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Update:為替介入という投機

野田財務相を始めとする通貨当局の、「円高=投機」という簡単なコメントが何かと目に付きますが、その持続性を考えれば、ヘッジファンドなどのリスクマネーよりは、日本の通貨当局による為替介入の方がよほど「投機的」だと言える。 「為替介入=投機マネー」と、そっくりそのまま返したくなる状況だ。


昨年9月、今年の3月、そして今月の「介入データ」を拾っていくと、3度の介入は、8-12時間後に(ドル円)上昇ピークを迎え、そのトレンドを持続させる事はできない。そして、その上げ幅は約2.6円から約3.2円となっている。 

政府の「投機介入」がこれだけ公になっていると、逆にその介入自体が(リスクマネーから)利用されるのは明白で、介入すればするほどヤブヘビとなる事だろう。


「政府の投機」は、3度とも午前中(東京)に実施。 七曜で考えると、昨年は水曜、今年は木曜・金曜とバラつきがありますが、効果が限定される事を考えれば、政府は曜日効果も考えている事だろう。 前回8月4日3月18日が金曜という事なんだけど、これは介入インパクトを少しでも残したいという「為替の金月処理」を狙っていたように思える。なので、最近の金曜は(ちょっとだけ)注視していた訳ですが、状況を考えるとやはり難しい。


以上のように、政府による為替介入の方がよほど「投機的」な訳ですが、「円高=投機」とするそのアナウンスの意図としては、市場参加者や輸出企業のもつ「円高緊張感」の緩和を狙っているといえる。 どういう事かというと、「投機」という軽いイメージを含む言葉を使用する事によって、「円安転化への安心感」を市場に植え付けようとしているわけだ。というか、そのようなアナウンス効果を(政府が)期待している事が覗える。


ただ実際には、市場参加者は既に、新興国が外貨準備の拡大を円に振り分けている事も知っているし、日本が「経常黒字国」という事で、円が買われている事も知っている。 なので「ヘッジファンドの投機マネーがちょこっと入ってきている」というような色彩強いコメントは、通貨当局(野田&中尾)による、現実離れした軽率なアナウンスだという事が分かる。


さらには、震災による円需要の高まりの為、米国債償還時の円転の動きに政府が目を光らせている、といった情報も目にする。 (日本企業が)償還分を再投資せずに円転するといった事から、政府は、米国債償還・利払いの円買い金額を見極めた上で、介入実施を錯誤している、というわけだ。 それらを考えても、通貨当局が「円高=投機」としているのは、緊張緩和の為の無責任なアナウンスだという事は明白だ。


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ちなみに、よく言われる「経常黒字国だから」というのは、(当然ながら)国内に持ちこまれる分が円転圧力(円高)になるので、国際収支勘定でいえば、経常収支から資本収支を差し引いた金額が大きければ大きいほど、影響力が強い事になる。 ただ、資本取引の影響力拡大を考えると、その数字自体が為替レートに影響する事は、現実にはほとんど無い

しかし教科書的にはそうなっているので、そのような市場の思惑に便乗したマネーが大量に続いている、という事になる。



追記: 上記の事を考えても、金融の教科書もそろそろ見直す時期なのではないだろうか。金融緩和してそれが機械的に物価を上昇させる、と考えている人も未だに存在する。それが影響力のある人だったりするから致命的だといえる。


「アメリカはインフレ率が上昇しているから、景気はそこまで悪くない」、と言う人もいる。これはCPIの上昇率を指しているものと思われるが、CPIがどこまでインフレを表していると言えるのだろうか?通貨供給量が歪んで拡大している事を考えても、CPIにそこまでは期待できない。だからこそ自分はインフレではなく、スキューフレーションと言っている。そこにFRBの憂鬱がある事を知っている人は、一体どのくらいいるのだろうか?


まぁこの手の話をすると長くなるので、またいずれ。



追記2: 3月18日が金曜、8月4日が木曜だった。誤りを訂正しました。

意図としては、今年の2度が木・金だったので、「金月処理」については警戒していた。どちらが木・金か、少々混乱していましたが、金曜効果については警戒というか注視していたので、主旨としては全く変わりないわけです。

スミマセンでした。