市場を覆うペトロリスク2 ‐FRBと市場のテーマは雇用から石油へ‐
少々前には、原油暴落からの市場不安を記載した記事、ペトロリスク (石油リスク)を更新させて頂いた。そしてその次の日(8日)には、シェール開発のWBHエナジー(テキサス州)がチャプター11申請とともに経営破たんしている。
WBHエナジーは、5000万ドルの負債に原油暴落が圧し掛かり、資金繰りが悪化したという事になる。前回記事(ペトロリスク)で触れたように、エネルギーセクターのシェール開発費はハイイールド債発行や借入金に依存しているため、自社株買いで高まってきた株式バリュエーションとは裏腹に、ジャンク債市場と貸出銀行のデフォルト懸念が高まってきた。
今現在原油先物価格は45ドルに近づいてきており、原油フリーフォールは止まらない状態、市場心理に影響しており、米株は低調となっている。
過去3ヵ月で観た場合には、それほどでもないように映るが(上)、原油価格(WTI原油先物ファンド)が、エネルギーセクター(iシェアーズ米国エネルギーETF)、ジャンク債市場(iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド )、12月FOMCののち吹き上がった米株(ダウ平均)の上値を抑え込んでいる事が分かる。ちなみに、iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド におけるエネルギー企業保有率は13.3% と若干低め。
Bloombergによれば以下。
米企業利益への悲観高まる-原油安で増益率予想引き下げ (1月12日)
株式投資家が原油安の恩恵が経済に波及するのを待っているのにもかかわらず、最近目に入るのは下向きの動きばかりだ。
ブルームバーグが集計したアナリスト6000人余りの予想によると、S&P500種株価指数構成企業の1-3月(第1四半期)の増益率見通しは3カ月前から6.4ポイント下方修正された。引き下げ幅は2009年以来で最大。下方修正は10業種中9業種に広がっており、エネルギー関連企業が最大の引き下げ となった。(Bloomberg)
---------------------------------------------------------------
石油大手のコノコフィリップスが今年の設備投資額を減少させた事が話題になっていたが、銀行は原油暴落を受け、エネルギーセクター企業に返済計画の見直しを求めている。WIT原油先物価格は今現在、45ドルを限りなくプッシュしており、生産ヘッジですら十分でなく資金力乏しい中小企業は採算が取れなくなり投資抑制、ともすれば破綻連鎖を余儀なくされそうだ。
ベーカーヒューズ石油情報の直近の9日データによれば、石油リグ稼働数は前週比61基減と24年ぶりの大幅縮小との事。リグ稼働数は1421基で5週連続の減少、シェールオイルやシェールガスの掘削に使用される水平リグの稼働数は35基減の1301基だった。減少は7週間連続で1991年以降で最大の落ち込みとの事。(ロイター)
ただ、中小シェール開発企業のデフォルト懸念をよそに大手シェール企業の中には米エネルギー省のアナウンスを裏付けるかのように、増産姿勢を変えていない企業も目に付く。いずれにしても原油価格の暴落がどこで底打ちするのか、見極められないうちは市場心理は改善しにくい気配が漂っている。
日本株をリードする海外投資家にしても米市場がこのような状態になれば、運用リスク(ここでは日本株投資)を取りにくく、為替ヘッジ(円売り)の解消(円高)に向かわざるを得ない事になる。
FRBとて難しいだろう、当ブログでは米インフレ率が抑制されている事から、一般的な見方よりは利上げは後ずれするという見方だが、昨年発表された(FRBがターゲットとする)11月米インフレは1.166%だった。雇用改善に兆しが見えている今、利上げ論争が高まっていたが、賃金上昇率は低調を極めており、それに加え、今度は物価上昇の面が再度フォーカスされそうな気配。
先日発表された12月議事録においてもエネルギーによる物価抑制は一時的、としていたが、根拠薄くそれは誰にも分からない。欧日とてエネルギー下落でデフレ基調となっている。低インフレとともに、株価の低迷が長引くようだと資産インフレからの景気回復を見込んできたFRBにとっても再度ジレンマに陥る事になるだろう、つまり簡素にまとめるとすれば
原油下落→インフレ率低迷とともにエネルギー株下落→米株・日本株低迷→やや円高→米利上げ後退→円安抑制 といった流れか。