立命館大学が2年連続7度目の制覇! 
     死んだふりして仏教の寝首をかいた!



 大学女子の駅伝は第30回目をむかえる。ほんとうなら、出場チームをもっと増やすなど、記念大会らしいイベントをもりこむなど、大会をもりあげるべきだろうが、たった2チームをふやしただけで、これといった趣向もない。なんともお寒いかぎりである。


 女子駅伝そのものの退潮傾向を如実に反映しているように思える。そもそも大学女子の駅伝は、それほど注目をあびるレースではなかった。長距離の実業団システムが有効に機能していたころ、高校駅伝の有望な選手はみんな実業団に行ってしまった。実業団から声がかからなかった選手が大学にやってきたのである。


 ところがバブルがはじけて、実業団システムが機能しなくなってしまうと、実業団各チームが解散したり、あるいは選手保有のワクが少なくなってしまい、有望なランナーといえども実業団でひろってもらえないケースが出てきた。


 そういう力のあるランナーが大学駅伝にやっててくるケースがふえて、一時は大学の女子駅伝も活気あふれるものとなっていた。ところが一昨年あたりから、またもとのもくあみサエない日陰のレースにもどりつつある。


 それは実業団システムそのものが完全に崩壊してしまったからである。景気のいいときにはテレビ放映で露出度の高い駅伝に注目して、巨大企業の多くがチームを持ってバンバンと強化資金を投じたが、ところが時移り、そんな時代は今は昔の話になってしまった。


 女子長距離に冬の時代がやってきて、競技そのもののすそ野がせまくなった結果、大学の女子駅伝はふたたびかっての日陰者にもどってしまったように思えてならないのである。選抜駅伝が昨年から中止になったのもそのあらわれである。


 30回記念の本大会をみて、まず最初に感じたのは、すいぶんと小粒な選手ばかりになってしまったなあ……。大学女子駅伝をひっぱってきた立命館大、仏教大にしても、ちょっと眼に付つく選手ならいるが、抜けた存在の選手がいないのである。


 実力が接近して群雄割拠の時代と言えば聞こえがいいが、要するにドングリの背比べで低レベルで背比べをしている。そんな印象が強かった。ひさしぶりに本戦にもどってきた筑波大のルーキー久馬ツウィンが目立つようでは、なんともやは底が淡いといわねばならないのである。


 レースは2強といわれてきた立命館と仏教の因縁の対決はどうなるのか。主力を故障で欠いたとはいえ、予選で4位と惨敗した立命館の巻き返しはあるのか。仏教大が圧勝で王座奪還を果たすか。関東予選を制した筑波大がどこまでやってくるか。もっぱらそのあたりが興味のマトだった。


 大会まえの下馬評では仏教大圧勝のムードだった。事実、いつも出だしでしくじる仏教大が1区で好発進、2区の前半で早くもトップに立った。2区は竹地志帆ならさらに仏教に流れが傾くかと思われた。ライバルの立命館は故障上がりの藪下明音で、いくら実績のある藪下でも故障上がりのポン駈けでは苦しかろうと思われた。


 ところが……
 藪下はじりじりと追い上げ、のこり1.8㎞で竹地をとらえてしまった。藪下は中継点では竹地を8秒も置き去りにしていた。故障の上がりのキャプテンがこの快走ぶりならば、タスキをもらった3区の津田真衣にも好リズムをもたらしてしまう。駅伝とはそういう競技である。逆にトップで来るものと思っていた仏教の3区のランナー森知奈美にすれば「なんでこうなったの?」というわけで、そういう意識のギャップがモロに出てしまったようである。


 3区を終わったところでトップ立命館と2位仏教との差は43秒というとんでもない大差がついてしまった。かくして勝負はレース半ばですでにして決したのである。仏教にしてみれば、まるでワケが分からなかっただろう。


 藪下の快走が瀕死の立命館を救ったといえそうだが、仏教大にしてみれば、まさに死に馬に蹴られたというところではないか。両校の力の差はほとんどないのだが、それだけに、今回はたまたま駅伝のレースというものをよく心得ている立命館が勝負の流れをつかんだというところだろう。


 ほかではかつて3強の一角をなした名城大は1区で出遅れて7位まで順位を落として,シード権すらうしなった。かっての覇者・京産大も後半失速して8位に沈んだ。関東の雄・城西大も元気がない。


 3位までやってきた久馬ツインのいる筑波大、来年は候補の一角にからんでくるか。さらに5位にやってきて初シードの大阪学院大あたりに、来年はもう一押しがあるかどうか。上位が低空飛行すれば、このあたりにも上位進出のチャンスはあろう。


◇ 日時:2012年10月28日(日)午後0時10分スタート
◇ 場所:宮城県仙台市
◇ コース:宮城野区・宮城陸上競技場をスタート、太白区・JR長町駅前、青葉区・宮城学院女子大前などを巡り、市役所前市民広場にゴールする。6区間計38・6㎞。
◇ 天気:くもり 気温:16.0度  湿度:75%  風:南 3.0m
◇立命館大学(池田睦美、籔下明音、津田真衣、菊池文茄、鈴木美乃里、三井綾子)
◇詳しい結果 http://www.iuau.jp/ev2012/30weki/rel001.html