人同士の競り合いでガラガラポンとなり3区を終わったところで、ようやくレースの流れがみえてくる。本大会はそんな構図である。
3区を終わった時点にどのポジションをキープしているかが、レースの行方を占う指標になるようである。

第1区のペースはどんなふうになるのか。もっぱらの興味はそこにあった。
3連覇を狙うトヨタ自動車は藤本拓、コニカミノルタは設楽啓太、Hondaは田口雅也、旭化成はリオ五輪日本代表の村山紘太、日清食品は好調の戸田雅希など、スピードランナーがそろった。
1㎞=2:50の入りで旭化成の村山紘太が先頭に出て集団を引っ張り、2㎞では縦長になる。後ろにつけたのは藤本拓、田口雅也、中国電力の山崎亮平など。
5㎞は村山が先頭で14:25で通過、日清食品の戸田雅稀、カネボウの文元慧らも前に出てくる。
村山は終始、積極的に動くのだが脱け出すことができないまま、8㎞になって藤本、田口とともに並走状態となる。
10㎞で愛三工業の山口浩勢がスパートをかけて集団を割ったが、藤本、田口らがすぐに追いついてしまう。11㎞では安川電機の古賀淳紫が先頭にとびだし、山口がこれを追いかけてゆく。
レースが動いたのは12.3㎞だった。先頭集団は10人前後になったが、機をうかがっていたのか、ここで日清食品の戸田が一気に抜けだして、そのまま中継点になだれこんでいった。
2位は1秒遅れで、カネボウの文元慧、3位は2秒遅れで九電工の東雄馬、トヨタ自動車の藤本は9秒遅れの10位、、Hondaの田口も9秒遅れの11位、前半ひっぱった旭化成の村山紘太は11秒遅れの13位、コニカミノルタの設楽啓太は32秒遅れの28位とブレーキー気味におわった。

2区の外国人特区で目立ったのは21位でたすきをうけたDeNAのビダン・カロキである。6㎞ですでに17人抜き、4位にあがり、先頭をゆく上がる。先頭をゆく九電工のポール・タヌイ、日立物流のジョナサン・ディク、日清食品グループのバルソトン・レオナルドとの差をつめてゆく。
疾走する黒人ランナーたちにしばしみとれているうちに、誰が誰なのか分からなくなってしまった。
7㎞すぎでトップ集団は割れ、タヌイとディクが飛び出し、レオナルドが遅れ始める。そのレオナルドをカロキがとらえる。
かくしてガラガラポンに2区では日立物流のディク、九電工のタヌイの順でタスキをつなぎ、3位には18人抜きのDeNAのカロキとつづき、トヨタ自動車は1:20遅れの23位、コニカミノルタは41秒遅れの12位、日本人ランナー・鎧坂哲哉を起用した旭化成は1:11秒遅れの20位というハンディーを背負う結果となった。


3区はめまぐるしかった。
トップを行く日立物流の牟田祐樹、2位は九電工・濵口隆幸、3位でたすきをもらったDeNAの上野裕一郎があっというまに差を詰めてくる。濵口に追いつき、4㎞では牟田をとらえて先頭に立ってしまう。上野はまさに快走、後続との差をひろげるなかで、7㎞すぎ、23位発進のトヨタ自動車の大石港与が10位まで順位を上げる。
3位争いは日清食品グループの小野と愛三工業の石川、5位集団はHondaの山中秀仁、ヤクルトの小椋裕介ら6人、そのなかからコニカミノルタの菊地賢人が前に出てくる。11㎞になってトヨタ自動車の大石が3位集団に追いつき、一気にすりぬけ、2位の牟田に肉薄する。
トップ上野の勢いは衰えず、2位の日立物流の牟田に59秒の差をつけて中継所へ、4秒差でトヨタ自動車の大石、6秒差で4位はコニカミノルタ、1分6秒差で5位HONDA、1分9秒差で6位日清食品、旭化成は大六野秀畝が区間3位の走りで1分12秒差の11位までやってきた。このあたりまでが圏内か。いよいよ4区からの優勝戦線のヨーイドンが始まるのである。

4区は最長区(22㎞)だけに、やはり最も見どころが多かった。
先頭はDeNAの高木登志夫、トヨタ自動車の服部勇馬、コニカミノルタの神野大地、日立物流の日下佳祐が2位グループで追い、すぐ後ろにHondaの設楽悠太が追ってくる。2.5㎞で設楽が追いつき、服部とふたりで抜け出して、トップの高木を追い始める。

