カンバーバッジの「リチャード3世」は見事だ。 | えいいちのはなしANNEX

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「ホロー・クラウン」7部作のラスト、リチャード3世を、順番飛ばして見てしまいました。トークショー付きだからしょうがない。それにやはりカンバーバッジは見たい。
カンバーバッジ、異様なほどノリノリだ。独白のたんびにスクリーン全面に大写しになり、こっちの魂に掴みかかるようにして喋る喋る。かっこいいことこの上なし!
トークショーの谷賢一さんも言ってたが、前半のノリノリの怖いものなし上り調子のリチャードと、王になったとたんに暗くなって転落していくリチャードの落差が見事で、面白い。
この芝居には女性は4人しか出ない(シェイクスピアはみんなそうだけど)、その4人の女性との「直接対決」がそれぞれあって。前皇太子の未亡人アン、先王ヘンリー6世未亡人マーガレット、兄エドワード4世未亡人エリザベス、そして母であるヨーク公爵未亡人。わ、全員が未亡人、つまりみんな夫か子供か両方かをリチャードに殺されている、それが各々、カンバーバッジとガチンコで顔どアップでやりあうシーンがあって。この「圧」がたまんない、ですよ。
不具で醜いグロスターのときは、もうなにをやっても絶好調で、口説き落とせない女はいない、っていう勢いだった男が、国王リチャード3世になった途端に全く冴えなくなり、どんどん転落していく。前半ではやたら観客に向かって喋りまくっていた男が、後半はめっきり内に籠ってしまう。人生って恐ろしいね。