円安を阻む当座預金残高ターゲット
ユーロは、2日の理事会が俄然注目を集めているが、上げ下げ2つの要因に、常に挟まれている印象で、イタリア新政権における政策の行方なども注目になる。
ドル円レートは、世間的に105円、110円と言われていた時期において、当レポートでは「100円遠し」をテクニカルな理由を根拠に主張していた。米財務省の為替報告書が材料視され、その後のワシントンG20にてそれが帳消しとされた格好になったが、そのまま(円安)トレンドを築くには薄すぎた。米国容認は円安トレンドの前提にはなれども、米国が容認しようがそうでなかろうが、米国の事情自体が問題だ。
米国のディスインフレ を1人主張し続け長らく経つが、先日、米商務省から発表された米3月PCEデフレーターは1%を割り込んだ。(1.0%と報道されているが、正確には0.97%)
昨年から継続するインフレ離れだが、10年債利回りは1.6%台まで落ち込んでおり、その兆候は消費者物価の構成品目に(昨年から)よく出ている。現在もそうだ。
黒田日銀は、実質的な意図である円安推進について、当座預金残高をターゲットとしているようだが、一層の円安にしたいのであれば(世間一般の認識とは違い)、逆に当座預金を減らさなくてはならない。(ここでは、マネーサプライを増やすという意味合いでは無い)
経済評論家の中には、未だに「量を増やして希薄化」などといった事を吹聴している人がいるが、日銀がベースマネーに具体的数値目標を置く事それ自体が、彼らの目論みを阻む事になる。過去数年間、日銀はベースマネーを拡大してきたが、それを根拠とした円安はトレンドを築く事はできなかった。言いたいのは、過去と同じ「器」の中にマネーを拡大しても通貨安になるとは限らない、という事。「器の形」自体を変えなくてはいくら印刷しても徒労に終わる、といった兆候が出ている。
無制限緩和でのマネタリーベース目標政策には、円安を阻む側面がある事を、日銀高官自身が知る必要がある。 知っているのかも知れないが、言わないだけの委員もいるかも知れない。政治家は当然知らない。