『ネオ・ウルトラQ』第9話「東京プロトコル」解説 | 多言語マスターを目指して

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今回は以前と同様オープニングクレジットが横書きだ。

まず、劇中東京で開催されたとされている地球サミットというのはこれまで実際には3回開催されている(1992年にリオ・デ・ジャネイロで、2002年にヨハネスブルグで、2012年にふたたびリオ・デ・ジャネイロで)。

そして、東京の地球サミットで採択されたとされている東京プロトコルは1997年に京都で採択された「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」(京都プロトコル)を意識したものだろう。

今回は3人のレギュラーがまったく登場しない。これは東京プロトコルのような厳格な国際ルールが定められるようになるのが数十年後の未来だからだろう。

今回多くの視聴者を悩ませるのは今回の結末はハッピーエンドなのかどうかという点だと思われる。今回の監督の田口清隆は雑誌『宇宙船』139号53頁で「この話は、オチも含めて不条理な話」だと語っている。この一言からもある程度想像はできるが、「不条理」というのがどう意味なのか考えてみたい。

今回登場した怪獣は吸引怪獣プラーナと呼ばれる。プラーナ(prana)とはサンスクリット語で呼吸、息吹という意味だ。ただ、古典語たるサンスクリット語の単語の意味を現代語のように理解するのは不正確で、ここでいう息吹というのは中国語の「気」に近く、生命エネルギーだと理解したほうがいい。

さて、怪獣プラーナは温室効果ガスを吸って成長し、やがて形態変化を起こした後、爆発して開花した。このことからもわかるように、怪獣プラーナは「怪獣」と呼ばれてはいるが動物ではなく植物だ。

開花した怪獣プラーナの姿をよく見ると、これは樹木ではなく草花である。草花は通常花を咲かせた後、枯れる。怪獣プラーナが枯れれば、膨大な量の温室効果ガスを吸収してくれるものはなく、日本は怪獣プラーナが存在していた時のような経済成長は不可能となる。こうして、プラーナ景気は一時のあだ花と化すのである。

田口監督の言う「不条理」とはこういう意味だと思われる。したがって、今回の結末はハッピーエンドだとは解釈できない。さらに言えば、ラストシーンのBGMもこの解釈の根拠になりうると思われる。BGMはサンバではあったが、陽気なメロディーではなく、どこか不気味な感じだった。