後ろからは旭化成の市田孝が5㎞で6位グループのトヨタ自動車九州の今井正人、日清食品の村澤明伸、MHPSの井上大仁に追いつき、するすると前に出てゆく。市田の軽快な走りがひときわ眼を惹いた。
12㎞で2位集団の服部勇馬が設楽悠太との差をひろげトップの高木を追いはじめ、その差がどんどん縮まってゆく。遅れた設楽悠を旭化成の市田とコニカの神野が13㎞で追い抜いてゆく。設楽悠は失速してブレーキ状態となって落ちていった。
トップをゆくDeNAの高木はしぶとかった。19㎞あたりから二の足をつかって、追ってくる服部勇を突っ放した。後ろでは4位の神野に今井、村澤、井上が追いつき4位集団で3位の市田を追い始める。21㎞になって今井と井上が3位の市田に追いついた。
後続の激闘を尻目にDeNAの高木はトップをまもり、3秒差で2位はトヨタ自動車の服部勇、11秒差で3位はMHPの井上、14秒差でトヨタ自動車の今井、17秒差で旭化成の市田、22秒差で7位は日清食品の村澤、38秒遅れで日清食品の神野とつづいた。
優勝争いはこの上位7チームにしぼられ、5区以降にゆだねられたのである。

5区で積極的な動きをみせたのは旭化成の村山謙太だった。
2位発進のトヨタ自動車の早川翼がすぐにDeNAの永井秀篤をとらえたが、後ろからは3位争いを演じながら旭化成の村山謙太が、MHPSの松村康平、トヨタ自動車九州の押川裕貴をひきつれてあがってくる。3位グループは3㎞すぎで早くも永井をとらえて2位グループとなる。さらに4㎞ではトップの早川もとらえてしまう。
集団の主導権をにぎっていたのは村山だった。4区で区間賞をもぎとった市田孝の勢いをひきついだかのようにトップをうばうと、9㎞でスパート、引き離せないとみると、ひとたび自重して、11㎞で再びスパートをかけた。押川が粘ってついてきたが、15㎞でまたしてもスパートをかけ、そのまま押し切った。
村山の区間賞で旭化成は待望のトップをうばい、7秒差でトヨタ自動車九州、24秒差でトヨタ自動車、コニカミノルタには45秒差をつけた。一気に流れに乗った。

4区~5区で一気に流れに乗った旭化成、その好リズムは6区にも引き継がれ、市田孝の弟・宏が快走した。2㎞ではひとたびトヨタ自動車九州の奥野翔弥に追いつかれたものの、安定した走りで3㎞すぎで突き放して、独走状態にもちこんだ。終わってみれば区間新記録……である。
旭化成はこの市田宏の快走で3連覇をねらうトヨタ自動車に58秒差、3位のトヨタ自動車九州以下に2分以上の差をつけ、勝利をほぼ決定づけたのである。最後の総仕上げはマラソンランナーでベテランの佐々木悟、安定した手堅い走りで、18年ぶり制覇のゴールへとびこんでいった。

旭化成は若い力が爆発した。村山兄弟、市田兄弟、鎧坂哲哉、大六野秀畝……、いずれも箱根駅伝のスターたちである。陣容的にみて、ほんとうは昨年優勝しても不思議はなかった。7位に甘んじてのは若さが裏目に出たのだろう。かれらがたがいに競い合って、ようやくホンモノになってきた。とくに今回はツインの村山兄弟、市田兄弟がフルに力を発揮した。とくに市田兄弟と村山謙太の自信にみちた面立ちが印象深かった。
18年ぶり22度目の制覇、古豪復活ははからずも若い力によってもたらされた。外国人がいないチームであることも清々しいものがある。
2位のトヨタ自動車は3連覇を逃したが、ミスがあったわけでもない。旭化成がその上をいったということだろう。ランナーたちはそれぞれ力を発揮している。強いてあげれば2区の外国人の調子がいまひとつで勢いがつかなかった。
3位のトヨタ自動車九州は前回につづいて3位、4位のMHPSとともに健闘したといっていいだろう。
コニカミノルタの5位は1区設楽啓太のブレーキがすべて。Hondaは前半で流れに乗れず、ちぐはぐな闘い終始、11位はしかたのないところだろう。
それにしても……
優勝した旭化成は選手層がいかにも厚そうで、しばらくは旭化成の時代がつづくのかもしれない。


