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「空虚なアイデア」 ‐名目GDPターゲット-

インフレ操作と失業率に相関性が見出せない現在、米国の一部の学者から、「インフレターゲットを止めてGDPをターゲットにすべき」との見解が出ており、これが日増しに大きく扱われるようになってきた。いわゆる名目GDPターゲット論だ。


インフレ率、たとえばPCEインフレやCPIインフレが、FRBが望ましいとしている「2%弱」に到達したとしても、雇用情勢に何ら変化は無い、と当ブログでも繰り返し述べてきた。実際にそのような状況が、更なる政策実行に歯止めを掛けている状況が続いている。


前回同様 、今月のFOMCでの経済見通しでも、「物価が上昇しても経済成長と失業率は改善しない」という状況が鮮明となっており、どちら(GDPと失業率)もインフレ予想と相反する見通しとなっている。 以下は11月FOMCから。


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2012年以降のインフレ予想は、今年と比較した場合穏やかなインフレとなっているが、これは以前にも言及したとおり、「量的緩和」を前提としていない見通しとなっている。(ここポイント)

ただ、それでもFRBが望ましいとする2%弱を保っている事が確認できる訳だが、GDPと失業率はどちらも(6月から)下方修正、といった具合だ。GDPは落ち込む見通しで、失業率は上ブレする。 要するに、インフレターゲットが役に立っていない事を公に認める結果となっている。


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先日には、インフレの罠にはまっているからこそFRB内部は見解が分かれている事にも言及 した。FRBが方向感を見出せないそんな中、冒頭の「名目GDPターゲット論」がにわかに注目を集め始めたという事になる。以下はNYT.


Dear Ben: It’s Time for Your Volcker Moment

(By CHRISTINA D. ROMER Published: October 29, 2011)

・More specifically, normal output growth for our economy is about 2 1/2 percent a year, and the Fed believes that 2 percent inflation is appropriate. So a reasonable target for nominal G.D.P. growth is around 4 1/2 percent.


その論調をリードするのはカリフォルニア大のローマー教授。記事では、ボルカーのように劇的にマネタリーポリシーを変化させるべき、と提言している。 具体的には、通常の実質GDP成長率が2.5%であり、FRBは2%インフレが望ましいと考えているので、ターゲットとする名目GDP成長率はおよそ4.5%、との事。


この主張、金融政策の手段自体は変わらないので、簡単に言えばQE3を主張している事になる。高いインフレを許容して経済成長率を引き上げるというものだが、このような過去のアイデアがアメリカで注目されるのも、現在の政策ツールの停滞感を表している事になる。現実的に考えて、名目GDPターゲットが採用された場合には、経済はスタグフレーションに陥る事になる。今後も、金融政策について様々な議論がなされるだろうが、「名案」が浮上してくる事はないだろう。