「WOMAN」第1話のオンエア、見ました。
ドラマの出来不出来は脚本に依るところが大きいけれど、それでもやっぱり完成した映像を見てみるまでは分からない。
キャストの演技と演出、美術、衣装、音楽、カメラワーク。それらの要素がきちんと物語を伝えられるのか、台本どおりなのかそれとも台本を超えるのか、毎クールどきどきしながらスタートを心待ちにしています。

「WOMAN」は全ての要素が期待以上のものでした。
演出は不幸をことさらに煽るわけでもなく、基本的にキャストの演技に委ねて、でもここぞというときに映像効果を使う。
駅のホームで下の子を乗せたベビーカーが階段から落ちる瞬間のスローモーションと無音。私も実体験で、階段を下っていた息子が頭から落ちて転がっていたとき、心臓が止まるかと思いました。そういう絶望と焦燥に支配された一瞬を、これしかないというカメラワークで捉えていたと思います。実はベビーカーには乗っていなくて無事だったというオチまでカット切り替えなしに見せた点も含めて。

衣装は小春が背負って歩くリュックを、亡き夫(小栗旬)が遺した登山用のディパックにして、色は鮮やかなブルーで、どの場面でも目立つようにして。
ヘアメイクは現在の最初の場面から、ヒロイン小春(満島ひかり)の目の下にクマを作って、体の不調を匂わせて。生活がどんどん困窮していくにつれて、美容院にも行けない小春の髪はボサボサになって、長いままで。

物語を語るどの要素も素晴らしいんですが、中でもやっぱり小春役の満島ひかりが圧巻でしたね! すごい女優さんになったなぁ(演技を初めて見たのは仮面ライダー電王にゲスト出演して佐藤健と共演したとき)。
小春の持つ強さ、優しさ、屈折、恋情。それらを完全に内面化して演じて、何よりも圧倒されたのが後半、余裕を失くしたときの演技。
実母(田中裕子)に20年ぶりに対面し、「母性がほしいのは、母親の愛がほしいのは女のほうだ」と叫ぶところはもう演技に見えませんでした。
これが実はとても難しいはずで、坂元裕二脚本の特徴でもある長セリフ&自分語り。1月クールの「最高の離婚」でも、重い過去を打ち明ける長セリフがよく出てきましたが、「最高の」のキャスト4人を超えましたね。尾野真千子でさえ「あ、長セリフを語っている」と思わせる瞬間があった(ある意味、演劇的な演技)のに対して、満島にはそれを感じませんでした。つまり完全に役の内面から出た言葉として、言えていた。すごく技巧的なセリフでもあるのに。
そして、お金がなくなり食事も満足に食べられなくなってやせ細り、シャツの中で泳ぐ体。それでも曲げられないプライド。
全身全霊で演じていると思いました。

ここまで体当たりの演技を見るのは、ここ数年の連続ドラマではなかった気がします。
これは最後まで見守らないと!


★第1話の印象的なセリフ
「結局、シングルマザーが並みの生活手に入れるには、二つに一つしかないんですよ。風俗か再婚」


このセリフ、最初に聞いたときは極論だろうと思いましたが、実際、私の周囲のシングルマザーも再婚する人が多く、知り合いの男性に聞いたらキャバクラ勤めなんかをする人もいるみたい。現実は厳しいです。ちなみに第三の選択として「親がかり」(親に扶養してもらう)という手もあるけれど、実母との確執ゆえにそれもできず、亡き夫への愛ゆえに再婚も考えられない小春は、本当にハードな境遇にいるんですね。