◇ 日時 2017年 1月 1日(金=祝) 9時00分 スタート
◇ 気象 天気:快晴 気温5.7 湿度61% 西北西0.8m
◇ コース:群馬県庁スタート~高崎市役所~伊勢崎市役所~太田市尾島総合支所~太田市役所~桐生市役所~JA赤堀町~群馬県庁をゴールとする7区間100km
◇旭化成(村山鉱太、鎧坂哲哉、大六野秀畝、市田孝、村山謙太、市田宏、佐々木悟)

▽TBS公式サイト:http://www.tbs.co.jp/newyearekiden/
▽総合成績:http://gold.jaic.org/jaic/res2017/nyeki/pcsp/61results.pdf

 

 

立命館のリベンジ成る!
4年生の4人が踏ん張った!

 

7区間43.8㎞
別名:富士山駅伝とよばれる本大会は女子の数ある駅伝のなかで最も総距離が長い。最長区間も5区の10.9㎞であり、全日本と肩をならべる。高低差のある区間が多く、とくに最終7区は166mもの高低差があるというきびしいコース設定がなされている。スピードとスタミナが問われる苛酷な大会である。
第4回をかぞえる本大会、これまで立命館が3連覇しているが、今シーズンは先の全日本で松山大学に不覚をとり、さらに名城大の台頭もあり、勝負のゆくえはまさに混沌、それゆえ例年になく目が離せない大会となった。

全日本を制した松山大が余勢を駆って立命館大を退けるか。それともエリート集団の立命館がプライドにかけてリベンジを果たすか。近年にない興趣つきないレースだった。
レースの終わったいま、顧みると、いかにもサプライズのおおい大会だったな、という感ありである。
第1のサプライズは前日発表の区間オーダーである。
立命館のオーダーをみて、「なに!」と思わず声を上げそうになった。準エース格というべき関紅葉、太田琴菜の名前がない。さらに1区で来ると思われた4年生エースの大森菜月が最短区間の3区に回っている。最長区の5区だろうと思われた菅野七虹が2区にはいっている。ようするに立命館の2本柱がともにベストの状態ではないということだ。結果、5区にはそれほど長い距離に実績のない和田優香里、急坂のある難所の7区には3年生でありながら、いままで主要なレースに登場していない松本彩花を配するというありさまである。
松山大のほうは全日本で活躍した緒方美咲が外れたぐらいで、ほぼベストの顔ぶれである。
5区から7区までの顔ぶれを比較してみると、明らかに松山が優勢、立命館の劣勢は否めないとみた。1区から4区までに立命館がリードしても後半は松山に逆転されるだろう。松山の圧勝か。そんなふうに思われた。

第2のサプライズは第1区、松山大:高見澤安珠の飛び出しである。
全日本を制しても、まだまだ挑戦者の姿勢を貫くというのか。松山大は積極的に動いた。スタートして松山大の高見澤が1㎞で集団を割った。1㎞=3:15のペースなら、まずまずだが、高見澤の果敢な走りで1㎞すぎで速くもタテ長の展開になったのである。
前半でリードを奪おうという立命館の作戦を読んだうえで、その出鼻を叩こうという腹づもりだったのだろうか。立命館の1区は1年生にして5000mで学生最速の佐藤成葉である。相手を経験の浅い1年生とみて虚を突いて出たというわけか。
飛び出した高見澤に東日本選抜の出水田真紀が反応、立命館も黙ってはいない。2㎞をすぎたあたりで佐藤が追い始めた。佐藤は残り1㎞で一気にやってきた。かくしてレースは早くも立命館と松山のマッチアップの様相になる。最後は3000障害で鍛えた高見澤のスタミナが生きたのだろう。高見澤は粘り勝って6秒先んじた。
1区を終わったところで、トップは松山、2位は6秒差で立命館、3位は17秒差で城西と大健闘、京産と名城は25秒以上の遅れで5位、6位と出遅れた。


