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Update:緊迫する「ユーロゾーン」

本日、EUサミットが行われるようですが、ギリシャ救済の行方が注目される。


「ギリシャ救済を協議へ=11日に臨時首脳会議-EU」

首脳会議には欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁も参加


「トリシェ総裁がオーストラリアでの会議を早く切り上げて欧州に向かった」という報道で、ギリシャ救済に向けて何らかの対策が打ち出されるのでは、といった期待観測が出てきた模様。

ただ裏を返すと、今後「救済しない方向性」が明確になった場合、ユーロは急落懸念に包まれる事になる。


「PIGS危機」と捉えるマーケット


最近では金融市場の話題をターミネート状態のギリシャ危機。


「ECBの出口戦略に影落とすギリシャ危機」

ECBは、リーマン後の2008年秋に担保対象を拡大。 トリプルB以上(BBB-)の国債が担保対象に入った事から、ギリシャ国債(BBB+)は延命されてきた、という事になる。

さらには、その担保基準が延長されないようだと、そのギリシャだけでなく、ECBの支援に頼ってきたその他「PIGS」も緊迫する、との報道もよく見かける。


しかし、格下げ懸念が他「PIGS」にも出てはいるが、トリプルBラインをさまよっているのはギリシャのみ。(ポルトガルA+、イタリアAA-、アイルランドAA、スペインAA+/S&P・ムーディーズ・フィッチの3社平均)

現在のところ、ECBは本来の「A-」まで引き戻す予定。それを考えると、他PIGS国債は担保範囲内。 要するに、「(低)担保基準の延長か否か」で動揺するのはギリシャ国債のみで良いのだが、財政ベースで一くくりにされるものだから、金融市場では歩調を合わせる結果となっている。  (以下PIGS国債利回り)

果てしないカオス


ギリシャ国債は、その8割弱を保有する外国人投資家から売り浴びせられている。保有比率8割以上が外国人というポルトガル国債も「恐怖」で売られ、利回りは急騰。

Goldman: If Greece Is Handled Wrong, All Of Southern Europe Will Fall Like Dominos And 30% Of Euro GDP Would Be At Risk

Just look at this comparison of each PIIGS nations' twin deficits:

果てしないカオス
ゴールドマンもイタリアとアイルランドを合わせた「PIIGS」の双子の赤字を見ろ、との事。(Iが2つなのがミソ)  措置を誤るとユーロゾーンに波及、との事ですが今や誰もがそういう風(PIIGSはセット)に見ている。


現実的な経済事情はギリシャだけであり、スペインやポルトガルは「ずっと良好」という情報もよく目にするが、市場はそんな判断をしないという事。

特に「恐怖の材料」は、市場のオーバーシュートを後押しする。

ヘッジファンドがポルトガルやスペインをターゲットにし始めたとの事だが、スペインまで拡大したころには、EUは激震に揺れている事だろう。


果てしないカオス


脆弱な危機管理体制


ドイツやECBから、救済するとかしないとかコロコロ違った情報が出ている訳だが、誰もがギリシャからとんでくる飛び火の大きさに恐怖している模様。


果てしないカオス

最近の金融市場の動きを見ていると、ギリシャ救済に動かざるを得ない状況になっているのだが、救済してしまうと、その他「PIGS」も救済せざるを得ないシナリオが予想され、そうなった場合、財政に余裕のある他ユーロ国の国債まで売られるという、スパイラルリスク懸念が。


かといって救済しないとなれば、救済期待の反動からユーロは急落する。

さらにはIMFが救済に乗り出すといった観測が出ており、IMFが介入してくるとなるとユーロ不信がさらに拡大するという事で、そのシナリオもEUとしては避けたい考え。

要するに、救済してもしなくてもリスクは甚大なのだが、このようなイザという時に、欧州の政策立案者たちは「何をしていいのか分からない」といった風に見える。


そしてBloombergにはこんな記事もあった。

「ECBにはギリシャ救済できない-英紙FT」

ECBの役割を定めた法律には「救済を否定する明確な条項がある

法的にも、ECBによる救済は禁じられているという事だが、ギリシャに対し財政措置ばかり要求している「欧州政府」こと欧州委員会も、効果的な救済案は持ち合わせていない。 これらを考えると、ギリシャ問題でドタバタしているEUは、今回のような危機に対する体制が脆弱だった事になる。 


よく、マーストリヒト(欧州連合条約)で財政赤字3%以内が条件、を例に出す自分ですが、マーストリヒトでは財政赤字だけでなく、インフレ率・為替・金利等についても必要条件が明記されている。 
結局、これらの規定は、実際には通貨統合の「参加条件」であって、ザル規定と化していた。


昨年末にも「リスボン条約」 が発効したわけだが、形式ばかり整えるEUのチェック機能は働いていなかった。ギリシャの粉飾問題等はその象徴といえる。 

「次の基軸通貨」として期待もあったユーロだが、今回の危機は共通通貨としての弱点が露呈したというより、ユーロ誕生後の監視体制に問題があったといえるのではないだろうか。


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