立命館と松山はマッチアップ、2区もびっしりと肩をならべる並走がつづいた。だが今シーズンの菅野七虹はいまひとつキレがない。松山の高見沢里歩に煽られぎみで、残り1㎞で高見沢が前に出ると、もう,追いすがる勢いはなかった。菅野はそれでもけんめいに粘り、なんとか12秒差でタスキをつないだ。
1区で先手をとり、2区では追いすがられたが突き放してリードをひろげた。流れは完全に松山に傾きそうだった。そんな負の連鎖をくいとめたのが菅野と同じ4年生・大森菜月である。
エースといわれながら繋ぎの区間にしか出られないもどかしさがあっただろうが、松山の藤原あかねをじりじりと追う上げる。焦らず逸らずの走りはみごと、さすがエースである。残り200で背後につくと、あと100mで逆転、トップでタスキを4区の池内彩乃につないだのである。
松山の4区・古谷奏はすぐにトップを奪うも、池内は背後にピタとへばりついて離れない。心理的プレッシャーをかけるところ、いかにも老獪で4年生らしい。池内は勝負所の2~3㎞を3:20とペースをあげると、古谷はじりじりと置いてゆかれた。前半は押さえて後半は突きはなすという池内の走りが光った。大森につづいて池内の連続区間賞で立命館はここで松山に15秒差で単独トップに立った。

第3のサプライズは最長区間の第5区である。
松山の5区は中原海鈴、先の全日本では5区で奪首、初制覇の立役者になった。今回も眼をゆく立命館の和田優香里との差はわずか15秒である。力の比較でも中原に分のある展開である。
中原は独特の前傾姿勢、虎視眈々と獲物を狙う豹とおぼしき雰囲気で和田をおいかける。だが……。その差が詰まらない。後半勝負かと思われたが、逆に、じりじりとその差がひろがりはじめたのである。
中原の異変を察知したとき、名城の赤坂よもぎが後ろから猛然とやってきた。中原は7㎞で顔がゆがみ、完全にブレーキ状態。脱水症状なのか。8㎞では赤坂につかまってしまい、後続の大阪学院の新井、京産の棚池穂乃香にもとらえられ、9㎞すぎからは夢遊病者のようにさまよいながら……。
中原の思いがけないブレーキによって立命館の和田は区間7位ながら、トップを独走、4連覇の道筋をひらいたのである。

2区、3区、4区の4年生で流れを変え、5区で2位にやってきた名城に41秒のアドバンテージを得た立命館、6区も4年生である。園田聖子が軽快に逃げて区間2位、2位の名城との差を64秒とひろげてしまった。
7区アンカーの立命館は駅伝初登場の松本彩花、トップをゆきながらも、最少からハイペースで突っ込んでゆく。そんな攻めの走りが印象に残った。惜しくも区間賞はのがしたものの、追ってくる名城の玉城かんなを完全に突っ放して、笑顔でゴールにとびこんでいった。

立命館はこれで4連覇、みごとに全日本のリベンジを果たした。ベストメンバーが組めず、主力が故障をかかえていても、代わりに出てきたランナーがみんな、ちゃんとそのアナをうめる。今回は池内、園田、松本、いままで脇役に甘んじていたランナーが輝きを放った。いかにも層の厚いチームだな。

2位の名城は今回も大健闘である。松山の自壊によってめぐまれた面もあるが、着実に力をつけており、来年以降も3強の一角を占めるだろう。

松山も立命と同じく区間賞3つ、中原のブレーキがなければ最後まで立命とはげしく競り合っていただろう。だが中原中心のチームなのだから、彼女で負けたのならいたしかたがなかろう。どこかで大きな紛れが出る。そのあたりが、まだチームとして未熟なのであろう。

4連覇の立命館は大森、菅野、池内、園田など今回の主力をなしたランナーがこぞって卒業する。松山も中原、上原など4年生がいなくなる。ところが名城は今回のメンバー全員が残る。今年以上に驚異の存在になりそうだ。
いずれにしても来年もこの上位3校、今回以上に激しくしのぎを削ることになりそうだ。

 

◇ 日時 2016年 12月30日(金) 午前10時00分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
 富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:07.2度 湿度:56% 風:北西1.7m
◇立命館大学(佐藤成葉、菅野七虹、大森菜月、池内彩乃、和田優香里、園田聖子、松本彩花)
◇公式サイト:http://www.fujisan-joshiekiden.jp/index.html
◇結果:http://www.fujisan-joshiekiden.jp/press/result.pdf